【展示会】人体の不思議展の思い出を振り返る
小学生だったかな。
夏休み前に展示会のお知らせが回覧されるようなことがあった気がする。
だいぶ昔のことだから、詳しく覚えてないけど。
おしらせの紙を回覧して、興味がある人は職員室へ。早いもの順で割引券がもらえます。みたいな感じだった。
その中に人体の不思議展のお知らせがあった。
不思議なポーズをとった人間の標本、骨、筋肉模型。
みんな「なにこれ!気味悪い!」みたいな感じで回覧して、見に行くことはない。
夏の風物詩的なものだった。
私もうわっ!とは思ったけど、ちょっとだけ興味はあった。
どんな展示があるのか、お知らせの紙だけではよく分からなかったけど、なんとなく行ってみたいと親に伝えたら、「こういうものは見に行ってはだめ。どうしても行きたいなら、大人になって自分のお金で行きなさい。」と言われ、それ以上は取り合ってもらえなかった。
そりゃそうだ。もし私が親の立場なら、趣味が悪いとしか思えない。
もっと子供ならファンシーな展示会(スヌーピー展とか、ディズニー展とか)に興味を持ってほしいと思う。
高校生になって、3年生、受験の真っただ中。
駅のポスターで人体の不思議展のお知らせを見つけた。
小学生の頃、行ってみたくて行けなかった思い出がよみがえってきた。
入場料は1500円(なぜか妙に覚えている)
これなら貯めたお小遣いで見に行けるじゃない!
昔親に行かせてもらえなかった展示会に、自分のお金(お小遣いだけど)で行く。
ちょっと大人になった気分だった。
その頃はほぼ毎日塾に自習で通っていたので、
息抜きがてら、人体の不思議展に行ってみることにした。
今となってはホームページも無いし、ちょっと検索しただけでも、画像は言わずもがなグログログロッキーなので
Wikipediaだけ載せときます💀
展示会内は撮影禁止だった。
これまで展示会ってくまのプーさん展とかしか行ったことがなかったから、本当に衝撃だった。
輪切りの人体、実際に死体の血管にシリコンを入れて型をとった血管模型、本物の筋肉の標本(謎に刻みが入ってる)、妊婦さんの死体とお腹の中の胎児。
あれ・・・思ってたのと違う。
こういうものを見たかったわけじゃない。
それが一番最初に感じた感想だった。
しかもこれが模型ではなく、実際の人体でつくられている。
高校生の私でも、これって倫理的に大丈夫なの?と思うような展示だった。
人の体ってこんな風に扱っていいものなの?
グロい!とか気味が悪い!とかでは片づけられない、すごく悲しい気持ちになった。
血管や筋肉の仕組みを見るにはとても勉強になるものだと思う。
詳細を読めば、それぞれの展示の意図を少しでも理解することができたかもしれない。
でも、目に入ってくるセンセーショナルな展示の数々に圧倒されて、説明にまで目が行かない。
弓矢を射る体制で固定された筋肉模型とか、一体何を表したいのかよく分からなかった。
筋肉がこういう風に動くんだよ、っていうことを表している?
見ている人に体の可動域を勉強してほしい?
でも、こんな風に体を扱っていいんだろうか。
展示のために献体した人は、自分の体がこういう形で扱われることを了承しているのか?
頭の中はまさに大混乱だった。
妊婦さんの模型なんて、意図が分からな過ぎて。
別に妊娠周期に合わせて妊婦さんの死体を準備する必要はないし、そもそもどうしてこんなピンポイントな周期の死体を見つけることができるんだろう。
考えれば考えるほど、なんだか闇の部分があるような気がして気持ち悪いなって思った。
触らない!と表示されてるけど、もともと脆いのか、血管標本の床にぱらぱらと赤く色づけられたシリコンのようなものが落ちていて、すごく気味が悪かったのも、頭から離れない光景のひとつ。
結構落ちてますけど、保存的に大丈夫な感じ?
あと会場全体に広がる独特な匂い。
骨格標本とか、人体模型より少し詳細なものを実際に見ることができる!というくらいの気持ちでドキドキワクワクしながら入場したはずなのに。
事前にいろいろ調べてから行くべきだったのかもしれない。
親がかつて行きたいといった私を止めた理由も、行かない方がいいと言ってきた理由も、なんとなくわかった気がした。
平日だったけど、そこそこ人の出入りはあって。
自分の親くらいの女性に声をかけられたことを覚えてる。
その人は真っ青な顔で
「あなた、医療系の仕事につきたくてここに来たの?私、チケットを頂いたからここに来たんだけど・・・なんて言えばいいのかしら・・・あなたは大丈夫?これ、勉強になる?」
と私に聞いてきた。
私はいろいろショックでうまく返事ができなかった。
「はい・・・」としか言えなかった。
あんなに行ってみたくて、1500円も出して展示会に入ったのに、
今すぐに立ち去りたい気持ちになっていた。
もしかしたら私も青い顔になってたのかもしれない。
その女性に誘われて、一緒に会場を出た。
人体の不思議展。
しばらくそのことは思い出したくなくて、記憶の底に沈めていた。
社会人になってから、そういえば最近人体の不思議展のお知らせを見かけないことに気づいて、いろいろ調べてみた。
なんと、私が人体の不思議展を見に行った翌年頃から、倫理問題を問題視されて開催中止となったよう。
遺体の提供先が不明だったり、闇の部分が報道されたり。
以降は再び開催されることなく今に至るとのこと。
あ、あれが最後の機会だったんだな。
でも見に行くことができたことが、私にとって良かったのか悪かったのか。
今でもあの異様な景色を思い出すことがあるし、
人体の不思議展の闇について触れられたサイトを見ると、何とも言えない気持ちになる。
やっぱりあの時私が感じた違和感、
間違ってはなかったんだな( ˙-˙ )
ある意味、いい勉強になった
もう二度と行くことの出来ない展示会の思い出でした。