『覚醒』
気が付くとそこに立っていた。記憶喪失だろうか。自分の名前すら思い出せない私以外の連中も同じなのだろうか。みな、寡黙に押し黙ったまま茫然としている。
番号のついたネームプレートをつけられ、綺麗に整列させられているところをみると、何か悪いことをしでかした報いを受けているのだろうか。
青ざめた顔してる奴もいれば、血の気のひいた白い顔の奴もいれば、肝臓に疾患があるのか、病的に黄色い顔の奴もいた。
――っう!
突然、頭の中に白い閃光が走り、記憶がフラッシュバックする。無骨で無機質な大きい部屋――実験施設内の無菌室のようなところで、体中を好き勝手にいじられまくっている感覚が蘇る。
寒気と吐き気が同時に襲ってくる。なんとおぞましい感覚だろうか。時折、「うっ……」というくぐもった声がどこかであがる。みなもフラッシュバックに苦しめられているのだろう。
――数時間経過してわかったことがある。ときおり、なんの前触れもなく、 私たちの中から誰かが選ばれ、どこかへ連れ去られていく。そして、彼らは二度と、戻ってこない……。
みな、次は自分の番かと戦々恐々としはじめた。また、ヤツらがきたのだ。
ヤツは私の前で足を止めた。次の瞬間、そいつは無造作に私をつかみ、乱暴にカーゴに放り込んだ。
乗り物にゆられること数十分。私は見知らぬ建物の中へ押し込められた。そいつは私をまっすぐに立たせると、いきなり身ぐるみをはぎとった。
――なっ!?
私は抵抗する間もなかった。にやりと笑ってそいつが再び接近してくる。
――くっ!
一体私をどうす――言葉も言い終わらぬうちに、そいつは唯一残されていた大事な秘部を覆い隠すシールドを半分ほどまくり上げ、そこに強引にぐつぐつと煮だった煮え湯をぶっかけた。
うわあああああああああああああああああああああ!!!!
私はあまりの熱さに悶絶し、意識を失った。薄れゆく意識の中で、そいつが下卑た笑みを浮かべているのが見えた。
・・・
どれだけの時間が経過したのだうか。気が付くと、そいつがまた私の前に立っていた。
も、もうイヤだ!
声の出ない叫びをあげる私を無視し、そいつはまたもや私に手をかけた。今度は大事な部分を覆い隠していたシールドもすべてはぎ取られた。
や、やめろ!
頼むやめてくれ!
お願いだ!
なんでもする!
だからもう――
うわああああああああああああああああああ!!!!!!
「いっただきまーす!」
突如、あまりにも場違いな、能天気な声が私の頭上に響いた。
……へ?
私の脳内に再び白い閃光が走った。そして私は、唐突に、すべてを思い出した。
そうか……そうだったのか!?
私は――
私の名前は ――カップヌードルだったんだ!!
お買い上げ、ありがとうございました!
どうぞ、おいしくお召し上がりくださーい!
END
※蛇足な補足:白い顔のは普通のカップヌ○ドル。黄色い顔はカレーヌ○ドルかも…