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【山梨県立美術館】特別展「縄文-JOMON-展」を見に行く

はじめに

 ミレーの美術館こと山梨県立美術館(以下、美術館)では、年に4回の特別展を開催しています。9月に入り、新たな特別展「縄文-JOMON-展」が始まりました。
 今回は「縄文-JOMON-展」(以下、縄文展)を紹介します。壁一面の大きさの土器の展開写真(小川忠博氏撮影)と実物のコラボに注目です。
 なお、山梨県立美術館の概要については拙稿をご覧ください。

屋外の気になるもの

 美術館の周りにあって筆者が少しだけ気になったものを紹介します。
 まず、正門前の歩道にある電話ボックスです。美術館に合わせたレンガ調のデザインで、しかも2ボックスで構成されています。利用する人は皆無でしょうが撤去しにくいのかそのままあります。

細かいことですが、サインボードが「予告」のままでした
レンガ調で意外と気にならない、中は緑色の電話

 次に、少し分かりにくい場所ですが岡本太郎《樹人》(1971年)の近くまで行ってみました。《樹人》は箱根彫刻の森美術館にもあるようです。
 解説によれば「樹木の精霊を造形したかのような作品でつぼみや葉っぱ、人間のように様々に変化する形」です。確かに見る角度から形が複雑に変化します。

岡本太郎《樹人》1971

 屋外彫刻なども随時紹介していきたいと思います。

縄文王国山梨

 中部山岳地域は縄文時代中期の遺跡が多く、山梨も縄文時代の遺跡が多い地域です。山梨県では、2009年(平成21年)頃から「縄文王国山梨」というテーマで県内の7館の資料館・博物館で連携した企画や情報発信、イベントなどを行ってきました。

「縄文王国山梨」を紹介するパンフ

 最近では、長野県と共同した日本遺産『星降る中部高地の縄文世界』のほうに積極的ですが、山梨県として縄文を発信する場合に「縄文王国山梨」は度々登場するキーワードです。

縄文-JOMON-展

 今回の訪問の目的は、こちらの「鑑賞」です。
 正式なタイトルは「縄文-JOMON-展"縄文王国"山梨の土器・土偶と写真家 小川忠博の縄文像」(2022.9.10~11.6)です。
 山梨の縄文土器、土偶の展示と写真家小川忠博氏(1942年~・昭和17年~)の撮影した全国の縄文土器、土偶の写真の展示です。

チラシ表面
チラシ裏面

 今回の展示の考え方として、考古学的な切り口を離れ、美術的視点から見ていこうというものです。そのため、縄文時代の生活や土器や土偶の使用目的、遺跡に関する解説は一切ありません。
 土器や土偶を美術的にとらえることに対しては、賛否があると思います。それでも、山梨県で一番の集客をほこる美術館で多くの人の目ふれることはこれまでにない機会です。「見学者」ではなく「鑑賞者」の目で見てもらうことで、縄文への関心のきっかけになれば、と思います。

エントランスから企画展示室の南館へ向かいます
南館の一階です、右は図書室
企画展示室の二階へ向かう階段を外から

プロローグ

 さて展示ですが、「KAWAII」「UTSUKUSHII」「KAKKOII」「展開写真」の4つのテーマに分けて展示しています。
 今回の出品元は、
 山梨県立考古博物館
 釈迦堂遺跡博物館
 韮崎市民俗資料館
 北杜市考古資料館
 南アルプス市ふるさと伝承館
の5館からですが、これだけでも、山梨の土器や土偶の有名どころを一堂に見ることができます。さらに、本展はすべて写真撮影可能となっています。展示数は、土器、土偶が60点、小川氏の写真が90点です。

さあ、縄文の世界へ

 プロローグでは、山梨県立考古博物館の収蔵品を中心に山梨の土器の代表例を見せます。

まずは様々な土器を紹介
生活の道具たち

第1章 KAWAII

「かわいい」をテーマに土偶と人面装飾土器を紹介しています。
 日本遺産『星降る中部高地の縄文世界』の「三十三番土偶札所巡り」でもおなじみの土偶たちが集まっています。一部の土偶(釈迦堂遺跡)はレプリカですが、360度間近で見られます。
 また、土偶の合体した鋳物師屋遺跡の土偶装飾土器、津金御所前遺跡の出産文土器(レプリカ)もあります。

左から「のんさん」「しゃかちゃん」「ミス石之坪」「しゃっこちゃん」
左から「ウーラ」「中空土偶」「ラヴィ」「ピース」
手前の列に土偶装飾の土器、後列は第2章の土器
各地の土偶

第2章 UTSUKUSHII

 文様や全体の姿に着目して「美しい」土器を集めています。水煙文や渦巻文など中部高地の土器の文様の世界を感じられます。シンプルさが美しいアサガオ型の深鉢などもあります。

中央は考古博物館のシンボルの深鉢型土器(殿林遺跡)
各地の美しいデザイン

第3章 KAKKOII

 大型の突起部や把手がついた土器など「格好の良さ」に着目した土器を集めています。美しさとは違った造形の奇抜さが分かります。

水煙土器など形状が際立った土器
火焔土器はじめ各地の土器

エピローグ 展開された

 広い展示室を贅沢に使って、小川氏の展開写真を展示しています。その前には実物の土器が置かれています。迫ってくるような巨大な写真と物静かに土器が対面している姿がたいへん印象的です。

深鉢型土器(石之坪遺跡)
長野県富士見町の神像筒形土器(藤内遺跡)
人体文深鉢型土器(一の沢遺跡)
深鉢型土器(重郎原遺跡)
渦巻文土器(桂野遺跡)

ミュージアムショップ

 ミュージアムショップには、縄文アイテムがいっぱいです。中には「ちがうだろ」と言いたくなるものもありますが、鑑賞の記念ということで。

さすがにTシャツの「踊る埴輪」はちがう
鋳物師屋遺跡の「子宝の女神ラヴィ」がかわいい

おわりに

 考古系や歴史系の展示というのは、見学者が少ないものです。ところが今回は人の入りは上々です。主催者である山梨日日新聞社が、紙面を使って度々紹介していることもありそうです。
 ご年配の夫婦や、小さい子どもを連れた家族連れが来ていました。土偶や土器を見ながら、感じたところ思い思いに語りながら見て回る、ほほえましい光景だと思います。
 また、山梨の代表的な土器や土偶を多数見られるお得な展示でした。


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