虚勢と本心の割合
ポートフォリオなんて、だいたい虚勢だと思っている。
未経験からライターを始めたとき、まずはクラウドソーシングサイトに登録して、自己紹介欄に思いつく限りの虚勢を書いた。
「新卒入社した銀行で、営業職として成果を出しました」
「オールジャンル書けます」
「納期守ります」
「真剣に仕事します」
どれも「本当に、心からマジで言っている?」と聞かれるとあやしい。
だって営業成績はそんなによくなかったし、オールジャンル書けないし、納期だっていつぶっちぎるかわからないし、真剣かどうかの尺度なんてないし。
でもそうやって、そのときにできるかぎりの虚勢を張って、ついた嘘を本当にしてきたから、今まで仕事が続いたんだと思っている。
そうやって丸6年が立ち、最近になってようやく虚勢ではなくて本心から「その案件、私にやらせてください」と言えるようになった。
もちろん全部の案件ではないし、
「それ、私ならできます」(本心)
「あ、でもこの部分は少し調整させていただくかもしれません」(やべ、自信ない)
というかんじで、ところどころ虚勢が混ざるところもある。
でも、明らかに「こいつ自信ないのに虚勢張ってるよな〜」って自分で笑っちゃうようなシーンは減ってきた気がする。
この前、仲良しのライターさんと一緒に入っていたMTGで、「うん、これ私たちに任せてもらったほうが絶対にいいよな」と思えるシーンがあった。
たぶんね、単価的にもクオリティ的にも損させないし、なんならもっと高みにつれていけると思う(なんて言っていないけれど)。
また別の日、予定の都合で私の手からすり抜けそうになった案件があったけれど、「それ絶対、今の座組みでやったほうがいい。その会社の知見が蓄積できているし業界の理解も深いから」と思って、ぐいっと引き寄せた。
とはいえ「絶対」なんて本当はもちろんなくて。だってこの世にはたくさん編プロがあるし、私よりうまい書き手も編集者もたくさんいるのは事実。
でも、今そのクライアントの目の前にいるのは、まぎれもなく私。
だったら、本心からの「それ、私ができます」をぶつけて何が悪いんだろうと思えるようになった。
一方で、虚勢を張らなくなるのも違うなと思った。
虚勢は自分を引き上げてくれる。背伸びしてやっと届くような位置へ。
安全圏にいるな。もっと上を目指せ。そして幅を広げろ。
まだまだ6年だ。もっと長くがんばっている人はたくさんいる。
自営業は常に綱渡りで、仕事によっては勘やセンスが問われるような芸事に近い部分もある。不確定で不確実。
隣をみるといつも愕然とする。でもそれでいいんだと思う。
今の真剣度であと6年積み上げたら、けっこういい景色が見られるかもしれない。
もっともっとたくさん虚勢を張って、嘘をついて、自分で自分を引き上げていきたい。
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