研修受講後に「とはいえ‥」を枕詞に、反論を引き出す振返り方法
こんにちは、渡辺です。
ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズという会社で経理や人事の仕事をしています。
この記事の要旨
社外講師をお招きし、ハラスメント防止研修を全社員で受講した。
研修後に独自に設定した振返り方法が、思いのほか社員に好評だった。ぜひ使ってみてください。
①5~6人で1組になり、②「とはいえ‥」という枕詞を用いて研修内容に対する反論を全員で考える。③その後、反論に対する反論を全員で考える、という方法。
ハラスメント防止の研修を全社員で受講した
ケンブリッジでは年に1度、ハラスメント防止の研修を全社員で受講しています。
今年は、ピースマインド社の方をお招きし、「リスペクト・トレーニング」を実施いただきました。
「リスペクト・トレーニング」については、以下の記事を参照してください。
この研修の場は人事が主催しています。
「この研修の内容をどうしたら社員個々の内面に落とし込んでもらえるか?」を人事チーム内であれこれ議論しました。
この手のテーマってどうしても「感度の高い人によく届き、感度の低い人には届きにくい」という構造になりがちなんですよね。本当に届いてほしいのは後者の人たちなのに。
一般論ではなく個別の具体論に。そして、他人ごとではなく自分の身の回りのテーマと捉えてもらう。
そのために、ピースマインド社の講師の方に丸投げするのではなく、研修受講後の振返り方法を自分たちで工夫する必要がありました。
グループで「とはいえ‥」を吐き出してもらう
実際に採用した振返り方法は、以下のとおりです。
例を挙げるとこんな感じです。
これを個人ではなく、グループで一緒にやります。
誤解されやすいのですが、グループ内で反論し合うのではありません。
全員で一緒に②に取り組み、その後に全員で一緒に③に取り組む。ここがポイント。
規範的な研修に対する反論は吐露しにくい
プレゼンテーションや文書作成のようなビジネススキル系の研修の場合、「こういう場合はうまくいかないのではないか」といった反論や違和感は、比較的表明しやすいように思います。
一方、今回のハラスメント研修のように、規範的な内容である場合はなかなか反論や違和感を表明しにくいのではないでしょうか。
「これを言ったら古い人間だと周囲に思われてしまわないか」という懸念が先立ってしまう。
その結果、反論は胸の内にしまわれ、内省が不十分なままで終わってしまう懸念がありました。
そこで、前述の「とはいえ‥」を全員で吐き出す、というデザインに至りました。
②の振返りを始める前に「"とはいえ‥"という枕詞をつけて、あえて反論を捻りだしてください。ここで語る言葉はあなたの言葉、価値観ではありません。反論をつぶやく役を全員で一緒に演じてください」と伝えました。
②の場では、全員が一緒に反論・違和感を唱えるので、否定されることはありません。
その後、③では反論に対する反論を全員で考える。
これによって、吐き出した反論・違和感と、研修内容の落としどころ・整合性を見出してほしい、というのが狙いです。
ちなみに当日は、全員で②③に取り組む前に、ピースマインド社講師の田中さんと人事メンバーの2名で②③のサンプル演技を壇上で実施しました。
・このあとのグループワークで挙げてほしい反論を例示する
・このあとのグループワークでぶっちゃけてもらうための心理的ハードルを下げる
というねらいがありました。
研修本番の1週間前に、人事チーム内で話し合って「この振返り方法でやってみよう」となりました。
ちなみに、元ネタは「6 thinking hats」です。詳細を知りたい方は検索してみてください。
「とはいえ‥」の振返りに対する反応と反省
終わったあとの社員アンケート、あるいは社員からの直接のフィードバックから判断する限り、この「とはいえ‥」の振返り方法は好評でした。
最後のコメントはなかなか印象的。
そう、建前ではなく本音を少しでも引き出すために、私たちは時間とお金をかけているのです。
一方で、この「とはいえ‥」の振返り方法に対するガイドが不十分だったという反省もあります。
一部のグループからは「何を話せばいいのかわからない」という質問を受ける場面がありました。
あまり一般的ではない振返りスタイルなので、「今、何を話すべきなのか」をちょっとしつこいくらいにガイドする必要があったのかもしれない、と感じています。
おわりに
振返りのデザイン、改めてとても大事だと感じました。
単なる社外研修講師のバイヤーにならないよう、学びやメッセージをデザインできる人事チームでありたいものです。