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【アトリエアッシュカ】Chise Tanaka展「Sunrise -夜が明ける-」を見に行く

はじめに

 昭和時代の香りを残す横丁の飲食店街「柳小路」その奥にあるアトリエアッシュカから新たな個展情報を頂きました。Chise Tanaka展「Sunrise -夜が明ける-」(2024.7.27~8.11の土日)は甲府出身の田中知世氏による山梨で初の個展となります。
 「アトリエアッシュカ」としては、本年5月の「NOTO AGAIN 能登半島地震被災地復旧・復興チャリティー展」に次ぐ個展開催です。

「#オンライン展覧会」応募作の中で
先週特にスキを集めた記事に選出 2024.8.19

旧甲州街道から

 今回は「柳小路」に旧甲州街道側から歩いてきました。
 拡幅が進む甲府中心街の旧甲州街道です。先には長く親しまれた岡島百貨店の解体が見えます。

旧甲州街道、右手奥に解体中の百貨店

 甲州銘菓「くろ玉」で有名な澤田屋さんの店舗があります。道路拡幅でカフェ併設のお店に生まれ変わりました。その奥に進むと「アトリエアッシュカ」があります。

沢田屋さんの新店舗

 アトリエアッシュカは代表塚原氏の実家(澤田屋さん)をリノベーションしてアート空間にしたものです。2022年(令和4年)から不定期に美術やジュエリー、工芸などの展覧会を開いています。
 内部はダイニングカウンターがありオーナー、アーティスト、来館者がお茶を囲んでお話を出来る交流空間になっています。

旧甲州街道から見た「アッシュカ」
角を曲がったところから

Sunrise -夜が明ける-

 Chise Tanaka(田中知世)氏は山梨で活動するアーティストです。Chise Tanaka展「Sunrise -夜が明ける-」(2024.7.27~8.11の土日)は地元山梨で初の個展となるといいます。
 筆者はTanaka氏を存じあげなかったのですが、案内状の作品に何か惹かれるものを感じて訪ねてみました。

案内状ハガキの両面(宛名部分は加工)

 旧甲州街道のほうから入るとすぐにサインボードが目に入ります。
 石祠が横にあるのですが、これはかつてここに日蓮宗祖師堂があったもので火災除けの守りになっています。

サインボード

 Chise Tanaka(田中知世)氏のプロフィールです。
 Tanaka氏が在廊しており、お話を伺うことができました。高校まで甲府におられて、多摩美に進まれて都内で活動されていたそうです。現在は甲府に戻られて活動されています。

Chise Tanaka
1992年 山梨県甲府市生まれ
2016年 多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業
2016年 ベルリン芸術大学 交換留学
2018年 多摩美術大学美術研究科博士前期課程絵画専攻油画研究領域修了
2023年 ギャラリーOGUMAG 個展「Echo」
2024年 山梨県甲府市で制作

Chise Tanaka プロフィール

丁寧に描かれたアクリル画

 もともとは油絵のアーティストだったそうです。しかし突然描けなくなったことなど、自身に変化がありアクリル画に転向したそうです。

照らすような作品が並ぶ

 まず、こちらの2点が新作です。作品からは丁寧に丁寧に重ねて描いていることが伺えます。

(左より)《The light》2024
《Friends》2024

 こちらは、月の満ち欠けで時の経過が分かる作品です。

《BOKU in the world encounter》2022

 植物が多いのも特徴に感じました。またマットな作風の中に丁寧なグラデ―ションも特徴です。

《My body,my rooms.》2023

 向かいの壁には2枚あり、メインビジュアルになっている《私の心の奥の奥》は新作です。また《私の心の奥の奥》についてはステイトメントがあります。

(左より)《あなたの涙が雨になり、やがて川になり、そして海になる》2022
《私の心の奥の奥》2024

私は絵が描けなくなった時期がありました。
そのことを思い返すと、私はただひとつの体で、自分の中のことをずっと考えて、石のように固まってしまっていたように思い返します。
ちょっとしたきっかけで、自分の中の思い込みを解いて、自分を外に出してみると、目の前の紙やキャンバス、他者や世界が色づくように自分の創作の世界が広がっていきました。
今回の個展のタイトルは「Sunrise -夜が明ける-」です。
自分の絵の中に、朝焼けのようなグラデーションを多用していることに気が付きます。
夜はあっても、必ず朝は来る。
そんな「希望」を見ている人に感じていただきたく、このタイトルにしました。
どうぞお気軽にお立ち寄りくださいませ。

Chise Tanaka ステイトメント

 内面で苦労された時期があり、それを乗り越えられたようです。希望を得た経験を届けようとされていました。

 ダイニングの向こうに小作品が並びます。

(左より)《気分のいい夢》2020
《My heart is blooming》2022
《A present for you》2021

ふたつの要素

 隣の部屋にも作品が続きます。作品はぜんぶで17点あるそうです。

隣の展示室の概観

 ふと、足元に置かれ塩が盛られた「あ・うん」の焼き物に目が留まりました。オーナーの妹さんが作られたものとか。「あ・うん」とは万物の始まりから終わりを示すといいます。またふたつで対をなします。
 Tanaka氏の作品には対になるテーマが隠されています。内面と外面、苦悩と希望、自身と他者、見る人と見られる人、朝と夜、人間と自然、なにか通じるものを感じました。

あ・うんシーサーの焼き物

 さて、こちらはどこか水彩画のような作品です。アクリルを薄く溶いて描いているといいます。

(左より)《drawing 20230723》2024
《drawing 20230722》2024

 2022年2023年の作品が多いため、どのくらいのペースで作品を描かれるのか伺うと特には決めず描いているとのこと。

(左より)《BOKU in the world》2022
《I'm drinking a cup of coffee》2023
(左より)《Twins》2022
《Rainy day》2022

 夜の空と雲と山です。伺うとどこか実在する山を見て描いたのではないとのこと。でもこれは山梨にある山の姿に見えるのです。

《drawing night sky》2024

 こちらは唯一のモノトーン作品です。花が燭台になって光を放っているように見えました。

《私を照らさないで》2022

 オリジナルポストカードもあります。

 プロフィールにあるように、2023年(令和5年)荒川区東尾久で初となる個展「Echo」を開かれており、その時の模様を見せていただきました。

ギャラリーOGUMAG 個展「Echo」

おわりに

 鑑賞し歓談していると外は突然の豪雨に見舞われました。あまりの強い降り方にどうしたものかと一時は不安になりましたが、帰る頃には一転晴れ間に変わりました。
 テーマの「明けない夜はない」と同意の「やまない雨はない」を思いつつ「希望」を少し分けてもらい帰途につきました。

雨上がりの柳小路


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