エレナ・ゲルハルト シューベルト『音楽に寄せて』(1924)
HMV-102と女声ドイツ・リートの旅。
旧吹き込み時代から電気録音時代に渡り、「ドイツ・リートのメゾ・ソプラノ」と言えば質・量ともこの人の右に出る者はいなかった。
エレナ・ゲルハルト(Elena Gerhardt, 1883年11月11日 - 1961年1月11日)。
キャリア最初期にライプツィヒでオペラ出演の経験が僅かにあるが、その生涯の全てをドイツ・リートに捧げたと言っても過言でない。
『音楽に寄せて』Op.88-4 D547。
「音楽」を擬人化して、それによって厳しい人生を潜り抜けることができた、という音楽への感謝の歌。
しかしショーバーが書いた詩には、「Kunst(文化)」という言葉はあっても「Musik」という言葉はない。
ゲルハルトの凛とした佇まいは如何ほどか。
音楽を愛する全ての者に捧げられたシューベルトの傑作。
1924年5月29日、ロンドンでのアコースティック録音。
ピアノはハロルド・クラクストン。
盤面が赤茶色なのはSP盤で主原料であるシェラック樹脂の色が赤褐色で、通常はそこにマグネシウム等を配合するため黒色となるが、この盤はそれを行っていないため、シェラックの色がそのまま出る。
ヴォカリオン盤ではよく見かける規格。