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家でも外でも発語が少なく2歳3ヶ月から療育へ。継続するなかで今、思うこと

「子どもがなかなか言葉を発しない」
「何かを話しているけれど聞き取りにくい」
「きちんと音が聞こえているのかわからない」

子育てするなかで「話す」「聞く」「食べる」に関する悩みが色濃くなったら、その専門家である言語聴覚士(Speech Therapist、ST)の出番だといえます。

しかし、子どもを支援する言語聴覚士はそれほど多くないのが現状です。そのため「探しても探しても見つからない」「見つかっても、支援を受ける枠がない」という話をよく耳にします。

そこでこの連載では、言語聴覚士の支援を受けた人々にコンタクトをとり、どうやって言語聴覚士を見つけたのか、支援を受けてお子さんがどう変化したのか、などを伺いました。療育・訓練を受けるかどうかの検討材料や、言語聴覚士とのつながりを持つヒントになれば幸いです。

今回は、お子さんが2歳3ヶ月のときに療育につながり、言語聴覚士の訓練を継続して受けているhalさんのお話です

健診での発語が少なく、2歳3ヶ月で療育につながる

——はじめに、お子さんが療育や言語聴覚士につながった経緯を教えていただけますか?

息子は現在、幼稚園の年中さんです。居住区で受けた1歳半健診で、医師からの問いかけに対して発語がなく「様子を見たほうがいいかも」と言われました。

その後の2歳健診でも「様子見」とされましたが、追加健診の対象に。その追加健診で心理士さんに面談してもらったところ「様子見でもいいけれど、療育を受けてもよいかもしれません」と、助言を受けました。それが、子どもが2歳3ヶ月のときです。

早めに何か対応できるならやっておきたいなと思って「療育を受けたいです」と申し出たら、すぐに市の療育施設につなげてくれました。

その市の施設で言語聴覚士さんに出会いましたが、それまでは「言語聴覚士」という職業を知りませんでしたね。

言語聴覚士さんには、はじめに詳しい言語検査をしてもらいました。息子は指差しなどはよくできていて、「認知は2歳6ヶ月ほど、発語は1歳8〜9ヶ月ほどに相当しますね」と言われました。

——お子さんに発語の遅れがあったことで、悩みやとまどいはありましたか?

息子が第一子で初めての子育てだったので、「うちの子が!まさか…」とショックを受けたのを覚えています。でも、一人で心配し続けているよりは、誰かとつながってお話を聞けたほうがよいかと思い、それで心理士さんの面談を受けたり、療育につながったりしようと思いました。

また、SNSを開けば皆さんの体験談がたくさん見られるので、「皆さんはどうしているんだろう?」と思って、たびたび読んでいましたね。

言語検査後にわかった「子どもの性格」の影響

——言語聴覚士からはどれくらいの頻度で支援を受けていますか。また、そのなかで印象的だった出来事も教えていただきたいです。

当時つながった市の療育施設に、最初は1ヶ月に1回、今は2〜3ヶ月に1回のペースで通っています。

言語聴覚士さんに言われたことを実践していったら、発語は思ったよりも順調に増えていきました。言語聴覚士さんには家での関わり方についても教えてもらいました。例えば、家でよくテレビをつけっぱなしにしていたのですが、「子どもは大人と比べて音の取捨選択が難しいので、なるべくテレビなどは消して、一対一で話しかけてあげたほうが聞き取りやすいですよ」と助言を受けてこまめに消すようにしたところ、少しずつ発語が出てきたことがありました。

とても印象に残っているのは、4歳で言語検査を受けたときのことです。検査の結果、5〜6歳児と同程度の言葉を知っていることがわかりました。

そのときに先生に言われたのは「この子はすごく心配性で、伝える自信がないから話したくないようですね」ということ。自信がないからお話しせず、だから余計にうまく話せないという負のスパイラルが起きていたようです。

息子は家でもあまり話さず、小さい頃は全部「あ“!」で伝えてきていました。そして、家の外に行くとさらに話さなくなるのですが、「これは性格が影響しているんだ!」と気づけたことが大きかったです。

——発語の少なさには性格も大きく影響していたのですね。現在はどのような支援を受けているのでしょうか。

現在は発語を増やすことより、発音(構音)に関する支援を受けています。滑舌が悪く、特にサ行やカ行が苦手なようで、たまに親でも聞き取れないことがあります。

言語聴覚士さんには舌のトレーニングを中心に教えてもらっていて、教えてもらったことを家でも練習するようにしています。「できる範囲でやってください」という感じなので、逆にモチベーションを保つのが難しく、トレーニングを継続するのが課題です。

なお、息子は過蓋咬合(かがいこうごう)というかみ合わせが深いタイプで、歯医者にも定期的に通っています。このかみ合わせが発音に影響している可能性もあるようです。

相性が悪いかも?関係構築を続けて今がある

——言語聴覚士の訓練を受けて、率直にどう感じましたか?

すごく良かったと思います。私自身が安心できましたし、「ここがもう少し上手になったら、もっとお話ができるようになるかも」という、発達の全体像もおぼろげながら見えるようになりました。

ネット上のさまざまな体験談は参考になりますが、息子に当てはまる部分と当てはまらない部分があるので、プロの方に見てもらえて本当に良かったと思います。

——言語聴覚士の先生を変えてみたいな、と思ったことはありますか?

ありましたね。最初は「この先生でいいのかな?」と思っていました。というのも、療育の内容が毎回ほとんど同じだったからです。

例えば、毎回「絵カード」をやっていたのですが、息子がその問題に答えられているのに、次回も次々回も同じカードが出てくるので、「息子はこれで楽しいんだろうか……?」と、疑問に思ってしまいました。同じことを繰り返すなかで、息子の発音や反応の違いなどを見てくださっていたのかな、と解釈していましたが……。

また、先生と話しているなかで「私とは相性が良くないかも…」とも思っていました。

でも、時が経つにつれてお互いのことがわかってきたのか、今は心地よく時間を過ごせるようになりました。訓練の内容に関しても、「子どもはパズルが好きなんです」とお伝えしたところ、いろいろなパズルを用意してくれるなど、対応を臨機応変に変えてくれています。こうした変化が信頼構築につながった気がします。

なお、再来年度から小学校の普通級に就学する予定です。言語療法はまだまだ継続していこうと思います。

一人でモヤモヤするくらいなら、他者に相談してみてほしい

——2〜3歳で発語が遅いと、幼稚園の面接に落ちたり「対応できない」と言われてしまうケースも見聞きします。halさんの息子さんは問題ありませんでしたか。

とても心配でしたが、結果的には3年制の幼稚園に通えています。

息子の発語が少し遅かったこともあり、他のお子さんや先生たちと触れあったほうがよいのではないかと思って、2年制ではなく3年制の幼稚園に入れたいと思っていました。

でも面接のときに「この色は何でしょう?」と、先生が見せた色の名前を答えるという課題にうまく答えられなくて……。「あか」や「あお」は言えたのですが、当時まだ「ピンク」は言えなかったので「もも」と言ったり、「むらさき色」も言えなくて「むむ」と言ったりしていました。でも結果的には入園できたので一安心でした。

もし入園を考えているのであれば、「絶対に大丈夫」とは言えませんが、チャレンジをしてもよいのかなと思います。

——最後に、子どもの発達に関して悩みや違和感を抱えているメッセージをお願いします。

もし不安に思うことがあれば、ぜひ相談してほしいなと思います。私は相談したことで安心できました。一人でモヤモヤと「大丈夫かな?」と思っているよりは、他者とつながったほうが、子どもにとっても良いのかもしれません。

言語聴覚士さんなどの専門家は数多くいらっしゃいますので、合う人もいれば合わない人もいるかもしれません。だから、合う人に出会うためにも、早くつながったほうがよいと思います。

取材・文:金指 歩(株式会社となりの編プロ)


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金指 歩(ライター・編集者)
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