書評 赤と青のガウン 人が学ぶ意味とは
五十路のおじさん、ばっどです。
赤と青のガウン
彬子女王
仕事を早く(つっても定時)終えた祝日。
Boolsアマノ有玉店に寄り、文庫コーナーの平積みで一冊の本に目が止まった。
著者、彬子女王。
なんとなく手に取って中をパラパラ見たが、「読まねばなるまい」と思わせるオーラがあったので購入。結果大正解。
とにかく上質な読書体験ができることうけあい。
あまり経験はないが、すごい上品な味、量はそんなにないけど、満足感がある食事。
そんな感じ。
内容は皇族の海外留学記。
人によっては「税金を使った道楽」とみる向きもあろう。
が、公人として一挙手一投足が衆目に晒される以上、「留学はしましたが学位は取れませんでした」はあり得ない結果である。
英国の一流大学、世界の王族も多数受け入れているだろうから忖度なしのガチでもあろう。
むしろ忖度があればその後恥をかくことになるのはご本人。
所謂一般人とはチャレンジの意味合いがまったく異なるはずだ。
オックスフォードで学ぶことのタフさをしっかり伝えながらも、興味深いエピソードや皇室、皇族の裏話なども嫌味なく配されて、単なる留学記ではなく、「面白い読み物」としてのレベルが高い。
著者の立場上、書き方によっては嫌味になりかねないこともある。
個人的に鼻につくのは日本経済新聞「交遊抄」。
偉い人が偉い知り合いとの付き合いを語る短い記事。
読んだ感想として「知らんがな」になりがちだ。
本書にはそういうところはなく、ひたすら興味深く読める。
「立場が人をつくる」ということを実感できるところも多数。
皇族の自覚と謙虚さが何の不思議もなく同居し、ひたすら清々しい。
色々な意味で日本の皇室は難しい局面にあると思うが、こういう方がいらっしゃるのであれば大丈夫なのではないか。
文庫は2024年4月から版を重ねて16刷。
この本が売れるという意味において、日本はそんなに悪い国じゃない、そんな気がしました。
個人的には上皇后さまがかつておっしゃられた「皇室は祈りでありたい」というお言葉が、皇族のお言葉として一番印象に残っているばっどでした。