テルマエ展へ行って考える
今日は汐留ミュージアムの『テルマエ』展の内覧会へ。
古代ローマの生活文化を、「入浴」を中心に紹介していこう、というコンセプトで、漫画『テルマエ・ロマエ』の作者ヤマザキマリさんも協力者として参加している。
以前、『ポンペイ』展を取材した時にも思ったが、約2000年の時間の隔たりがあるにも関わらず、古代ローマの生活と、現代の私たちの生活に、なんと共通項が多いことだろう。
その「共通項」の代表例が、「入浴」文化だ。
ヤマザキさんもおっしゃっていたし、私自身も留学中に感じていたことだが、
「何で今のヨーロッパには、湯船に浸かる文化がないの!?」
ローマ時代には、人々は、ローマはもちろん属州にも大規模な浴場を造っていたのに。
私が住んだ部屋にもシャワーしかないのがほとんどで、不満だった。(風邪の原因の一つにもなったと思う)
湯船に浸かって、何も考えず、手足をだらりと伸ばす、あの時間が何と恋しかったことか。
結果、現在は、旅行に行く際には、ホテルに温泉や大浴場があるかどうかはチェック事項になっている。
お風呂はまさに「メンタル・インフラ」だ、というヤマザキさんの言葉にはまさに頷くばかりだった。
そして、この「メンタル・インフラ」が整備されるには、いくつかの条件がある。
・水道の整備(つまり、技術の発展)
・世の中が平和で落ち着いていること
→風呂は裸になる、つまり無防備になる場所
(鎌倉幕府の二代目将軍・頼家は修善寺で入浴中に暗殺されたし、ローマ皇帝コンモドゥスも確か同じような感じ)
心と身体の鎧を脱いで、のんびりしても大丈夫、という安心感がある(定着している)こと。
・経済的に豊かであること
→大規模な浴場を造るにはもちろん資金が重要
古代ローマの帝政期、そして日本で同じく入浴文化が特に発展した江戸時代は、まさに上記3つの条件を備えていた。
そして、浴場は人々の交流の場となり、浮世絵にも描かれたし、小説の舞台にもなった。「湯治」の旅も庶民の間で流行った。
今回の展覧会では、古代ローマだけでなく、日本の入浴文化についても紹介し、両者を比較できるようになっている。
地理的にも時間的にも隔たったローマが、より身近に感じられても来るだろう。
私も、資金を貯めて温泉旅行に行きたくなってきた。