室町無頼ス
ほんの少しの史実を風船のように膨らませて、見事なエンターテインメントに昇華させた東映時代劇について、あれこれと妄想しながらガーリックライスを料理した記録。
室町時代、寛正二年(1461)飢饉と疫病により多くの犠牲者が出ていた。
人々の生活は困窮。将軍、足利義政を始めとする幕府は民のことなど顧みずに優雅な暮らし。
税を払えず、暮らしていくことも困難な人々は土倉という金融業者から借金。
返せなくなると容赦なく僅かな家財道具も奪われ、女や子供は人身売買の対象に。
そんな都に姿を見せた牢人が蓮田兵衛(大泉洋)
釼術の達人で何事にも捉われずに己の才覚で飄々と生きる無頼漢。
残ったご飯 1膳分位
大蒜 2欠け
ツナ缶 1缶
コーン 1缶
バター 10g
玉葱 1/4
塩 小匙1
黒胡椒 好きなだけ
昔馴染で今は洛中警護役を務める骨皮道賢(堤真一)に呼び出された兵衛、一揆を企てている者達の鎮撫を頼まれる。
褒章として銭と共に渡されたのが棒術の達人である少年、才蔵(長尾兼杜)
才蔵に武術の天稟を見た兵衛は、自分の師である唐崎の老人(柄本明)に預けて鍛えてもらう。
その間、一年。鎮撫どころか兵衛は彼方此方を巡って大規模な一揆の準備をしていた。
というのが大まかなストーリー。
映画の核となる人物、蓮田兵衛と骨皮道賢はどちらも実在。
史実では骨皮道賢は三百人を束ねる足軽大将。この映画から五年後に起こる応仁の乱で東軍、細川勝元に属した。
文字通り骨と皮のように痩せた男だったとも、生業が皮革加工業者だったので骨皮と名乗ったとも言われる。後者だったら、いわゆる被差別部落出身者ということになる。
昔の大河ドラマ『花の乱』で、ルー大柴が演じていました。
一方、蓮田兵衛はこの映画で描かれる「寛正の土一揆」の首謀者として史書に記されているが、名前以外は何もわかっていない。
この二人に接点があったかどうかは不明。
しかし不明ということはあったかもしれないということ。そこからこの物語が生まれたと思えば、それはそれで面白い。
予告編でも流れているので隠してもしょうがないので書きますが、一揆は起こります。いや兵衛が指揮して起こします。
そこに至るまでの過程がしっかりと描かれ、修行を終えて達人となった才蔵、そして才蔵に負かされた兵法者達も一味同心。
無策な幕府のトップ、将軍の足利義政は浮世離れして何も考えていないように描写。取り巻きの守護大名達の中、伊勢貞親のみが民の心配をしているが、他は税を取ることと自分達の生活しか考えず。
わかりやすい悪役として北村一輝演じる名和好臣。
「民なぞは蟲。蟲も潰せば油が取れる」などとほざく。
面白半分に民を踏み躙るような人物。
今も昔も支配者層にはレプタリアン(爬虫類型宇宙人)が混じっている。
爬虫類顔の北村一輝が守護大名を演じているのは、世の真理を体現?
ただ、名和好臣とは架空の人物ですけどね。
才蔵に課せられる修行は冗談のように危険で漫画チック。しかし短期間で強くなるにはそれ位のことが必要かも。
クライマックスの一揆の場面では、烏合の衆だった民百姓が巧みに幕府軍や道賢が率いる足軽隊をかわして、土倉が集住しているエリアへと都を進んでいく。
夜、松明を掲げた民と幕府軍がぶつかり合う集団戰はかなりの迫力。
兵衛や道賢の釼技も冴え渡る。鍛え上げた才蔵の棒捌きも光る。
他にも巨大な金棒を振り回す大男や弓矢の達人の美女等、ビジュアル的にも瞠目。
派手で迫力がある映像が好きな人にはたまりません。
流れる音楽はどこか西部劇風。
風來坊が弱き人々のために戰うというストーリーは確かに西部劇っぽい。
ただ、難点を言うとドラマ部分が弱い。
兵衛と道賢がかっての悪友ということですが、どういう経緯で知っているのか、どうして今は違う道を歩んでいるのかがまったく説明されない。
以前は道賢と恋仲で、今は兵衛と割りない仲になっている芳王子(ほおうじ)という遊女が登場。
この三人にどういう過去や繋がりがあったのかも語られず。
映画という二時間の尺では収まりきらない物語だったのではないかと思える。連続ドラマとして兵衛や道賢の若い頃から出會いや交流からしっかりと描いた方が厚みが出たように思える。
垣根涼介の同名小説が原作ということですが、原作ではその辺りは語られているのだろうか。
垣根涼介の小説は『光秀の定理(レンマ)』は読んだけれど、どうも理屈っぽい感じがあって、あまり好きになれなかった。
コーンの甘さと黒胡椒のピリッと感が相反する魅力。正に兵衛と道賢のよう?
塩がコーンの甘さをより引き立てる。バターで炒めた玉葱は甘く、大蒜の香と風味が食欲を増進。
監督は入江悠。この人は『サイタマノラッパー』という自主製作映画が注目されて大作映画も任されるようになったという経歴の人物。
自主製作ということで思い出すのが去年、観賞した『侍タイムスリッパー』↓
『侍タイムスリッパー』を自主製作した安田淳一監督もいずれは『室町無頼』のようなお金も時間もかかった大作時代劇のメガホンを取る日が來るかも?
コ▢ナ茶番デミックという疫病モドキ、廣がる格差。令和時代も室町時代に酷似。
ただ、今の時代に蓮田兵衛が現れても一揆は起こりそうもない。
多くの日本人は自分の頭で考えて行動する氣概を失ってしまった。
しかし、一揆の代わりに静かな革命が起こっているように感じることがあります。
今まで隠されていたことが今、明るみに出始めている。
(ワクワクの被害とか、目玉マークの電視台とか)
今は風の時代。隠されていたことを風が吹き飛ばして明らかにしてくれるのでしょう。一揆や暴動で世の中が変わるよりも静かにいい方向に向かう方がずっといい。
派手で迫力ある一揆や戰闘は映画の中だけでいい。
そんなことを妄想しながら、室町無頼スをご馳走様でした。
Hasta la vista.