音楽ストリーミング時代の今。『POP LIFE』メモ
ゲストのジェイ・コウガミさん(デジタル音楽ジャーナリスト)が気になって、田中宗一郎さんと三原勇希さんのSpotifyのオリジナルポッドキャスト『POP LIFE』を聞いてみた。
その中で、最近個人的に気になっていた疑問が話題となっていたので備忘録としてメモ。
最新エピソード #012 日本から広い世界に飛び出そう
サブスク時代、日本と海外の音楽業界の変化
音楽のストリーミング化に伴って、ユーザーの聞き方も音楽ビジネスも変化している。
世界的に見ると音楽業界は、もう一度うるおいを取り戻しはじめている。(ライブビジネスなど)
しかし、CDが売れなくなった時代に日本はまだまだストリーミングよりもフィジカル(CD)が強い。
世界の売上でいうと、アメリカ:1位、日本:2位という状態がずっと続いているなか、日本の売上額の70%はCD。アメリカは70%がサブスクリプションで占めており日本とは逆の現象。
2019年1QのユニバーサルミュージックのグローバルCD売上世界第3位は「back number」。UPCOMINGには「king & Prince」が入っている。
両者ともストリーミングを行わず、CDのみ発売している。
リバイバルのQueenや世界が熱狂するビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)より上位なのが驚き。ユニバーサルミュージックは世界一のシェアなので、日本市場すごい。
フィジカル戦略でいつまで勝ち続けられるのだろうか。(日本独自としてサブスクリプションが発展しないよう音楽業界が動けばこのままなのかもしれない...)
時代の寵児、ビリー・アイリッシュについて
今年のコーチェラ・フェスティバルのライブ配信を見ていて驚いたのは、17歳の新生、ビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)への同世代女子の熱狂ぶり。
彼女のウィスパーボイスがかき消されるほどの黄色い歓声が上がっていた。ステージをスイッチングしながら見ていたそれまでのライブとは聞こえ方が全く違うので、PAのバランスがおかしくなったのかな?と思ったほど。
日本でいうところの、一昔前のアイドル(ジャニーズの誰か?)のファンが泣き叫ぶような。
この状況を目の当たりにした時に、本当に驚いた。アメリカのティーンにいったい何が起こっているのだろう?
音楽的にオルタナティブでメランコリック、決してポップではない。
(NIRVANAとRADIOHEADが好きだった私が17歳だったら熱狂してるかもしれない)
日本でこんな現象があり得るだろうか?と考えさせられた。
2019年最大の新人ビリー・アイリッシュが大成功をおさめた現代的な(主な)理由
●若い時からのスタート
13歳になった時、兄と2で幻想的な楽曲「Ocean Eyes」をサウンドクラウドにアップロードし、一夜にしてその曲は爆発的なヒットを記録し、Spotifyでは実に2億回以上の再生回数を獲得することになる。
●DIY(自分たちでやる)
メジャー・レーベルの支援を受けながら、彼女は兄と共に曲作りと録音を自宅のベッドルーム・スタジオで続け、そこでデビュー・アルバム『WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO? 』を完成させた。
●レコード会社へ挑戦
ビリー・アイリッシュの成功は、如何にストリーミングが世の中の音楽的嗜好に影響を与えているかということと密接に関係している。それこそが、まだデビュー・アルバムの発売前だったにも拘らず、彼女が数十億回のストリーミング再生を達成できた要因なのである。
●SNSで自らを曝け出す
ビリー・アイリッシュの場合は、年齢の点においてもまさしくその通りで、彼女のティーンのファンは、彼女のことを謎めいたアイドルというよりは、同世代の仲間のように思っている。
話を『POP LIFE』に戻す。
今までストリーミングに強いジャンルはHIPHOPとダンスミュージックだと言われていた。
レディー・ガガや、テイラー・スイフトなどポップスを代表する女性シンガーたちもストリーミングではブレイクしづらかったが、ビリー・アイリッシュとアリアナ・グランデの最新作がポップスではじめて大成功をおさめた。ビリー・アイリッシュはポップスターなの?という疑問が残るけど、その国でヒットする音楽がその国のポップスになる、いうことらしい。なるほど。
ポップスがストリーミングでヒットする、というポテンシャルが証明され、彼女たちの作品は今後の指標となるアルバムになった。
またレコード会社の役割も変化していて、アーティストのストーリーを戦略的に作り込む戦争にもなってきているらしい。
レコード会社にしばられないことを売りにやってきたビリー・アイリッシュにどこまで口出ししているかはわからないけど、本人のアイデンティティを理解してストーリーを発信するバックアップはしていると思う。
日本の業界の仕組みは、CDが売れまくっていた時代のまま変化していないらしい。プロモーターはアーティストのCDが売れないとサポートしないし、メディアでいい記事を書いてライブにお客さんが増えた実感があっても、その状況は長くは続かない。
一方で、ストリーミングによって台湾、中国などで人気がでてきている日本のアーティストもいる。
日本国外に出ていくチャンスは増えているはずなので、海外が主戦場となるアーティストがもっと増えればいいと思う。
国内でライブをするよりも、海外のプロモーターは人を集めてくれるし、歩合制ではなく最初にギャラが支払われる。東アジアはおすすめな環境らしい。
インディーズのレーベルにはいい時代。だけど収益を上げる方法は増えているのに人材も仕組みも追いついていない。
アメリカの音楽業界は長年苦しんできたが、最近復活した。仕組み、システム共にあたらしいアイデアでどんどん変化している。
日本の音楽業界もデジタルテクノロジーを使うなどして変わらなければならない。
***
NetflixやAmazonなどの企業の勢いがある動画配信業界に比べて、音楽業界はまだまだこれからの印象。
動画配信は、権利の問題でそれほど利益がでるビジネスではないのだけど、そこを逆手にとって、Netflixなどは自分たちでスタジオを作り、クリエイターを集めてオリジナル作品にどんどん投資をして、映画業界に多大なる変革を起こしている。
音楽業界も変革のとき。古い仕組みは今すぐ変わってほしいし、サカナクションのように若いミュージシャンもいろいろ挑戦してほしい。あと、未開の地に等しい印象なので、テクノロジーを使えばビジネス的にチャンスが転がっていそう。
昨年の記事だけど興味深いので貼っておきます。
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