[読了] 名画の謎 旧約・新約聖書篇
久しぶりに本を積読にせずに一冊読み終えられたので、今後のモチベーション維持のためにも感想文を残しておきたいと思う。
今回の一冊は「名画の謎 旧約・新約聖書篇(著・中野京子)」
自己紹介記事やプロフィールでも軽く触れているが、私は幼少期に2年ほどドイツに住んでいたことがある。
両親はその期間を余すことなく満喫しようと、日々私を色々なところに連れて行ってくれた。
美術館は、その最たる場所の一つである。
当時はドイツに限らず、ヨーロッパ各所の美術館を巡った。
ヨーロッパの美術館のメインどころと言えば、やはり宗教画であろう。
そのコレクションは好きな人であれば垂涎ものだろが、生憎と小学2年生にもならなかった当時の私は、ほぼ理解できずにスルーしてしまっていた。
とは言え、幼心ながら「何か」は感じ取ったらしい。
それから20年以上が経過したが、私はいまだに宗教画(および宗教)に対する漠然とした興味を抱き続けている。
本書は、そんな私の漠然とした興味にクリティカルに応えてくれる一冊だった。
そもそも(こう書くと正確ではないのだが)キリスト教の経典には「旧約聖書」と「新約聖書」があり、その2つの中身の違いを理解している日本人はそれほど多くないのではないだろうか。
私自身、旧約聖書がキリスト誕生以前の、新約聖書がキリスト誕生以後の話を記したものだとはぼんやりと理解しているものの、具体的に両者にどのようなエピソードが描かれているかは把握しきれていなかった。
この両者の違い、およびエピソードを絵画によってひも解いていくのが本書である。
約30枚の絵画が、軽妙な語り口で解説されていくのは非常に痛快ですらある。
それでいて的確に各書のエッセンスを解説してくれるものだから、どんどんと読み進めてしまった。
例えば、かの有名なレオナルド・ダ・ヴィンチの「受胎告知」の解説ページには下記のような言葉が綴られている。
うーん、世のマリア信仰を恐れぬ突っ込み。
だが著者のこのような冗談めかした本文の中には、多くの新たな発見が散りばめられていた。
「おわりに」と題した筆者あとがきに「名画と読む イエス・キリストの物語」への誘導もされていたため、思わず(そして迷わず)ポチッてしまったほどである。
追加で買った本についても、近々感想文を上げることになるだろう。
日本人にとって「宗教」というのは近くて遠い存在で、宗教間の違いだけで争いが起こる世の中はいまいち想像しにくいものだ(何せ、根底は八百万の神を信仰する民族である)。
それでも現実問題として、宗教が生み出す諍いと問題、そしてそれを信じる人の心の安寧は教養として理解しておきたいところ。
本書は、その期待に十分応えてくれる一冊であったと思う。
最後に、私が深く頷いた著者のあとがきから一文を紹介して、本感想文の結びとしたい。
*ヘッダー写真:シュテファン大聖堂(ウィーン)往訪時
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