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焦らず、あわてず、おどろかずー安心立命の秘訣ー

相応の理によってでなくては、何にとつ出来るものではない。

地球には地球相応の真理有り、現代には現代相応の策あり、獣には獣相応の道を存す。

赤子に論を説くをやめて、アメ玉をねぶらせよ。餓死せんとする人に天国を説くも、なんの要かあらん。これを救うは、一椀の食のみ。

黙するも悟る人あり、説いて分かる人あり、打たれて始めて知る者もあり、言わねばならぬ場合あり、言うてはならぬ時もあり。時処位によりて千変万化、それぞれの機をとらえて過たざるを真人となす。

長しといえど、ふんどしは手拭の代わりをなし難く、便利なりといえど、箸をもって岩を動かすあたわず。

餅のことは餅屋がくわしく、酒のことは杜氏に問うべし。

それぞれの道具、それぞれの人を集めずして、何ひとつ、真にでき上がるものではない。

腐りなわにもとりえとかや、いかなる物、いかなる人にも、それぞれの特長はあるなり。その、それぞれに時処位を得せしめて、はじめて世の中は安堵す。

神慮は永久に根ざし、人心は現在に根ざす。ゆえに、人に迷いあり、憂いあり、焦慮あるなり。よろしく永久に根ざして現在を観るべし。現在に根ざして永遠を観るべからず。

焦らず、あわてず、おどろかず、その時その時に処して、最善をつくして天命を待つべし。かくてはじめて、苦しむ時も愉快に、なやむ時も興味あるなり。安心立命の秘訣、これより外にはなし。

この心がけなき者、いかに形の上のみで神仏をがんだところで何になろう。一朝、逆境におちいれば、かえって神をうたがい、仏を恨むがおちなり。しかも、わが非を省みず、ゆえに悟らず。かくて、苦しみ長く、神仏に手数をかけているなり。

『信仰覚書』 出口日出麿著


これまでのお示し

理性は愛情の核
https://note.com/azumanohikari/n/nb3b570378293
自分もよく他人もよい生活
https://note.com/azumanohikari/n/n218ba5b99328


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