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二度の出産で二度リーダー職から降りた自分が考える男女「平等」

タイトルからこの文章に目を留めてくださった方にまず誤解のないように言いたいのは、私は二回とも会社から十分な説明を受け、自分の意思でリーダー職を降りたということである。
そう言った意味では、以下に記載するのは決して今もお世話になっている会社を告発する類のものではなく、ただ淡々と「出産とキャリア」について向き合っていく文章となることをご容赦いただきたい。

冒頭に書いた通り、私は出産を機に自分の意思で出産前の役職であったリーダー職を降りた。
それでも少しだけ心にしこりが残っているのは事実のため、降りたくないと思っている方がその職を降りるのはどれだけの苦痛を伴うものかと思う。
ただ結論から言って、リーダー職を務めていた人間(現状、特に女性)が出産後に元のキャリアに戻って働くというのは中々厳しいものがあるのではないかと感じている。
何が厳しいと感じられるのか。そして厳しさを理性で理解していないがら、何故心にしこりが残ってしまうのか。
そんな部分を踏まえながら、当事者としてこの場を借りて「出産後のキャリア形成」を考えたいと思う。

私はとあるベンチャー企業に勤めるしがない女性社員で、勤続年数は社内ではかなり長い方になる。
そんな背景もあり、ありがたいことにこれまでに会社で二度、いわゆるリーダー職というものを任されてきた。
そしてリーダー職に抜擢されて以降、それぞれ1年前後で産休・育休を取得し、復帰後はいわゆる平社員として会社に勤めている。

リーダーに任命した人間が1年前後で出産で長期不在となることは、会社にとって痛手になることは重々承知しているつもりである。
一方で誤解のないように言っておきたいのだが、私は会社に雇用される段階から出産および育休の取得の希望を会社に伝えており、リーダー職の辞令を受ける際も「家庭事情を考慮して(比較的近いタイミングで)育休を取得する可能性がある」とも明確に示し、それを受諾いただいた上で任に就いた。
このため、実際の二度の出産の際もかなりスムーズに会社に受け入れていただき、私自身自分の業務を細分化して引継ぎを行えたことは大変に有り難かったところである。
それでも「業務を行っていた人間が一人抜ける」というのは(特にベンチャーでは)大きな穴となるため、私が抜けた後に業務を継続してくださった皆様には本当に感謝の念に堪えない。

話を少し戻すと、そうして得た二度の育休から復帰する際、私は会社側としっかり面談を行った。
一度目の復帰後の提案は、平社員としての部署の移動。私より勤続年数が長い親しい先輩がリーダーを務める部署で人が足りずに困っているため、助けてあげてほしいという相談だった。
詳細は割愛するが、元より私は就職した部署から全国営業のある部署に異動になり、そこでリーダー職を務めていた。
提案を受けた部署は元いた部署に業務内容が近く、かつ出張も発生しない部署だった。リーダー職を務めていた部署に穴を空けてしまうことに一抹の不安はあったが、それでも小さい子供を抱えての出張業務に自分自身大きな不安があったのも事実。
会社側がそれで回ると判断してくれたのであれば大丈夫だろうと、快諾の上部署移動を行った。
二度目の復帰後の提案は、ある意味「なし崩し的」だった。前述した部署で一年後にひょんなことからリーダー職を任せていただいた私は、復帰自体は同じ部署で行うことになっていた。
が、私の所属する部署が育休中に「チーム」から「部」に昇格しており、当時チーム長(≒ リーダー職)であった私の役職自体が不要なものとなっていた。
復帰後は部長直下で横並びに、という復帰前面談での提案であったが、そちらについても復帰後はしばらく時短勤務が確定しており、かつ子供二人を見ながらのリーダー職は到底務まらないだろう、と自分でも判断し、違和感なく受け入れることができた。

そうした経緯を経て、私はこれまで二度の出産で二度リーダー職から降りた人間となった。

ここまで読んでくださった方の中には「それは不当な扱いでは」とお思いになる方もいるかもしれない。
実際、妊娠・出産を理由にその旨を望まない従業員が降格などの不当な扱いを受けないよう、現在では法律に定められている。

だが当事者として冷静に「子供を抱えながらリーダー職が務まるだろうか」と自問自答した時、現状の労働環境では無理だな、と私は結論付けざるを得ない。

私がそう結論付ける最大の理由として、自身の会社へと割けるリソースが限定的であることが挙げられる。
一たび子供をもうけてしまうと、どう足掻いても向こう数年単位で会社へと割ける時間は激減する。子供たちにとって親は「唯一無二の存在」であり、親でなければ施せない事象がいくつもある以上、どうしてもそちらに時間が割かれてしまうのは事実である。

会社のリーダー職(もとい管理職)ともなれば、社内業務を回すのは勿論のこと、所属してくれる皆様のマネジメントも行わなければならない。マネジメントというのは別に機械的に管理するということではなく、各人が円滑に、かつ最大限の力を発揮して仕事ができるよう、業務分担や配置を考え、時に他部署とも調整することでもある。
しっかりと時間を使って考えなければ失礼で、そして回らない内容を、子供を育てながら通常業務に追加して回せるか。
勿論それができている女性管理職の方も世の中沢山いらっしゃるのだろうが、少なくとも今の自分にはそれができるとは思えなかった。
そう言った意味では、一人目の子供が少し大きくなってから任されたリーダー職は何とか奇跡的なバランスで(かつ、チーム員の皆様の多大なるご理解をいただきながら)回せていたのだと思う。

そんな「奇跡」が通じていたのも一人目まで。二人目の子供を抱えた今では、次にリーダー職を目指せるのは一体いつになるだろうと思う。

この「働きづらさ」を感じている理由は何だろうと考えると、一つには何度も仕事を出産で休みながら働くことに会社、引いては社会への罪悪感があるからではないかと思う。

女性の社会進出、なんて言葉がむしろ時代錯誤に聞こえるほど、昨今では性別に関係なく働く意思があれば比較的労働ができるようになった。社会全体を見渡せばまだまだ課題は多いものの、先人達の(文字通り)働きもあって徐々に女性の労働環境は良くなっている傾向にある。
それでも実際に「業務をしてきた人間が業務に穴を空ける」ということは、会社に一種のダメージを与えることに変わりない。
いくら国が「産めよ殖やせよ」と子育てを推奨したところで、この罪悪感(もとい会社へのダメージ)を考えるならば、正社員で何度も子供を設けることは若干躊躇われてしまう。

子供を産むということは女性しかできないことであり、生物学的に現状何か代替手段がある訳でもない。
かつ、出産とは少なくとも体に大ダメージを与えるものであり、出産直前まで同じように働き続け、出産直後にサッと復職できるようなものでもない(一説には、出産は交通事故に遭ったのと同じレベルでダメージを受けると言われている)。
そんな「どんなに短くとも数ヶ月レベルで仕事に穴を空ける」ことになる状況で、いわんや役職を持った状態で休みを何度も取れるかと言ったら、現状厳しいのではと言わざるを得ない。

また本能レベルで刷り込まれた「子から母への依存」も、仕事をするという一点だけで論じるならば大きな課題の一つである。
私は家庭環境については正直かなり恵まれており、主人は私と等しいレベルで子供との時間を作ってくれているし、料理を始め任せきっている家事は多い。
二人の子供それぞれと向き合っている時間・向き合い方は殆ど変わらないはずのに、子供たちは特に不安なときや体調不良の時は最終的に「母親」に甘えてくる。
いわゆる「ママじゃなきゃ嫌」状態であり、こうなると例えば子供の風邪で仕事を休む時などは、私が診てあげなければと思う場面も多い。
必然、子供の看病で有休を使う際は私の方が消化が多い場面もある。

上記に挙げた二点は、敢えて「現状覆しようがない性差」を述べたものである。
こうした「覆しようのないもの」を是正していくためには何が必要なのかと、最近では自問自答しながら仕事をしている。
少なくとも言えるのは、制度的に男女「平等」にしたところで解決しない問題もまだまだ山積みになっているということである。

私はこれからもどこかの場面でリーダー職に就いていきたいし、これから出産を控える女性のリーダー職の皆様にも苦しい思いをしてほしくない。
男女「平等」だけが今の答えではないのではないのかもしれない。そんなことを考えながら、三連休の子育てで疲れ切った体と、明日からの仕事に思いを馳せる思考の夜は更けていくのであった。

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