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見た目とは裏腹

昔、けっこうな都会で働いていたことがありました。
普段の日でも人通りが多くて、人の隙間をぬって忍のようにササササと通勤していました。

ある日、わたしは職場の先輩と一緒に帰ってたんですね。
その日は近くの百貨店やら何やらいろんなところで、一斉にスーパースペシャルセールをやっていて、普段の2倍以上の人の量。
うわー、これは駅まで行くのにチビチビ歩くしかないなーってわたしが思った時、先輩が言います。

「あゆみちゃん、わたしの後ろについてきて」

先輩は妊婦さんで、安定期過ぎたから気分転換も兼ねてって言いながらおっきいお腹で働いていたのです。
「あのね、こういう時にこのおっきいお腹が役に立つから。妊婦さんだと思ったらみんな道をあけてくれるのよ。さぁ蹴散らして行くよ!!」
そして先輩の目論み通り、人が道をどんどん開けてくれて、何のストレスもなく最寄駅にたどり着くことができました。
まるで海を割ったモーゼのよう。ま、眩しいです・・・先輩。

その先輩は、双子を出産してからの3人目だったので、肝が据わっていたという理由もあると思います。
でも守るべきものを武器にするというその発想。譲ってくれたみんな優しいなっていう感動。
蹴散らしていく先輩の後ろ姿も、当たり前のように譲ってくれた皆様の優しさも、脳裏に焼き付いております。

わたしはどこの職場に行っても、真面目というイメージにされるのです。
「あゆみさんは真面目だね」「しっかりしてるね」「仕事できるね」「いると安心するよ」
本当はそうじゃない。
真面目でもないししっかりもしてないし仕事もできないしわたしは不安です。
わたしの行動を見てそう言ってくれるということよりも、顔つきとかまとう雰囲気とかオーラ的な、そういうところが変に目立っているっぽいのです。

仕事の面接開始5秒で「真面目そうだね」と言われることもあります。
5秒で何が判断できるのかい?あれかい?人物を一瞬でスキャンできるパーツでも埋め込んでるのかい?・・・そうだったら面接官は天職ですね。

鼻と口にピアスが開いていても、髪型がブレイズでも、同じこと言われていました。
顔に穴開いてんだよ?髪の毛全部編んでるんだよ?!どこが真面目じゃい。

実際は全然違うのに、逆のイメージで塗り固められていく怖さ。
ミスをすると「めずらしいー!」って驚かれるそのプレッシャー。
なので「あゆみさんって意外と適当だよね」の言葉のありがたさ。
まぁ「意外と」が必ずつくのですが。意外じゃないよ前からそうだよ。

そして同時に思うこと。
「真面目」「しっかり」「仕事する」「安心する」
それを誉め言葉にしてわたしにやらせるんじゃなく、自分でやったらどうですか?ってことです。
でも褒められるともちろん嫌な気持ちにはならないし、素直にありがとうって思います。

わたしお得意の、真逆の思考の同時進行。このいろんなことへの同時進行で、何度つぶされたことか。

外面がいいだけなのです。本当の自分は・・・その自分もよく分からないんだけど。
だから仕事の中で、怒られた記憶は片手で数えるくらい。
これも、怒られない人雰囲気を出してるのだと思います。

「不真面目さ」「適当さ」「よくミスる」「いるとハラハラする」
それ全部下さい。丸ごと。
見た目とは裏腹なんです。

あの時の大きいお腹で蹴散らして行く先輩みたいに、「真面目と思われがちなところ」を逆に武器にできたら良かったのかな。
真面目と思われている=何やっても正当化されて、ミスしても怒られない超ラッキー。
思考の転換。そうやってくれば良かった。

・・・って過去形になってしまった。

そういえばその先輩と、双子のお子さんで食事をしたことがあります。
双子っちは好奇心旺盛みたいで、知らない人(わたし)がいたのでテンション爆あがり。
そしたら先輩が、
「うるさいなぁ!周りの人の迷惑になるからポケモンでもやってて!」
ってDSを渡して見事に静かにさせてました。
傍目から見たら、食事に来てるのに子供達はゲームで最近の親は・・・なんて思われてるかもしれないですね。

だからね、見た目とは裏腹なんです。