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書評 今夜すべてのバーで 超奇人作家の(おそらく)最高傑作

五十路のおじさん、ばっどです。

今夜すべてのバーで
中島らも

「僕に踏まれた~」を引っ張り出した以上、この本は無視できません。

ざっくりいうと作者本人のアルコール依存による入院体験をもとに書かれた、「アル中小説」。
初期の作品だが、結局これを超える小説作品は出なかったような気がする。それなりに著者の新作は、出るたびに読んでいたはずだけど。

主人公、小島容(いるる)は35歳の作家。
若き日には無頼を重ね、長年の過剰飲酒は連続飲酒となり、ついに体(肝臓)が悲鳴をあげ、入院するところから物語は始まる。
順調な回復をたどる小島がふらりと病院を抜け出し、深夜に病院へ戻る夜、物語は一つのクライマックスを迎えます。

とにかく、登場人物の設定が良い。
もう一人の主人公ともいえる、中年の主治医が良い味を出しています。
令和の時代には医師として許されないような振る舞いも見られますが、小島にも、同室の難病少年にも、患者ごとの特性にあわせた、それとない寄り添い方が魅力的ではあります。

また、ロマンチストでもあろう医師は、クライマックスの夜、辛さから絞り出すような一言を口にします。
ここまでロマンチストでなくても、この医師の一言がそこそこ腹落ちする人は多いはずです。
そういうトコロを求めて読んでみるのが良いかもしれません。
どんな境遇の人でも、何かしら感じるところがある、そんな作品だと思います。

最近の医学的なみかたでは、少量であっても飲酒は確実に体にダメージを与えるものだという論になっているようです。
まぁ、コントロールして飲めれば無視できる程度の影響だとは思いますが。
たばこの扱いを見ていると、そのうち会社も社内で企画する飲み会禁止とか言い出しかねない気もします。
厚労省の意向とはいえ、たばこは驚くほど駆逐されてしまいましたからね・・・

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