リレーエッセイ「小説家」(連想#3)
さて、先日始めたリレーエッセイ。
バトンを受けた人が、前の執筆者のエッセイの内容から連想したキーワードをテーマとして、エッセイを書いていくというもの。
今回また、高校以来の友人であるはじめくんからバトンを受け取った。
前のテーマは「ペン」とのことで、さすがプロのライターだけあり、ペンに関するこだわりのみならず、ペンに関する思い出や格言などにも触れ、よくもまぁこれだけ書けるなぁと感心した。
自分で書くのも楽しいが、人の文章を読むというのもこの企画の楽しいところだ。
で、今回のテーマだが「小説家」にしようと思う。
はじめくんが、前回の文章の中で、「ペンは剣よりも強し」というのを取り上げていて、現在使われる意味としては「暴力・武力よりも、言論・文字による報道・出版物の方が影響力がある」ということだと思うので、執筆を職業とする人の姿がまず頭に浮かんだ。
で、僕は小説を読むのが好きなこともあってか、そこから「小説家」というキーワードを連想したわけだ。
ちょっと前回書いた「マンガ」と結果的に同系統のテーマになるので安直かな?と思わなくもないが、このリレーエッセイに厳格なルールがあるわけでもない。これで行ってみようと思う。
少し僕の読み物に関する思い出から書き始めるとすると、幼少の頃は絵本が好きで、それから徐々に文字の方が多い本を読むようになった。
最初の方に読んだ児童文学は「いやいやえん」や「エルマーのぼうけん」だったと思う。
特にエルマーは3部作で、少年が小島に囚われている竜を助けに行ったり、竜に乗って冒険を繰り広げるアドベンチャー物で、僕の心を鷲掴みにして何度も読んだ記憶がある。
小学校中学年頃からはネズミたちが主人公の「小さな勇士ものがたり」や、人気アニメ ガンバの冒険の原作本「冒険者たち ガンバと15ひきの仲間」など、やはり少年の冒険心に火を付ける系統の本が好きだった。
けれど、この頃はまだ小説家の名前を意識したことがなく、本のチョイスも”たまたま図書館で表紙が気になったから”とか”テレビで気になる分野だったから”、とかが多かった気がする。
初めて小説家の名前を意識して、その小説家目当てに本を読み出したのは少年探偵団シリーズでお馴染みの「江戸川乱歩」だろう。
怪人二十面相と名探偵 明智小五郎が繰り広げる推理対決はどれをとっても手に汗握り夢中になって読み、学校の図書室にあるほとんどのものを借りて読んだ。
実は少年探偵団や怪人二十面相といった子供向けの話だけでなく、大人が読んでも大変面白いだろう、シリアスな推理小説も多かった。
大人になりミステリー小説好きになったのは、こういった下地も影響しているのかもしれない。
さて、中学から特に高校は、部活にバイト、バンドや自主制作映画作りなど、青春していて忙しかったので(笑)あまり小説は読んだ記憶がなく(マンガばかり読んでいた)、次に読み出すのは大学時代だったように思う。
その頃僕は、幼少からの藤子・F・不二雄のドラえもんや短篇集の影響からか、短めのSF(F先生流に言うと少しフシギ)が好きで、小説といったらショートショートの神様と言われる「星新一」の短編集をよく読んでいた。
本当にどの話をとっても斬新で驚きとユーモアがあり、唸らされた。
その流れから「筒井康隆」の短編集的な小説から読み始めるようになった。いろいろタイトルは忘れてしまったのだが、覚えているのは「おれに関する噂」。
星新一が物語を必要最小限に、ある意味淡白に書いているのに対し、筒井康隆の短編集は、もっと人間臭いやりとりや感情表現があり、社会をシニカルに描いていて、作品が示唆に富んでいる感じを持っていた。
そんな中、心に残っているのが「幻想の未来」。
これには本当に驚愕した。
人類が滅亡して、虫のような生命体に変わり、さらに時は流れて意識体になるという。。かなり前に読んだので間違っているかもしれないが、そんな話だった。
こんな大胆で、かつ空想上の生命体・概念を、絵や色も全くない小説の世界で表現してしまう。。本当に凄い才能だと思った。
そして表現力といえば「村上春樹」。
バイト先の上司に勧められて読み始めたのだが、日本語の表現が美しくて、状況や感情の抽象的・感覚的なイメージも読み手の脳内にダイレクトに伝わってくる不思議さがある。素晴らしい小説家だと思う。
僕にとっては「鼠三部作」と言われる「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」といった初期の作品や「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」など風変わりな世界観が面白い。ここが好き嫌いを分ける部分であるとも思うが。
あと、特筆すべきは、Haruki Murakamiは海外でも非常に人気があるということ。頻繁に海外の方と英会話をしているが、日本の文化の話になるとアニメ、マンガ、J-POPに次いでよく話題に出てくる。
とはいえもう随分前だが「1Q84」を読んだきり新しいものは読んでいない。
こういう内容を書いていたら久しぶりにまた読んでみたくなった。
社会人になって、次にハマっていったのが、ミステリー(推理)小説の世界。
結婚前、まだ交際前に妻が僕に貸してくれた「宮部みゆき」の「火車」がきっかけだった。
金銭に困って身分を隠すための大きな嘘が事件をより大きく複雑にしていたという、お金に困っている人が読んだら身につまされる話だ。
きっと、当時お給料をすべて飲みや趣味といった交際費に使ってしまっていた貧乏社会人の僕を心配して、チョイスして貸してくれたんだろう(苦笑)
宮部みゆきといえば、実は他にも時代物やSFファンタジーものも書いていて、これは結構食わず嫌いなところもあるけれど、やっぱりミステリーが面白いと思う。
なんといっても、どの作品もストーリーのオリジナリティがあり、今まで読んだことのないような意外な展開に、作品に引き込まれる。
他にも「レベル7」「模倣犯」「理由」などがおすすめだ。
続いて夢中になった小説家は「東野圭吾」だ。
東野圭吾の文章の特徴は、とにかく読みやすいということだと思う。だからと言って内容が薄いわけではなく、人物描写や事件の背景、トリックなど深く巧みに書いている。映画やドラマになっているものも多く、人にも薦めやすい。
「白夜行」から入って、「秘密」「手紙」「時生(トキオ)」や「パラレルワールド・ラブストーリー」「片想い」に加賀刑事のシリーズ。。挙げたらキリが無い。
あまり有名な作品ではないが、「むかし僕が死んだ家」も、独特の雰囲気ながら衝撃的な展開で好きな作品だ。
そんなミステリー小説に夢中になる中、「永井するみ」の「大いなる聴衆」「枯れ蔵」なども面白かった。
今でも好きな作家を聞かれると名前を上げるのだが、若くして亡くなられたことを聞いた時はショックだった。
そして「湊かなえ」のことも書いておきたい。
やはり「告白」がセンセーショナルで一気に有名作家になった感がある。
告白の第一章を読んだときには、登場人物の狂気に寒気を感じた。
そんな感じで読後感が嫌な気持ちになるミステリーということで「イヤミスの女王」とも呼ばれている。
そこから他の作品も読むようになって、「夜行観覧車」「母性」などが面白かった。
特徴としては、家族をテーマにしている作品が多く、夫婦や親子といった特別な関係、特別な感情をベースに、そこで起こる事件の中でお互いの真実や絆を確認し合うという、ヒューマニティ要素が多くて、そういう部分が好きだ。
というわけでミステリーの分野で色々書いてきたが、それ以外の小説家で言うと、並行して読み続けていてずっと好きなのが「重松清」だ。
ハートウォーミングな作品が多く「ビタミンF」「流星ワゴン」「定年ゴジラ」「カカシの夏休み」「君の友だち」などなど。。グッと心に刺さって泣けてくる。
やはり僕のような中高年になると、ますます人間関係、、夫婦、親子、親戚、友人、同僚、近隣関係、コミュニティなどなど、といったものの大切さを実感する。
重松清はそういった人間関係をテーマに、人情の機微について深く表現していて、けれども説教臭くなく、自然と共感を持てる作品ばかりだ。
僕もこの歳になって、まだまだこの先も読んでいきたいと思っている小説家なので、読書と人間的な心の成長、どちらも楽しんでいきたいと思う。
さて、長々と好きな「小説家」について書いてきた。
それにしても作家名が古い方ばかりで最近の知識のアップデートできていないのがなんともお恥ずかしい。
流石に記憶だけで書いて作品名が間違ってしまうとまずいので、ところどころインターネットで確認しながら書かせてもらった。
すると、やはりベストセラー作家ばかりなのでそれぞれもう何百冊と出版しており、当然のことながら読んで無い作品の方が多かった。
最近は個人的に自己成長やスキルアップの目的で本よりも動画で情報をインプットすることが多く、本を読むにしてもビジネス書を読むことが多い。
それでも今回この記事を書いていて、やはり僕は小説が好きだなぁと言うことを思い出すことができた。
コロナも明けて通勤する日も増えそうだし、この機にまた興味のある小説を読んでいきたいと思う。
で、このリレーエッセイだが、少しやり方を変えて、書いてみたい希望者がいれば、僕 とみーか、共同運営者のはじめくんに声をかけてもらいたい。
基本的には僕とはじめくんの間に挟み込む形でローテーションを回させてもらうと思う。
そして、まだ希望者は現れていないので次のバトンはまたはじめくんにお渡ししたいと思う。ではよろしく!
P.S.
個人的に、学びや経験を通じてのインプット&アウトプットが好きな人たち向けのオンラインコミュニティを運営しています。
興味を持っていただいた方は、是非会員になってもらえたら嬉しいです。
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