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「誰も私を見てくれない」それでも私はイラストレーターをやめたくない

早いもので、もう6年くらい前。当時よく流行りはじめていた、オンラインコミュニティに参加したことをきっかけに、イラストを人に見せるようになりました。そこには、イラストを愛してくれる人が、思ったよりもたくさんいました。「かわいい!」「癒される〜」「似顔絵似てる!」

そのうちに、お金を出して、イラストやグラレコを頼んでくれる人も現れました。たいていはお友だちからの依頼で、私も恐れ多いから数千円とか、お小遣い程度の金額で受け始めました。これが、イラストレーターとしての副業のはじまりです。

私の絵柄や作風について、熱く語ってくれる人も、20人に1人くらいはいました。「この丸みが、描けそうで描けない、いい味があるんだよね〜。」「今にも動き出しそうな、生き生きとした感じが好きなんだよね〜。」「グラレコわかりやすいんだけど、わかりやすいだけじゃなくて、絵としてのパワーがあるよね。」

正直あまり頑張らずに、落書きの延長という感じで自然に描いた絵です。そういうものがこんなに喜んでもらえるなんて、嬉しいに決まっています。当然、こんな欲も出てくる。「わたし、これで生きていけるかな‥?」

いやいやいやいや。ちょっと褒められたくらいで調子に乗るなよ?フリーになったところで、すぐに精神的に潰れるのが目に見えてる。あんまり夢は見ずに、お小遣い程度でも、誰かを喜ばせられたら最高じゃない。このままで、充分幸せ。

‥だったはずなのに。ひょんなことから初めての企業案件をいただいて、一般書籍の挿絵を描きました。「わかりやすくて、可愛くて、かつ、ユニークさや毒がある。この本には、あなたの絵がいい。」そんなことを言われたら、本が形になったら‥‥。「このままで充分幸せ」の向こうにある、自分の可能性を確かめたくもなるでしょう。掴みたくもなるでしょう、もっと大きな夢を。


そして、2024年、仕事をやめて独立しました。人生で一番といっていいくらい、勇気を出しました。


そして、そこから。こんな自己紹介をすることが断然増えました。「わたし、イラストレーターとして独立しました。こんな絵を描くんです。よろしくお願いします。」

「ほー、そうなんだ。」「へえ。」「なるほどねー。」

‥‥あれ?

あのね、漫画とか、グラレコも描いたりするのー。本の挿絵とか企業案件も、一応経験したことがあるの。見て見て。

「あ、ほんとだー。」

‥‥あれ?あれ?
あれれれれ?????????

おい!そこは、「わー!」「きゃー!」「かわいい!」みたいな感じだろ!!!!!経験則でいうと!!!!!


独立してからなんか、こういうことが増えた。

気のせいかもしれない。たまたまかもしれない。いや、そもそもわたしがお世辞を真に受けて独立まで至っちゃったという、滑稽なストーリーなのかもしれない。

そしてわたしのそんな戸惑いなど知ったこっちゃなく、スマホの中には、くるくると回る、華やかなタイムライン。

あー、もう!
どいつもこいつも、キラキラと活躍しやがって!!!!!!

こうなったら止まらない。赤子のおててよりもちっちゃい器のなかで、持ち前の承認欲求と隠キャ属性と、押し殺してきたはずの被害者意識と、不必要に強烈な自己愛をクッタクタになるまで煮込む。

馬鹿にされてるんだろうな。こんな絵でよくプロ名乗ってるよなとか、思われてんのかな。どうせできないって思ってんでしょ、みんな。いいですし別に???わたしひとりでもやりますし???孤独を愛してるし???別にいいですよどう思われても。え、なに、わたしじゃだめ?わたしじゃだめだったのその仕事?(うざい彼女ムーブ)

つーか、誰もわたしに興味ないか。
誰も。誰も。誰もわたしを見てくれない。
誰も。誰も。誰もわたしに興味ない。

ひとりぼっちだ。

いや、誰もそんなこと言ってないじゃん、という、Xのクソリプさながらの飛躍も甚だしい極論なのだが、わたしの承認欲求に火をつけたら最後、暴走してこうなってしまうのはいつものこと。

どうして周りのリアクションが変わったのか、それは単なる偶然や思い込みかもしれない。だけどわたしはこう解釈することにした。プロとして独立したから、わたしのフェーズが明らかに変わったから起こっている、ごく自然な現象で試練なんだ。

さらっと描いた絵がちょっとうまくて可愛いのは、アマチュアだったから。プロとして見た時に評価が変わるのは自然なことだろう。そんなことに、独立してから気づいたわたし。甘い、甘いぞお!!!

もちろん応援してくれる人もいた、好意的で熱心な感想を寄せてくれる人もいた。だから「誰も見てくれない」なんてことは現実には起きていないし、自分の解釈が極端に暴走しているだけなのは頭ではわかっているのだけど、ないものにばかり意識が向いて、正直かなりしんどかった。もっと欲しいもっと欲しい、わたしを見てよ、こんなに頑張ってるんだよ。なんで見てくれないの、反応を返してくれないの、もう嫌だ。みんな嫌いだ。

じゃあ、イラストレーター、やめる?そんなにいうなら、やめちゃいなさいよ。(ヒステリックお母さんムーブ)

やめないよ!!!!!ちょっとリアクションが薄いからって、それが何だよ!!!!!
その程度の気持ちで脱サラしてねーんだよ!!!!!!!!!!!


‥何度も考えたけど、こういう結論にしかならなかった。こういう結論にしかならないことが、わたしにとっての唯一の真実だと思った。

弱い自分を鼓舞するように、また強気な発言で虚勢を張ってしまったけれど。見てるよ、応援しているよ、っていう人は、その気持ち、こっそり教えてくださいな。虚勢を少しずつでも、健やかな自信に変えていきたいから。

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グラレコとまんがも描けるイラストレーター やまぎしあゆみ
ほっこり、安心、ワクワクドキドキするイラストを届けていきます!また読んでいただけたらうれしいです!