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「上司」として「部下」へのコミュニケーション、「もう一歩!の言葉」とは?

この時期になってやっと少し涼しくなってまいりました。気温変化の激しい季節です。皆さまもお身体には十分お気をつけてください。

さて最近は秋の人事評価や昇進昇格の時期という事もあり新任管理職研修を実施する企業様からのご依頼や、部下育成に関する研修ニーズも増えております。その中でも、部下をどう育成するか、どうサポートすれば成長を加速させることができるか、そんな上司としてのスキル向上を経営層から求められる方も増えてくるのではないでしょうか。
そこで育成で必要になってくるのが、部下とのコミュニケーションです。

人事過去エントリでも何度かお伝えしております、職場でのコミュニケーション術ですが、 「上司」として部下にどのように接しておりますでしょうか。
今回は、ホントにちょっとしたコツで、コミュニケーションの質がぐっと上がる、「もう一歩!の言葉」の話をさせていただきたいと思います。



コミュニケーション手法

過去エントリでもお伝えしておりますが、まず第一に、コミュニケーションは「相手」によって変えていく必要があります。

「部下」としてどう接する!?上司タイプで使い分ける!コミュニケーション術」
内でお伝えしている「ソーシャルスタイル理論」は、相手のタイプをみきわめ、自分自身のタイプを把握してコミュニケーションをしていきましょう、というものです。私自身も前職でこの研修を20代半ばで受けてから、実践的かつ、すぐに取り入れることができる手法なので、相手に合わせてどうコミュニケーションをとるのが良いのかという観点で、これまで活用してきました。

また、実際にチームをもってマネジメント職を任されるようになってから、部下や後輩への指導方法として、
「マネジメントスキルをインプット!管理職デビューの前に」
に書かせて頂いておりますが、管理職として部下にどう指導していくのか、部下のステージによって接し方、指導方法を変えていく必要性をお伝えしております。もしよろしければ、ご一読いただければ幸いです。


「手法」はもちろん大切!だけど…

これら過去にご紹介させていただいたコミュニケーション術は、いわゆる「手法」、テクニックです。いろんな方が活用する中で、その有効性は確立しておりますし、きちんと身につければ大きな効果を発揮します。

しかし、これらテクニックは、あくまでも「身につけて、使う」勝負服のようなもの。 その人本来の性格や思考を変えるものではありません。 24時間、ずっと勝負服を身に付け続けることは難しい、というのはご想像できるかと思います。

現に「こう振る舞うべき」がわかっていても、日々の業務に追われ、ついおざなりになってしまい、意識せずにポン、と不用意な言葉を使ってしまう…恐らくどんな方にでもある話ではないでしょうか。

「手法」を身につけることはもちろん大切ですし、有効です。
しかし、それだけで万能!というわけではないこともまた、事実なのです。


コミュニケーションで大切なもの

「コミュニケーション」と聞いて、まずは何が思い浮かぶでしょう。
相手に合わせて「上手く伝えること」が良いコミュニケーションだと考える方も多いのではないでしょうか。
しかし、コミュニケーションで大切なのは、実は「聴く(≠聞く)こと」
相手の考えや言い分をしっかりと聴かずして、適切な返事はできないからです。よく考えれば当たり前の話ですよね。

ですから、よき上司のコミュニケーションとは、部下の言い分を聴くこと
と、まずは心得ておきたいところです。
そして、これも意外と知らない方が多いのですが、「シチュエーション」、つまりはどんな「場」で、どのような話をするのか、これも非常に大切です。 「場」によって話す内容も、結論も、問題も変わっていきます。
これもよく考えれば当たり前な話なのですが、意外と配慮されていない場合が多いかもしれません。

つまり、何も自分が雄弁であることが「コミュニケーション」ではない、ということですね。


「どうなって欲しい」のか、がゴール

上司として部下とコミュニケーションを取る際、その会話には必ず「目的」があるはずです。例えば、仕事の進捗を確認したい、進め方に問題があるから改めてもらいたい、などです。
つまりは、ある特定の目的、ゴールがあるということ。
そのゴールに向けた道筋こそが「コミュニケーション」となります。

しかし、どんなコミュニケーションにも当てはまりますが、ゴールに至る「道筋」は様々、同じゴールにたどり着いたとしても、道程で部下の信頼を失ったり、不快な思いをさせたりなどは避けなければいけません。今後の信頼関係にも響いてきます。 悪路を避け、爽やかな汗をかき、共に手を取りゴールできるようなコースを選べるかどうか、これが「上司としての良きコミュニケーション」なのではないかな、と思います。


「気分」の危うさ

「ゴール」が明確で、それに向けてコミュニケーションを始める際に、まずは何と話しかけるでしょうか。
ここで気をつけていただきたいのが、人は「気分」で言葉を選んでしまいがち、ということ。 実際に私もお恥ずかしながら、そんな経験が多々あります。ビジネスシーン以外でも、子供たちへの声かけなど、気を付けていてもついその瞬間の感情を乗せた言葉選びをしてしまうのです。

たとえ話をしましょう。 いつまでも資料を出さない部下がいるとします。このシチュエーションでのゴールは「資料を早く提出させる」になります。 声かけの文言にはどのようなものがあるでしょうか。

「例の資料どうなった?」
「例の資料、いつまでかかるのかな?」
「例の資料作成、わからない所はない?」

これらはすべて「資料を早く提出させる」ゴールへ至る第一歩ですが、その言葉を受け取る部下の捉え方は様々です。 「資料作成にいつまでかかっているんだ、全く困ったものだ」と思っていると、つい部下を問いつめるような言葉を選びがちになるのです。

「気分」で言葉を選んでないかな?と立ち止まって考えることができれば、コミュニケーションの質はぐっと上がってきます。


「聴く」ことの大切さ

では、上記のたとえ話において、部下とのコミュニケーション、上司からの声かけで、部下にはどのような感情が起こるでしょうか。

「あの資料どうなった?」
・しまった、早く出さなきゃ怒られちゃう・今出そうと思ってたのに…
「例の資料、いつまでかかるのかな?」
・怒らせちゃったな・他の業務が忙しかったのに無理だよ
「例の資料作成、わからない所はない?」
・ちょうど悩んでるところがあるから相談しよう・遠回しに催促されてるな

これは架空の話ですが、それでもちょっと考えるだけでも、たくさんの種類の「感情」が生まれてきそうですね。
そして、部下には部下なりの事情があることも想像できるのではないでしょうか。 「優先すべき業務があったので後回しになっていた」「自分には難しい箇所があって悩んでいた」「今まさに提出しようとタイミングを図っていた」など、 単に「資料提出が遅い」でも、本人なりの理由が必ずあるはずです。


部下の「本当のところ」って?

上司が問題と感じている事柄も、部下には部下なりの事情があり、今の状況になっている。しかし、上司はその問題の本質を理解していないというのは往々にしてあることです。
もちろん、そんなことは知らなくてもいい、と考える方もいらっしゃるかもしれませんし、実際の業務に影響が無いことがほとんどかもしれません。 しかし、その場の業務は問題なくこなせたとして、それで「よいコミュニケーション」ができたかと言えば、それは違ってきます。

「この資料を作成しておいて」
「わかりました」

この会話の中で、部下はどのように考えているでしょうか。

・この業務の目的を理解しているか
・自分の職責を理解しているか
・上司命令だから機械的に引き受けたのか、etc

同じ「わかりました」の中にも、いろんな「わかりました」がある、ということです。


部下の「仕事の質」を理解しよう

これらの「部下の思うところ」を考えてみると、その内容には「質」の違いがあることがおわかりになるかと思います。

「この資料は例のプロジェクトに必要なんだな」
「今、引き受けてる仕事が大変なのに雑用を押し付けてきたな」
「業務命令、期日までにやります、了解」

これはたとえ話なので当然と言えば当然ですが、仕事の「本当の目的」を理解しているのは誰かは一目瞭然です。

期日内に、同じように資料を提出した部下でも、その「仕事の質」「成長の度合い」は違います。しかし、それは上司には見えていません
「資料作成、これが例のプロジェクトのものなのは当然わかるだろう」と思い込んでいるなど、説明の必要すら思い浮かばないからです。
もしくは先述のように、資料さえ出てくれば、詳細までは知らなくてもいいと考えているかもしれません。


「あと一歩!の言葉」コミュニケーションを!

上司「資料を作成しておいて」
部下「わかりました」
上司「これ、何に使うかわかる?」

実はこの、ちょっとした質問がつくだけで、部下が仕事の本質を理解しているかどうかがわかります。 そして、本質を理解していないのであれば教えることができます。つまり、部下は成長するのです。

この「あと一歩!の言葉」のコミュニケーションをぜひ、取り入れていただきたいと思っています。

「部下」にとってもこの「あと一歩!の言葉」は、部下の気持ちを聞く際にとても有効です。コミュニケーションの本質は、聴くことでしたね。
「資料作成で何かわからないことはある?」
この一言があるだけで部下が今の気持ちを言いやすくなります。

皆様もよくご存知かと思いますが、部下の気持ちを聴くというのは、時に煩雑で面倒なことと感じるかもしれません。
「資料ができていないね?何か理由が?どこが難しかった?」
いきなり叱るなどせず、気持ちを聴き出すことでコミュニケーションが生まれます。 ここから部下の部下なりの、言い訳にもなっていない理由などが出てくるかもしれません(笑)
しかし、それを上司に訴える、部下なりの理由があります。聴いてもらえるだけで、部下の気が済む場合も多いはずです。頑張って聴きましょう。

そうすることで、コミュニケーションの中で、部下の仕事の「質」が見えてきます。育成へのフィードバックが可能となるのです。


コミュニケーションの質を上げる小さな工夫

今回は上司としてのコミュニケーション、ちょっとしたコツのようなものをお伝えしました。

テクニックと言えばそうなのですが、そんな大げさなものではなく、相手への配慮を忘れずに、ということです。そして、それは頭ではわかっていても、つい忘れてしまいがちです。だからこそ、日々意識するために 「気分で話をしない」 「もう一歩の言葉を話そう、聴こう」 と書いた張り紙を出勤時に見る、とか、そんなことで「忘れない心がけ」をして頂くのが良いのではないでしょうか。

自分自身の自戒の念もこめて、お伝えしておりますが、
理屈でわかっていてもつい忘れてしまう、それが人間です(笑)

しまった、部下の気持ちを聴けてないなと思ったら、会話の最後に 「言いたいこと無い?」と付け足すだけ!でも全然違います。
ちょっとしたコツですが、効果は私が保証します!是非、取り入れていただければ幸いです。


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