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【感想】映画『憐れみの3章』

先日『憐れみの3章』という映画を見た。
かなり、トリッキーで難解な映画という印象でしたが面白くて最後まで飽きることなく楽しめる作品でありました。
ヨルゴス・ランティモス監督の新作映画であり、今年劇場上映されました『哀れなるものたち』とはまた違った作風であり、本作の『憐れみの3章』はランティモス監督らしい作家性の表れた優れた作品であることを感じられました。

前作『哀れなるものたち』感想/参照↓

難解な作品でありますが『憐れみの3章』で描かれるテーマというのはいたってシンプルなものだと感じました。
3章からなる物語で描かれるテーマは、支配と非支配の関係性であります。
前作『哀れなるものたち』では、ベラの自由意志と心の解放を描いていますが、本作や『聖なる鹿殺し』では顕著に描かれていると思います。
独立性を持つ三つの物語に接点はないですが、同じメインキャストによって構成されそれぞれの持ち味があり面白かったですし、違いを比較して見てもかなり興味深い内容だと感じました。
物語の冒頭から流れるユーリズミックスの『スイートドリームズ』の歌詞のフレーズを聞いてふと気付いたことがありました。

歌詞の中に以下の気になる英文があるので引用したいと思います。

(英文)
Some of them want to use you
Some of them want to get used by you

(英訳)
他者の力を利用しようとする者もいれば、他者に利用されることを望む者もいる


‘‘利用’’する、されるはまさに‘‘支配欲’’であるということを示しています。
テーマ性の暗示を『憐れみの3章』で内包させ、エマ・ストーンやウィレム・デフォー、マーガレット・クアリー、ジェシー・プレモンスなどの優れた名優の演技によって、憐れみはより深化しますし、作品そのものは、ブラックユーモアに溢れていてより面白さが引き立つものがあります。
狂気と不気味さが混じり合い、3章は一つに統合し、物語として成り立っている。
実験的で難解で分からない要素がたくさんある作品ですが、今年の映画の中でも一番の怪作だと感じさせられました。

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