シレナ1912×78rpmの邂逅 Vol.7~ヨシュカ・シゲティ『アヴェ・マリア』(1911)
ヨシュカ・シゲティ(Joska Szigeti ヨゼフ・シゲティ, 1892年9月5日 - 1973年2月19日)が1911年9月11日、19歳になったばかりの頃レコーディングしたシューベルト『アヴェ・マリア』。
「音の美しさを追求しなかったヴァイオリニスト」「精神性のみを求道したヴァイオリニスト」「テクニックも同時代のヴィルトォーゾと比較したら明らかに劣る=テクニックを決してウリにしていなかったヴァイオリニスト」・・・。
シゲティというヴァイオリニストを語る時、ステレオタイプン表現の数々。
もちろん、多くの人がそう表現し、評価するのだから、シゲティの特徴はその通りなのだろう。
それを踏まえて、バッハの無伴奏作品、ベートーヴェンのソナタが彼の代表的レパートリーとされ、またプロコフィエフやイザイ、ブゾーニといった同時代を生きた作曲家から絶賛され、「彼こそが自分の作品の最良の再現者」と言われたわけである。
では、そんなシゲティにとって、しかも20歳に満たない若きシゲティにといって、SP盤時代に録音された通俗名曲は一体どんな存在で、彼はその録音で自分の何を残そうとしたのか?
美音で夢心地の『アヴェ・マリア』ではなく、メロディアスな歌い廻しもなく、「弓で弦を擦る音」をただ体感するだけのこの演奏・・・。
我々聴き手もここに何を聴けばよいのだろう?
112年後に生きる我々にとって、多くの問いを投げかけるシゲティ・・・。
録音の1年後に世に出されたシレナ蓄音機でそれを聴いても、答えはそう簡単に見つかりそうにない。
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