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東京路地紀行 10 文京区本郷
前回の本郷訪問では菊坂下の樋口一葉旧居跡があるコミュニティ空間を構成している路地を歩きました。今回は同じ菊坂下のそのとなりの路地を訪れてみます。
菊坂と呼ばれている坂道は本郷通りから春日の白山通りに向かって緩やかに下っていきます。本郷通りが江戸時代は岩槻街道または日光御成り道と呼ばれた主要街道の一つであり将軍の行幸街道でもあった尾根道なのに対して、白山通りは小石川やほかの中小河川数本が北から南へ向けて流れ込んでくる大きな谷筋に造られた通りです。そのため、菊坂もその高低差にそって本郷通りから白山通りへ向かって傾斜しています。
このことは菊坂と並行している今回訪れる路地についても同じです。この路地はもともとは本郷通りに埋設されて江戸市中へ水を供給していた千川上水を分水して菊坂と並行するように流し、ここら辺一帯への水の供給を担っていた水路とともに構成されています。田畑をつくるにはエリアが狭いのでおそらく住民への飲料水供給が目的だったかと。
そのような目線でこの路地を歩いてみると本郷台の崖とのふちに沿って暗渠が広がっている、狭いエリアだけどいくつもの井戸が存在している(樋口一葉旧居跡の井戸もその一つです)、ということがわかります。
そのような路地空間のなかでもより下流域にあたる一角はいまでも昭和的な空間が残っている癒しの場所でもあります。
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手前の青いトタンの平屋家屋の軒先には物干しざおかけの木製の柱も健在のようです。
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白いアパートの外壁やサッシには落書きかアートか描かれていますが、住んでいる方がいる現役アパートです。
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建物は新しくなっていますが、軒先を見ると昔の路地の雰囲気をふんだんに残しています。路地ならではの鉢植え園芸が盛んなようです。
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長屋のようにみえますが、物干し台はそれぞれ違って個性があります。
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スリバチの法則が適用されている風景。奥の本郷台地にはさらに高い建物、マンションが建って段々となった山のように盛り上がっているのがわかります。
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路地への坂道をおりていく後ろ姿。遠くにかすんだように高層マンションらしきものが映っています。路地と高層ビル、昭和と令和の光景。つい数年前までは昭和と平成だったけど。
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どういう経緯でこの狭いエリアに住宅が建てられたのかはわかりませんが、数本の路地がひかれ、いくつもの井戸が存在する、古い家もあれば新しい家もある、コミュニティ空間として機能しつづけているエリアがそこには存在することがわかります。ふた暗渠の道は春日駅方面への近道のようでよく往還する人を見かけたりすれ違いますが、基本的には地元の方しか通らないような場所。これからも静かに見守っていきたいと思います。