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遠距離介護は突然にシーズン2 番外編の続き

認知症義母の暴言を必死にスルーしようとする私。

心臓がバクバクするが、言葉通りに受け止めてはいけない。きっと断片的にしか理解出来ていないから、自分の中で勝手なストーリーを作り、怒る事で自分を守ろうとしているに違いない。そう思っても腹は立つ。でも、言い返しても余計ややこしくなるから、放っておこう。

夫はテニスに出かけた。自分の日常は大事だ。
私は、実家にいつでも駆けつけられるように、先月で一旦仕事やら趣味やらをストップしたので、暇。
静かに、「師匠はつらいよ」杉本昌隆氏著を読んでいた。(このエッセイとても面白いです。)
エアコンを使わない季節なので、あちこちの戸を開け放っているせいか、また下の階からおばあちゃんの大声のブツブツが聞こえてきた。
「全く、あの嫁は掃除の一つもしてくれやしないで。」

ナニぃ!かちーん!怒💢

今日は義妹が来てくれる日で、毎週、掃除と衣類の替え、おばあちゃんの入浴等をしに来てくれている。息子や嫁よりも、実の娘がやったほうが何かとスムーズなので、そういう役割分担になっている。
以前は私が掃除した事もあったが、やらないでと嫌そうな顔をするので、もうやらなくなった。実娘にも、掃除するな洗濯するな余計なことするなと毎週怒っているが、その辺は実の親子の呼吸に任せている。

その前の、「実家に帰ってばかりでバカじゃないの?」発言が頭に残っていた私は、「もう許さん、くそばばあ。」と立ち上がり、階下へ駆け降りた。そして、掃除機を持って祖母のいた寝室に乗り込み、「すみません!お母さん、気付かなくて!今、すぐに掃除機かけますね!この部屋から、直ぐにやりますから!」と、掃除機をかけた。おばあちゃんは、自分が口にした言葉が聞こえたとは思ってないと思うが、今しがた自分が言った言葉はかろうじて覚えていたのか、若干狼狽えていた。私は、「上にいたら、掃除してくれないってお母さんが怒ってるのがきこえたので、直ぐ来ましたよ。気が利かなくてすみません!」と掃除機をかけ続けた。おばあちゃんは、「え?私そんな事言った?そんなつもりじゃなかったのよ。」という。
「いえいえ、聞こえたからおりてきましたよ。それから、何回も実家に戻ってすみません。ご迷惑おかけします。でも、父が死にそうなんでね!また帰らせてもらいますので!」耳が悪くても、聞こえる様にハッキリと大声で言う。
ばあさんもばあさんだが、私も相当な鬼嫁だ。
私はどっちかと言うと、事なかれ主義なので、今までもそんなに歯向かうことなくいい子ぶりっ子で済ませてきたつもりだったが、もうどうでもいいわと開き直った。

おばあちゃんは、あちこち掃除機をかけまくる私を追いかけ回して、「私、そんな事言った?そんなつもりじゃなかったんだけど?みんなにいつも感謝してるのよ。一人じゃ生きていけないのはよく分かっているんだから。そんな事言うはずないんだけど。」と必死に訴えてくる。
「そうですか?お母さんが心の中で感謝してるかどうかは知りませんけど、文句いってるのしか聞いた事ないですよ。」と言い放つ。鬼嫁発動。掃除の手は休めない。
「本当にごめんなさいね。もし、私がそんな事言ったとしたら。言うはずないんだけど。そんな事言われたら、腹が立つわよね。憎たらしいおばあさんよね、全く。どうしたら、許してもらえるかしら。」ばあさんも必死だ。
私は、「大丈夫ですよ、慣れてますから。」
おばあちゃん、「慣れてるって、どう言う事?いつも言ってるの?私?」
「はい、いつも大声で文句ばっかり言ってますよ、みんなもう慣れてるから、大丈夫です!」
こうして、ここに会話を再現して書き起こしてみると、私の鬼嫁ぶりばかりが際立つ。しかし、どうでも良い。この際、ハッキリ言っておこう。掃除機をかけ、クイックルワイパーもかけて、私は二階にあがった。おばあちゃんは、私を追いかけてきて、「ごめんなさいね、どうしたら許してもらえるかしら。もう分からないおばあさんだから、お願いだから、面倒みてね。」「だから、みんなで面倒みてるでしょ。お父さん(夫)も、○○さん(義妹)も、私も、みんなでお母さんもお世話しているでしょ。」「うん、分かっている。これからもずっとみてくれる?」と必死だ。「大丈夫ですよ。これからもみんなで面倒みますから。(ホントか?)」となんとか階下へ降りてもらう。おばあちゃんとのやり取りで、グッタリ疲れる。なんかよくない物質が脳内で分泌されている気がする。やってしまった。スルー出来なかった。ハハハ、まあ、いいや、どうでも。なんかスッキリしたし、おばあちゃん、どうせ全部忘れるし。(感情は残るので、ホントは駄目。)

帰ってきた夫に、「おばあちゃんと、揉めたわー。」と白状し、「駄目だ、相手にしちゃ。離れとけ。」と言われる。

夫は、相手にしない方式を貫いている。さすが、サイコパスは違う。

その日は、認知症でかかっている心療内科の日だったので、夫は暴言が酷くなった事を相談して、薬を替えてもらった。それで直ぐ治るとも思えない。もう施設に行ったほうが良いレベルになってきたとも思うが、施設入居となるとまた大騒ぎになる事は目に見えているので、私達家族がおばあちゃんの暴言をスルーするしかない。こんな事になって、家族みんなに疎まれ始めている義母が気の毒ではある。人間が死ぬまで生きるって、本当大変な事だ。と鬼嫁は思うのだった。

番外編終わり