羊祭りのカシミール料理(インド料理)
インド人に「天国」と言われるカシミール地方
カシミールと言えば、日本では高級なカシミアが有名ですね!
他に、パキスタンとの領土問題に関するニュースを見て、「カシミール地方=紛争地帯」として認識されている方も多いかも知れません。
カシミール地方はインドとパキスタンにまたがる山岳地帯で、ざっくりと3分の2をインド、3分の1をパキンスタンが実効支配しています。
インド側のカシミールの話をすると、インドの最北部にあり、ジャンムー・カシミール連邦直轄領と言うエリアです。(今回の記事でカシミール地方と言う場合にはジャンムーも含みます)
(2019年にそれまでのジャンムー・カシミール州がジャンムー・カシミール連邦直轄領とラダック連邦直轄領に分割されてインド政府の直轄領となりました。)
実はカシミール地方は、山好きにはたまらない美しい山岳景観を見ることが出来ます。インドの中でもカシミールは「ヘブン(天国)」と呼ばれていたりします。
また、身長が平均的なインド人より高くて(アフガニスタン人的な体型か?…と言われてもわかりませんよね、すみません笑)、顔立ちも端正な美男美女が多く、特にカシミールの女性は肌が白くて綺麗だと言われています。
インドの人口の80%はヒンドゥー教徒ですが、カシミール地方でもマジョリティ(約97%)はムスリムです。(そのことが領土問題に繋がっています)
羊祭りのカシミール料理の特徴
カシミール料理の特徴は、とにかくお肉(特に羊)の消費量が多い、鮮やかな赤い色が特徴的(しかし辛くなくて味はマイルド)なメニューがある、辛くないスパイスを多用、主食はお米と言うことです。
一人当たりの羊の消費量がインド大陸で一番多いのがカシミールと言われています。
また、赤さの秘密は鶏頭(ケイトウ、英語ではCockscomb flower)というお花で、カシミール語では「Moaval」と呼ばれています。煮込んで色を出し、カシミール料理の一部で使われます。
ちょうどタジキスタンで鶏頭を撮っていたので載せましたが、このケイトウは濃いピンクですが、カシミールのケイトウはもっと真っ赤なのではないかと想像します。
また、カシミールの唐辛子もとても赤いですが、辛さは控えめで、これも色味を出すために使われます。カシミール唐辛子はカシミール地方以外でもインドやインド系のスーパーに行くと見つけられます。
スパイスはカルダモン、フェンネル、生姜、シナモン、クローブやサフロンがよく使われます。刺激のあるスパイスもありますが、どれも辛くないです。
ここまでがカシミール料理全体の特徴ですが、ムスリムとヒンドゥー教徒で食べられているものは異なります。
カシミール地方のイスラム教徒
カシミールのイスラム教徒の間では、ワズワン(Wazwan)と言う、メニューのほとんどが肉料理(羊が多いが鶏も出て来る、野菜もほんの少し)のフルコースが有名です。
また、4人一組となり、直径45センチ位の銅製の丸くて薄いお皿(カシミール語でTraemと言う)から一緒に食べると言う伝統があります。
カシミール地方のヒンドゥー教徒
一方、バラモン(ヒンドゥー教の司祭)は基本的に菜食主義ですが、カシミール地方のヒンドゥー教徒は最高位のバラモンであってもほとんどの人がお肉を食べ、特に羊を好みます。(カシミールのムスリムはどちらかと言うと若いヤギのお肉を好みます)
他には魚も食べますが、牛と豚は食べません。
したがって、肉食恐竜の皆さんには関係ありませんが、カシミールで純粋なベジタリアン料理を見つけるのはインドの他のエリアに比べて難しそうです。
ちなみに、これはカシミールで一番有名なプラオ(ピラフ)でドライフルーツやナッツを多用するのですが、普通のプラオと違ってお肉は使用しません。(もちろんカシミールにもお肉を使用するプラオはたくさんあります)
インド料理に比べてアラブ料理で使われるスパイスは少なめですが、カシミール地方もムスリムに比べるとヒンドゥー教徒は唐辛子を含め、スパイスをより多く使います。また、タマネギやニンニクは避ける傾向にあります。
ヒンドゥー教の教義の支柱である「マヌ法典」では、バラモンはタマネギとニンニクを食べてはいけないとしているからです。匂いがキツく、穢れから生じたものと考えられていました。
カザフスタン人の親友が「世界で一番羊を消費するのはカザフ族」(彼らは一家庭で、一冬に一頭の羊を食べ切ります)と得意げに言っていたので、それを鵜呑みにしてましたが(笑)、カシミール人となかなか良い勝負です。来年の夏辺りに旅行に行く予定なので、その辺もチェックしたいと思います。
ドーハのカシミール料理レストランでワズワンを実食
カタールのドーハに、Kashmir Palace Restaurantと言う、気合いの入ったカシミール料理専門のレストランがあります。
席に着くと、カシミール出身の店員さん(パキスタン側)がこれらの容器で手を洗ってくれました。これもカシミールの伝統です。
ポットをAftaba、洗った水を流す方をChilam Cheと言います。
最初に出て来たのは、カシミールサフランティー(Kashmiri Saffron Tea)です。サフラン、カルダモンとシナモンステック、砂糖で作られています。
とても気になっていたので、今回はやはりワズワンにしてみました。
先程ご説明したTraem(銅製の丸くて大きいお皿)が美しいので、Treamで持って来てくれないかと少し期待していましたが、一人では普通のお皿でした!!
これらが全てワズワンに含まれていた訳ではなく、奥のカシミールロティと真ん中のプディナパラタ、一番右の一番赤いワズパニールは単品で注文しました。
・カシミールロティ(Kashmir Roti)
朝食としてバターやジャムと一緒に食べられるパンです。タンドールで毎日作られ、カシミール人の朝はこれなくして始まらなそうです。カシミールロティもそうですが、カシミールのパンはミディアムサイズだけど、ずっしりとしていて食べ応えがありそうなものが多いです。
・プディナパラタ(Pudina Paratha)
プディナはミントという意味で、パラタはインド版デニッシュとも呼べるようなパンの一種です。これはカシミール料理の伝統料理ではなく北インド全体で食べられています。
・ワズパニール(Waz Paneer)
ワズとはそもそもカシミール語で料理や調理するという意味で、パニールは水牛のチーズです。まずパニールを揚げて、その後煮込んでいます。トマト風味で、見た目が真っ赤ですが辛味はないです。
ここからが実際に食べたワズワンのメニューの説明です。
・Tabakh maaz
羊のリブを蒸し、ギーを使って弱火で揚げていて、味付けは塩とターメリックだけとシンプルなのですが、食べた中で一番美味しかったです。表面はカリカリですが、フォークを使わなくてもよい程お肉は柔らかくとてもジューシーです。
・Methi Maaz
一番印象に残ったのがMethi Maazで、乾燥させたフェヌグリークと言うハーブと羊のモツの煮込みです。羊のモツを食べたのはウイグル料理のウップケー・ヘスィプ(ئۆپكە-ھېسىپ)以来です。カシミール人が真の羊好きと言うことが証明された瞬間でした(笑)
ちなみにこちらがウップケー・ヘスィプです。
・ケバブ(Kabab)
これはもはや私から説明が要るでしょうか?(笑)ケバブです。
・ローガンジョシュ(Roganjosh)
今回食べたワズワンやカシミール料理の中で最も知名度が高いと思います。アルカネットの花や根とカシミール唐辛子で赤くしたマトンカレーです。
・グシュタバ(Goshtaba)
ヨーグルトソースとスパイスを煮込んだクリーミーなスープにマトンの肉団子が入っています。カシミール料理の中では、ローガンジョシュの次に有名な気がします。
・Waze Chiken
皆さんが想像するタンドリーチキンに似た味でした。
ライス(Rice)
わざわざ書く必要あったかな?と思いましたが(笑)、カシミールの主食はお米なので、ワズワンではお米が出されます。
ワズワンはサーブされる順番も決まっていて、まずライスの上に載ったTabak Maaz、Methi Maaz、Kebab、Waza KokurとDhenが出て来た後、Haaq、Nadru、Roganjosh、Ristaなどが続きます。
ワズワン、またはカシミール料理を食べた感想ですが、今まで食べていたインド料理(ざっくり北インドと南インド)とは全く異なる味づけで、フェンネルの影響なのか、スパイスのブレンドが独特でした。
食後にカシミールチャイを飲みたかったので、あえて残しておいたカシミールロティと一緒に食べました。
カシミールチャイは私が好きなティーの一つで話し始めると止まらなくなるので、別の記事にしたいと思いますが、色がピンクで可愛く、それでいて味はクリーミー、濃厚なとても美味しいお茶です。
相当お腹いっぱいだったのですが、デザートはカシミールクルフィ(Kashmiri Kulfi)にしました。
クルフィは牛乳を煮詰めて作られたインドのアイスクリームですが、インド全体だけでなく中東などでも食べられています。
このカシミールクルフィはシャリシャリとしてシャーベットに近く、サフラン、ドライフルーツ、砕かれたナッツ、カルダモンの味がしました。
おまけ:「カシミールカレー」
ちなみに皆さんは「カシミールカレー」をご存知ですか?
銀座や上野に店舗があるインド料理店「デリー」というお店のカレーです。
日本でもカシミール料理が食べられるかと調べていたときに発見して、名前だけで特にカシミール料理とは全く関係ないのですが(笑)、気になったので載せておきます。
マドラス(現在のチェンナイ)のカレーをイメージ、とあったのでカテゴリー的にはスパイスたっぷりの南インド料理に入りますね!そのうち南インド料理についてもご紹介したいと思います。
他のインドの郷土料理についてはこちらをどうぞ♪
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