【感想】映画『十一人の賊軍』
下半期一番の期待作『十一人の賊軍』を公開日当日に見に行きました。
『十一人の賊軍』は、旧幕府軍と薩摩藩、長州藩とする新政府軍で起きた戊辰戦争の中で、新政府軍と対立する奥羽越列藩同盟に加わる新発田藩で繰り広げられる同盟の裏切りの物語であります。
数人の若い侍と、貧困階級である罪人たちが集められ11人の罪人たちが無罪放免と引き換えに決死隊として砦の死守に駆り出され決死に戦う姿を描くバイオレンス時代アクションでありました。
W主演を務める新発田藩士を殺害し罪人である政を演じたのは山田孝之さんであり、物語の序盤では自分だけが助かろうとするクズっぷりはリアリティがあってもちろん良かったし、戦いの中で罪人たちと一致団結し協力しながら戦う姿も見ていてカッコ良かったです。
新発田の地を守るため罪人たちと戦う鷲尾兵士郎を演じたのは仲野太賀さんであり、なんと言っても彼が一番活躍していたと思ったし今まで見たことのない役者としての魂の演技を本作から感じられました。
時代劇というと、かなり敷居の高いイメージを持たれる方々がいらっしゃるだろうと思いますが、決してそうは思わない作りになっているのが本作の特徴であると思いました。
本作の監督である白石監督が描いた残酷なまでの戦いの惨劇とリアリティによって、この世界観に浸ることが可能となっており、過激な殺戮から物語の深みを与えることで役者たちの演技がより際立っていくものがあると感じられました。
白石監督が前作に描いた作品で『碁盤斬り』という作品がありますが、本作の『十一人の賊軍』においても共通項があってそれは彼の描く人間味の一部が特徴的であるということが窺えます。
【前作の作品についての概要】↓
白石監督は、一貫して物語の背景というよりも人間性にスポットを当てている。
『碁盤斬り』での格之進は冤罪事件の復讐劇を軸に描かれ『十一人の賊軍』での政は妻の為に敵討ちとして罪人となり、無罪放免を勝ち取り妻と再会する為に命掛けで戦う姿を見ていると、登場人物たちの感情や心境に寄り添い、感情移入させる演出を取り入れていることが窺えます。
登場人物たちの心理から生まれた連鎖的な関わりによって、それがどのように他の登場人物たちに作用するかも監督の見せ方だと感じました。
『十一人の賊軍』はこれまでの監督作品の中でも残酷さ、グロさは容赦なく、人が次々と殺され、ただ人が死んでいく。
だが、それは戦においては必然であり、白石監督は当時の時代風潮をしっかりと捉えて映像化させて見る人に的確に意志とメッセージ性を伝えていると思いました。