【書評】『アイデン&ティティ―24歳/27歳』みうらじゅん
あの飄々としたみうらじゅんが、こんなにひりひりするほどさらけ出して、存在理由を突き詰めて、血みたいなロック漫画を描いてたとは! 君は、君だけのティティを持っているか!(笑)
※昔書いた他のところからの転載の天才
どうも、わりと、ぼくの書評、読みたい方がいてくれたので
久しぶりに投稿してみました(笑)
映画の感想がたまってるんだが(-_-;)
えーそうです、ひとまず、これ!
みうらじゅんの漫画、アイデン&ティティ読めたんです!
すげえよかった! 売れないミュージシャンが
ボブ・ディランやジョン・レノンのイメージに励まされながら、
ロックを追及していくんだけど、
現実はダメダメな生きざまで、
でも、ひたむきで、真摯(しんし)に、嘘がない感じで、
ひりひり、しみじみ、いちいち切実に胸に響く。
あと、本命の彼女の人物造詣が深いなあ。
モデルがいるからかな。
すばらしく奥行のある、なんともいえん魅力的な人物だ。
にしても、全編ボブ・ディランの詞が物語と相まって効いていて、
これは、夢を追っかけてきた人間なら、無視できない、
鬱屈し、屈折した、やるせないかたまりのような手触りが、
ひきこもつまってる。
だけど、ほんとに、逃げるようにセックスばかりしとる(笑)
そんな気持ちもわかる気がするし、
女性たちの描きかたもなまなましく、
有名になるとストーカーぽい女性まで出てきたり、
同窓会で昔の彼女がアプローチかけてきて、
お互い婚約してるのにやはりセックスしちゃったり。
一言でいえば、アイロニー(皮肉)に満ちていて、
味わ深い青春私小説のような文学になってる。
ともかく、ぼくは、本命の彼女(芸術肌)の存在が
一番のこの物語のへそであり、救いだと思う。
ちょっと風変りというか、エキセントリックというか……
一度だけ人間らしく主人公の浮気で軽くとりみだすけど、
そのあとは冷静で、芸術表現が高まることだけ見つめ続けていて、めっさ変わってる。けど、強烈に魅力的やね。
このなかにつまってる、
エッセンスを映画の方ではどれだけ立体化できてるか、
今からめっさ楽しみや――
【映画』【アイデン&ティティ】
やっと、観れた。
みうらじゅんの自伝的な映画のやつ。
原作が好きだったので、わりと原作漫画に
忠実でよかったと思う。
ロックミュージシャン目指してる若者たちの理想と現実。
ある日、ボブ・ディランが白昼夢?のように現れ
そこからずっと自分のそばにいるようになるボブディラン。
言葉のかわりにハーモニカーで代弁される音色。
それが、ボブディランの研ぎ澄まされたシンプルな言葉となって
ささってくる。
これは青春映画として実に切実で、いい。
とくに何か表現目指している人は、
一度体通しておいて損はないと思う。
やっぱ、原作でもそうだったけど
エキセントリックな彼女役、麻生久美子が
男にとってはキーパーソンになるじゃろなあ。
――(本文に戻る)あと、感じたのは、福満しげゆきの漫画、
あれに手触りが似てる。
あの系の感じが好きなら絶対読んだほうがいい。
しかしまあ、あのひょうひょうとした趣のみうらじゅんが、
とにかく“ティティ”さらけだした、血の叫びみたいな漫画だった。
やっぱ、心にはこういう魂持ってる人なんだな。
本書の中にあった写真は若いときのだと思うけど、
かなり、あいくるしい愛嬌のある顔で、
モテそうだった、というか、モテたんだろうなあ(笑)
この間、糸井重里とおもろい対談してて、
その昔話をきいたばかりだったから、
余計たのしく読めた。
オヌヌメの一品ですな (´ー`)