作品『秋風金色』
吹く風が体をするりと抜け
空を仰ぐと名もわからぬ鳥が泳いでいる
生命に優しい陽射しが世界に供給されていた
ああ何と素晴らしい秋の日だろう
すばしっこくあちこちを駆ける秋風と並んで
私の犬たちが黄金色に染まり
その尾をぴんと空へ突き立て歩く
この一日は彼らの命のためにある
この風に慈愛を感じとれる者のためにある
秋風はそこかしこから飛び出し、
顔を、腕を、足を、胴体を
すり抜けていく
犬たちは口を開け
地球の息遣いを体内にめいっぱい取り込んでいた
それは
命の正体を知る者だけに授けられる加護
秋風は命をばら撒きながら
地を、空を舞う
田舎道にざんばらに
誰に遠慮もせず気ままに生えた草々を
初めて 美しいと思った
私の隣に
黄金色した犬の命が見える
地、空、風という生命の 更にその中に
犬という器に入った命が内包されている
金色の秋風と並んで歩く、
黄金色した犬を見つめる
どこかしこに目に見えぬ命が在り
一つ一つが独立していると同時に一体なのだと声高に謳っていた
またこのような日を、私の犬に与えてやって下さい
この世界の至る所に数多に、
無数に在る命を理解できる彼らに
恩恵ある一日を
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