国立西洋美術館『自然と人のダイアローグ』から
「絵が光っている・・・」
その作品の前で、思わずそんな言葉が口をついて出た。
テオ・ファン・レイセルベルヘの〈ブローニュ=シュル=メールの月光〉だった。
舞台は夜の港。
ヨットの藍色のシルエットの合間に、点々と見える灯り。空のちょうど真ん中に、ぼうっとした光で表された月が、幻想的な雰囲気を醸し出す。
近づいて見れば、それらは全て点状の絵の具によって描き表されているのがわかる。
使われているのは、主に青と赤。
ただ、月光の部分や、遠景に見える灯りには、白や黄色が配されている。
入り雑じる青と赤の点描が、離れて見ると紫に近い色をなすからこそ、この「光」が際立ち、絵自体が光っているように見える。
そんなところだろうか。
作者のファン・レイセルベルヘは、カタログによれば、ベルギーの画家らしい。
シニャックの影響を受けて、新印象派の点描を取り入れた一枚が、この作品。
会場では、シニャックの作品がこの後に二、三枚続いていた。
「新印象主義、って偉大だよな・・・」
と、改めて思う。
先日の『シダネルとマルタン』といい、印象派の「筆触分割」を更に推し進めた、新印象主義の点描技法は、同時代の多くの画家に影響を与えた。
ゴッホも、パリ時代に、この点描技法を試している。
また、会場内のキャプションでも、シニャックの色彩表現が、「フォーヴィスム誕生の土壌」になったことが述べられていた。
新印象主義・・・これをテーマにするなら、私はどのように書く?
他にも、モネを見いだしたブータンなど、フリードリヒ目当てで行ったつもりが、思わぬ作品、方向に、心惹かれた。
このように、興味の幅を広げてくれる展覧会に出会えることは、本当に嬉しい。