目を覚ませば、ご飯のにおい。 階段を降りれば。 家族がいる、当たり前の風景。 嫌いだ。 苦手だ。 一緒に息をするには、苦しくなった。 幸せから、一歩。 また、一歩。 ゆっくり。 離れた、わたし。 ひとり、宝石箱の中身を漁った。 ガラクタみたいな記憶ばかり。 毒を吐けば、逃げられた。 欲を言って、逃げた。 我慢して、爆発した。 震える。 カーテンから漏れる光は、永遠の命。 ひとり、文字を辿る。 いつだって味方、だと。 言うんだ。 苦手だ、
あの日から、世界が変わった。 きみの鼻も口も。 どんな、顔だったっけ。 きみと、会ったのはいつだっけ。 声は。 笑顔は。 想いは。 次々閉まる、また閉まる。 すぐに暗闇が、やってくる。 見えないから怖い、と。 見えていても怖い、と。 ただ、ずっとこのままだとしたら。 わたし、きみのことを。 深海から出してあげられないわ。 手を繋いで、あげられないわ。 ねぇ。 久々、かもしれない。 でも、きみの顔は。 思い出せなかったの。 ぼやけた、脳内。
心の中を覗かれているみたいだ。 あれが好き、これが好き。 あれは苦手、これは嫌い。 あの子が好き、この子は嫌い。 意味はない投稿、ポスト。 自分だけの世界、アーカイブ。 心の切り替え、削除。 良いも悪いも、いいね。 その全てで判断される、世界線。 切り取られてしまえばおしまい。 いつだってきみと隣り合わせ。 だから、怖いのだ。 この距離が、好きなのだ。 この歯痒さが、嫌いなのだ。 他の人に向けられた投稿も、何もかも。 嫌になるから、やめられない。
武器を持った瞬間、感じた。 勝てる。 負けは想像できないくらい、心を支配した。 今まで勝とうとしてこなかった。 違う、赤い煙幕を見つめる。 守るために、笑った。 黙るために、壁を蹴る。 吐き出した薬を、わたしなら。 武器を持った瞬間、感じた。 好きな人さえも、傷つける。 手の届く範囲、それでも。 感情、1062キロメートル先。 角を曲がればすぐそこだ。 守るべきもの、捨てるべきもの。 すべてそこにあると、思い込む。 永遠の命があれば、許されたのだ
忘れたいことがあった。 忘れちゃいけないこともあった。 真赤に腫れた、惚れた。 ダメなことくらい、わたしが一番分かっていたのにな。 自分から傷つきにいくなんて。 どれだけわたしは、いい世界にいるんだろう。 飽きたのだ、結局は。 いつも通りの暮らし。 いつも通りの1K。 いつも通りのスーパー。 いつも通りの帰り道。 覚えているかい、あの柄を。 あの柄は、元気なあの子。 その柄は、あんまり会えなくなった子。 どんな日でも、一緒。 蝉が鳴き始めた、去年
嫌いなあの子、今何してる? 好きなものに囲まれて、幸せそうね。 苦いものも、辛いものも近づいてくるけど。 あの子、気づかない幸せな痛い子。 羨ましかったのかも、しれない。 我慢しないで、言葉が漏れ出すあの子が。 人の顔色伺わずに生きる、あの子が。 自分が正しいと思って生きる、あの子が。 その方が上手く、好かれて生きられるのかもしれない。 青い街並み。 雑踏に紛れる、わたしの声。 汗をかいたペットボトル。 赤い指先。 埃の溜まった、わたしの心。 届く
聞いていた曲を、見ていた動画を止める。 今日も生きている。 真赤な液体が体を流れているのが、わかる。 車が走る音、酔っ払い集団の声。 録画を始めるテレビ、秒針を刻む時計。 わたしが知らぬ間に、沢山のものが動く。 きみの知らない間に、こころが進む。 待ってはくれないのだ、昨日も今日も。 痛いほど刺さる、秒針の音。 無意識に刺す、だからわたしは許してしまうのだ。 だからわたしは、考えることをやめた。 街灯が灯る、あの道が嫌いだ。 異様に明るいコンビニが、胸
平凡な日常に、色づいた。 何色ですか、答えられたら終わりが来そうで怖いのだ。 傷ばかりの時間に、優しい光が見えた。 その先には誰がいましたか、答えて始まったのだ。 きみだと。 きみ以外は嫌だと、心の奥底にある何かが息をした。 何気なく使っていたものも、買ったものも。 増えていく度に、優しくなれる。 増えていく度に、わたし。 わたし、痛くなる。 あ。 きみと同じものだと思うと、愛おしい。 離れているくせに、きみを感じている。 守れないくせに、天井に手を
弾けた、かもしれない。 溶けた、かもしれない。 その、かもしれない、を夢見ている。 わたしの甘すぎる生活も、甘すぎる吐息も、甘すぎる愚痴も、 きみなら愛してくれると思って。 綺麗かそうじゃないかなんて、どうでもいいからさ。 見た目で判断するなんて、ずるいことだから。 きみの目に反射して映る、わたしとその緑を眺めた。 これからも、見られるのかしら。 甘いのが苦手なのに、いつまでも離れられないから。 少し悪い気がするかも。 悪い気も、恋しい。 喉すらも染め