機械調律師と廃棄人形 -Code-Zara-
-動かない人形-
廃ビルの奥深く
堆く積まれたガラクタの山
その天辺に彼女はいた
隙間からこぼれる光が
ガラス玉の瞳に反射する
表情からは何も読み取れない
中空を見つめ続ける瞳は
深く淡く澄んでいた
カチリカチリと鳴る音
私の内側から響く音 鼓動
ピイピイと鳴く音
羽ばたくものが歌う音 飛翔
教えてくれたあの方は
いない
私は
私は
ワタシハ ………………
木々の音
鳥の音
風の音
夜と昼と朝と
異なる音色が私の内側で共鳴する
雨の音に混じり
キィィィィィィ と
見知らぬ音が響き始めた
私の内側が熱を持つ
ガラスの視界に
極彩色の模様が波打ちゆがむ
瞳が透き通り始め
視界に歪な輪郭が
見えてくる
黒い大きな輪郭
それは
鳥や木々とも違った
. . ..………………
黒い物が問う
-000 0010 000 0011
黒い物が問う
-001 0101 000 0110 001 1010
-001 0000 001 0110 001 1001
黒い物が問う
-000 0100 ………………000…
……………………………………. . . .
…… y… e . s ……
と私は応答する
バチリと火の花が艶やかに明滅した
身体が溶けるように熱い
黒い物が問う
『 お帰り 』
と柔らかに
瞳に映る黒い物は
色を持ち始めた
それはあの方に
”人間” と教えられた者
『 お帰り 』
と言う黒い者は
何処か懐かしい音を奏でた
その音に私は
”歓喜” ”幸福” ”安堵”
を感じる
私の身体が浮遊し
黒い者が告げた
『 家に帰ろう、Zara 』
と優しげに
私は答える
… y.…e.s … … y.e…s … … ye.s …
『 Y e s 』
テキスト開始 000 0010
テキスト終了 000 0011
否定応答 001 0101
肯定応答 000 0110
置換 001 1010
伝送制御拡張 001 0000
同期信号 001 0110
媒体終結 001 1001
伝送終了 000 0100
装置制御
DC1DC2DC3DC4
--起動完了--