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【読書感想】かがみの孤城/いま、こどものあなたへ。かつて、こどもだったわたしたちへ。
かがみの孤城/辻村深月
<書籍紹介>2018年、第15回本屋大賞、大賞受賞作品。(歴代最高得点で受賞)
2019年に漫画化。2022年にアニメ映画化されている人気作品。
※この記事は約4400文字、だいたい9分で読めます。
まだ読んでいない人のために、なるべくネタバレなしで書きます。
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〇読んでよかった!
「結末が衝撃的な小説」
YouTubeでそう紹介されていたので、
「そんなに面白いの?じゃあ読んでみよう」と軽い気持ちで図書館に行き、本を手に取りました。
「ぶ、分厚い…」。
500ページ以上あるハードカバー。
「衝撃的な結末」にたどり着くまでが遠すぎる(笑)。
かつての「読書少女」「活字変態」はどこに行ったのか。
この程度でひるむなんて、最近本を読んでいない証拠ですね。
借りたものの、なかなか読む気になれず、机の上に放置。
そしてとうとう返却期限一週間前になりました。
カウンターで「この本、延長できますか?」と聞くのはちょっと恥ずかしいし、なんだか「負け」のような気が。
とりあえず、一日30分でもいいから読もうと思い、読み始めました。
気がついたら2時間以上経っていて、首と背中がバッキバキ。
読み終えた素直な感想は、「読んでよかった!」。
結末が衝撃的だとか、伏線回収が秀逸だとか、そんなことよりも、
過去の自分と重なるところが多すぎて、登場人物ひとりひとりに感情移入し、物語の世界観にどっぷりハマってしまいました。
すべての謎が解けるラストは、一気に読みました。
そして、読み終わった瞬間、わたしの頭の中にあったのは「感謝」と「癒し」。
またひとつ、わたしにとって大切な本に出会えたと確信しました。
〇こんな人におススメ!
①いま、学校に行きたくないと思っている人。
②過去の人間関係でトラウマがある人。
③ファンタジー小説が好きな人。
④爽やかで、感動的な読後感を求めている人。
〇あらすじ
中学生の主人公の「こころ」。ある日突然部屋の鏡が光り、鏡の世界に入り込みます。
そこは古いお城で、同じ年ごろの男女と、オオカミの仮面をつけた謎の女の子がいました。
その女の子が言います。
「このお城にいられるのは来年の3月30日まで。
その間にお城のどこかに隠した『願いの部屋』の鍵を見つけること。
見つけた人だけが、願いごとをひとつだけかなえることができる。」
どうして「こころ」が選ばれたの?
他のメンバーとの「つながり」は?
誰の願いがかなえられるの?
7人の不登校の中学生が、不思議な世界で自分と向き合い、成長していく物語です。
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〇あえて書かないという「リアリティ」
主人公の「こころ」は、中学に入学してすぐに不登校になります。同じクラスの女子から嫌がらせを受けて、学校に行けなくなったのです。
この手の話では、主人公が学校に行けなくなった理由を読者に納得させるために、過酷で残忍な嫌がらせの描写がよくあります。しかし、この物語ではそこまでではありません。
例えばこんな感じです。
「こころ」が学校のトイレの個室に入っていたとき、嫌がらせをしている女子グループが入ってきたのが話し声で分かりました。嫌な予感がしたけど、もうすぐ授業が始まってしまう。思い切って個室から出ると、隣の個室からその女子が出てきました。どうやら「様子を見てやろう」と言って、上からのぞこうとしていたらしいのです。そのことを後から他のクラスメートから聞かされ、愕然としました。
実際にはのぞかれていないし、もっとひどいこともされていません。それでも「こころ」の心が壊れるには十分でした。
「もう、わたしの居場所はどこにもないのか…」
学校という集団生活の中で唯一ひとりになれる場所でさえ、彼女たちの魔の手が及ぶのだとしたら。
次はどんなひどい目に遭うのか。それを想像するだけで、恐怖と絶望で心が暗闇に包まれました。
もしかしたら、学校でつらい思いをしているこどもたちが読むことを意識して、作者が意図的に過激な描写を避けたのかもしれません。
それでも、日常のエピソードを積み上げるだけで、だんだんと追い詰められていく「こころ」の心情は痛いほど理解できます。
実際、学校では、ニュースで取り上げられるような「犯罪まがい」なことよりも、「こころ」がされたようなことの方が圧倒的に多いのでしょう。
このように、過酷なエピソードをあえて書かないことで、逆にリアリティが保たれています。
そのことがかえって多くの人の共感を呼んだのだと思います。
〇大人は絶対に、謝らない…
大人である“先生”がこんなふうに謝ってくれることがあるなんて知らなかった。いつだって、先生たちみたいな大人はこどもより偉くて、謝ったり、非を認めたりしないものなのだと思っていた。
これは「こころ」がフリースクールの喜多嶋先生に心を開く場面です。
実は、わたしも当時まったく同じことを考えていました。
まわりになじめず、孤立しがちなわたしは、なにかとトラブルを抱えていました。
親も先生も、大人は絶対に謝らない。わたしなんかのために、自分が悪かったなんて、絶対に言わないんだ。
自分の存在を軽く見られているようで、とても嫌でした。
それと同時に、自分自身も「どうせわたしはこんなもの」と、自分の存在を軽く扱うようになってしまいました。
大人はすぐに「本当は言いたいことがあるんでしょう?」「本当の気持ちを聞かせて」と言ってきます。
でも、
正直な気持ちが言えないのはわたしが悪いの?言えないような雰囲気を作っているのはあなたたち大人のほうじゃないの!とずっと思っていました。
本当は言いたいことがあるんじゃない?何か隠していることがあるんじゃない?
(言いたいことがあることも隠していることがあることも、ちゃんとわかっているから話してみて)
言いたいことは山ほどあるけど、言いたくない。隠していることはたくさんあるけど、見せたくない。
(だって怒られるもん。どーせ、わかってくれないくせに。)=相手を信用していないから出せない。(あなたを信頼できないわたしが悪いの?)
人間関係で傷ついたこどもが、信頼していない大人に心を開くわけがありません。
傷つきおびえているこどもが、自分を守るために「すべてが敵だ」と身構えていることに、気づいてもらいたかったです。
〇親でもない先生でもない「大人」とのかかわり
「こころちゃんが頑張ってるの、お母さんも、私も、わかってる。闘わないで、自分がしたいことだけ考えてみて。もう闘わなくてもいいよ」
これは、喜多嶋先生の言葉です。
この言葉に救われる人が、どれだけいるでしょう。
わたしも自然に涙があふれてきました。
言い分を頭ごなしに否定しない。話を遮らないで最後まで聞いてくれる。
説教するのではなく、どうすればいいかを一緒に考えてくれる。
正論やきれいごとで片づけない。でも、ダメなものはダメだと教えてくれる。
喜多嶋先生は、決して否定しないけれど、ただ優しいだけでもない。
こんな人が、あのときのわたしのそばにいてくれたら…。
まわりはみんな敵ばかりだなんて思わなくて済んだかもしれない。
もっと素直に自分を出せたのかもしれない。
こんなに長い間、苦しむこともなかったのかもしれない。
そう思うと、なんだか心の奥でちょっとだけ痛みを感じました。
親や先生は、こどもにとって「縦の関係」の大人です。
教える側と教えられる側、指導する側と指導される側。
これはある種の主従関係と言えます。
縦の関係ではなく、「横」の関係の大人。
主従関係でもない。利害関係でもない。
冷静で客観的な第三者の大人の存在が、すべてのこどもに必要なんだ。
喜多嶋先生の存在をとおして、そう痛感しました。
※※※※※
喜多嶋先生は、なぜこれほどまで、理想的な対応で、こどもに寄り添うことができるのか。
この答えは最後まで読むとわかります。
それは、ひとことで言うと「希望」です。
いまつらい思いをしているこどもたち。
かつて、つらい思いをしていたこどもたち。
喜多嶋先生は、そのすべての「希望」になったんです。
今がどんなにつらくても。
自分を信じて支えてくれる人がいるから、頑張れる。
素直に頼ってみようと思える。
信じられる大人との出会いで人生が変わった喜多嶋先生は、
今度は自分がその役割になろうとします。
かつて、
自分を命がけで助けてくれた、仲間のために…。
過酷な状況でも、決して見捨てなかった、みんなのために…。
支えられる側から、支える側へ。
もしかしたら、大きな時間の流れの中で
今度は「こころ」たちも、支える側になれる日がくるのかもしれない。
それは、同じくつらい思いを抱えてきたわたしにとっても大きな希望であり、
なによりの癒しだと感じました。
〇いま、こどものあなたへ。
もうすぐ夏休みが終わります。また学校が始まります。
いま、ゆううつな気持ちのあなたへ。
ぜひ、この本を読んでください。
この物語が、今度は、あなたの生きる希望になりますように…。
かがみの孤城/辻村深月
![](https://assets.st-note.com/img/1724731362322-SXPw48PCFt.jpg?width=1200)
生きづらさを解消し、
本来の自分を取り戻すためには、
1)なによりもまず自分を深く理解すること。
2)自分を理解するために、他人の人生を知ること。
この両方が必要不可欠なのではないのでしょうか。
生きづらさを解消するために、
もっと他人の人生を知ってください。
「経験」「気づき」「考え」「学び」「生き方」
ほかの人の人生から学べることは、
思った以上にたくさんあります。
「コンプレックス」「黒歴史」「恥ずかしいこと」「失敗談」
みんな抱えて生きています。
そんな素振りを見せないで、平気な顔をしているから
わからないだけ。知らないだけ。
傷つくことが怖くて、人と深く関わってこなかった人こそ、
他人の人生を知ってもらいたい。
わたしの人生にも同じようなことあったかも。
似たような境遇なのに、どうやって乗り越えたんだろう。
対話するように本を読む。
自分事として本を読む。
わたしたちは、もっと人生を楽しんでいいんです!!
![](https://assets.st-note.com/img/1724731381108-mpZ1dcs4Kq.png?width=1200)
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自分の人生を歩き出すきっかけになってくれれば いいなぁと思い、
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