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If you いつかまた君と①
【Jungkook Side】
夢か。。。
久しぶりにあの夢を見た。明け方の雨の音のせいか、、、
もう一度目を閉じると記憶が蘇ってくる。
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あれは、僕が二十歳すぎた頃くらいだったかな。
あの日はソウルで大きなイベントがある日か何かで、道路が大渋滞だからテレビ局まで地下鉄で向かっていたんだ。まとまって動くと目立つから、僕はユンギヒョンとスタッフの小さなグループだった。
蒸し暑い梅雨の夕方、地下鉄の改札からテレビ局に向かう地下道は人が多かった。キャップにマスク、Tシャツにリュック姿の僕が、ジョングクだと気づく人はいない。地下鉄から一緒に降りてきた、生放送の観覧に向かうアミたちが友達と楽しそうに歩いてる。嬉しいな、ライブのスローガンタオルを首にかけてくれている。
「こっちだぞ。あまり見てるとバレるぞ(笑)」
ユンギヒョンに声を掛けられて、ハッとした。
テレビ局の入口に近い出口から、階段を昇るんだった。
小走りで追いつこうとした、僕の大きな黒いリュックが何かとぶつかった。
「あっ・・・」
という小さな声と同時に、床にアイスクリームのチラシが飛び散った。アイスクリーム屋さんのTシャツの女の子がうずくまっていた。
ごめんなさい、大丈夫? 僕は倒れた女の子に手を差し出した。
「すみません、すみません。」
女の子は僕を見上げもせず、床のチラシを拾い出した。
どうしよう、僕も急いでいるけれど放って行くわけにはいかない。
「ヒョン!」
ユンギヒョンの背中に呼びかけると、先に階段を登っていたユンギヒョンとマネージャーヒョンが、驚いて振り向いた。マネージャーヒョンが階段を駆け降りてくる。
「僕のリュックが彼女にあたってしまって、転ばせちゃって。チラシが…」
そう言うと、すぐに状況を理解してくれて、
「立てますか?」 マネージャーヒョンがそう彼女に聴く。
え? 驚いて彼女を見ると、左膝が痛々しく擦りむけて血が出ていた。
「先に行って。時間が! 俺が彼女を助ける。」
マネージャーヒョンが促す。
僕はとっさに首に掛けていたタオルを彼女の膝にあてて、
「ごめんなさい、後で必ず。必ず、謝らせてください。」
僕は頭を下げて、心配そうに階段の上から見守っているユンギヒョンまで駆け上がった。
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収録が終わると、「ジョングク、みんなで会いに行こう。」
ナムジュニヒョンが声を掛けてくれた。
あの後、マネージャーヒョンがテレビ局の医務室に彼女を連れてきて応急処置してもらったこと、アルバイト先のアイスクリーム屋さんには、謝罪の連絡をして、彼女が今日のバイトをこのまま休ませてもらえるよう許可をとってくださったとのこと。
応急処置の後、傷の状態が落ち着くまで、せめてものお詫びに生放送の観覧を誘ったけど、遠慮されたんだって。
代わりに個室で生放送をモニターで観てもらったんだと。
こんな時間まで・・・お腹空いていないかな? 僕は心配だった。
部屋の前につくと、マネージャーヒョンが待っていてくれた。
いろいろすみませんでした、彼女の怪我は? そう尋ねると
とりあえず派手に擦りむいたけれど、捻挫とかはしていなそうだ。
まぁ治るまで、しばらくは時間かかるだろうな。
僕は申し訳ない気持でいっぱいで、ぐっと唇を噛んだ。
「急に7人一緒に入ったら驚かせちゃうから、お前がまず謝って来な。」
ことの次弟を知っているユンギヒョンから促されて、扉をノックした。
「はい。」 小さな声が中から聴こえた。
扉をそっと開けると、僕を、ジョングクを観た彼女は驚きで固まっていた。
さっきまでテレビに出ていた衣装だから、ずいぶん派手な格好だ。
「あの、本当に迷惑を掛けてしまって、本当にすみません。」
そう言いながら立ち上がろうとした彼女は、左足の痛みに顔を歪めた。
「立ち上がらないで。謝るのは僕です。本当にごめんなさい。」
彼女をそっと座らせると、ようやく慌ててぶつかってしまったお詫びをすることができた。彼女は首をゆっくり左右に振って
「わたしがあんなところにいたせいで、すみません。
まさかジョングクさんに・・・生放送前に心配かけてごめんなさい。
スタッフの皆さんがとても親切にしてくださって、なんてお礼を言っていいか・・・お夕飯までいただいて、ごちそうさまでした。」
ケータリングの夕飯のトレーが奥においてあった。
良かった、すごく美味しくて僕も大好きなチキンのお店のだ。
「あの・・・ステージ、すごくカッコよかったです。」
顔を赤くしながら、そう言う彼女。観てくれたんだ。すごくかわいいな。
「ご飯、美味しかった?」 そうきくと、こくんと頷く。
「グクや~・・・」 背中から声がした。
振り向くと、入り口からヒョンたち6人の顔が覗いてる。
僕がヒョンたちに笑顔をおくると、失礼しま~す、と言いながらドヤドヤとヒョンたちが部屋に入ってきた。
彼女は面食らって、7人そろった防弾少年団に目がテンになっていた。
ヒョンたちは次々と、うちのマンネがすみません、ごめんね、足痛そうだね、僕らのステージどうだった? と矢継ぎ早に話しかけている。
顔を真赤にした彼女は、ほぼ「はい」しか発言できていない。。
「もうそのくらいにしてあげて。遅いから、彼女を送らなくちゃ。」
そう言って、スタッフヌナが入ってきた。
嫌じゃなかったら一緒に写真撮りましょう、後からサインして送るというナムジュニヒョンの申し出に、また恐縮している彼女。
アイスクリーム屋さんのTシャツの彼女と僕らで写真を撮って、僕らは別れた。傷が開いたらいけないので、今日は歩かないようにと車いす乗せられた彼女は、恥ずかしそうに座って何度も頭を下げた。
「いい子だな。」 ユンギヒョンが、僕の隣で呟いた。
バイト先にマネージャーヒョンが電話すると言ったとき、バイトをクビにならないか心配していたそうだ。苦学生みたいで、何度もバイトに戻ると言っていたらしい。
今日のバイト代も、床にばらまいてダメにしたチラシも、アイスクリーム屋さんに会社から弁償するから、傷が開かないようここで暫く休むようにと説得したんだって。
髪の毛を一つにしばってお化粧も殆どしていなかった彼女。
年下かな、高校生かなと思ったけど、僕と同じ年らしい。苦学生か。。
あんな蒸し暑い地下鉄の通路で、何時間チラシを配っていたんだろう。
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ベッドの中で、夢の記憶と本当の記憶が行き来している。
彼女の左膝の傷、もうすっかり治っただろうか。。
あの時8人で撮った写真、どこにあるかな・・
明け方に、時々あの時の夢を見るんだ、、、
一年ぶりくらいかな、
最後に僕をみた、涙をいっぱい溜めた彼女の悲しい瞳が忘れられない。
恥ずかしそうに優しく笑う彼女の瞳と、目と目が合う日がきたら
悲しい瞳のを夢に見なくなるのかな。
【続く】
※写真Twitterから拝借いたしました