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Kindleと書店

紙の本は重くて場所をとるから、あまり持って来られなかった。持ってきた本は、保坂和志さんの『途方に暮れて、人生論』、これ以外はすべてフランスに関係のある本で、千葉雅也さんの『現代思想入門』、明石書店の『現代フランス社会を知るための62章』、それからフランス語に関する本2冊を加えて、計5冊。『現代思想入門』以外はすべて電子書籍化されていないものだ。

そこで、これまでは「本は紙で読むもの」という保守的な考えがあって手を出してこなかった電子書籍を、今回はじめて利用することにした。使ってみるとやっぱり便利で、部屋にいるときも電子書籍で買った本を読んでしまう。せっかく持って来たというのに、紙の本にはまだ手をつけられていない。

私が利用している電子書籍サービスはKindleで、その操作性について、紙でのページ数がわからない(引用するのに不便)という以外に不満は無いのだが、「この章を読み終えるまで:5分」「本を読み終えるまで:2時間35分」と表示されているのには、ギョッとした。これは設定で非表示にできるけれど、そもそもそういう表示が用意されているということに、時間を分単位で気にすることを余儀なくされ、慌ただしさの中で焦らされて生きている人たちの存在を感じて、いたたまれない気持ちになり、人々をそうさせているものの存在に慄く。私は他の電子書籍サービスもいくつかあるなか、読みたかった本が50%ポイント還元されるというのに釣られてKindleを選んだわけだが、そういう消費行動が競争をさらに加速させて人々を焦らせる遠因になっていると思うと、後ろめたいような気になる。

フランス語の教材のなかで、電子書籍に関する話を読んだが、それによればフランスでは電子書籍もよく利用されている一方で、紙の本もよく読まれており、書店もたくさんあるという。

確かに、古書店も含めてボルドーには30店以上あるようだ。街を歩いて学校に向かう途中、日本で見たような、個人で営んでいる小さな書店がいくつもある。ここ数日は地図も見ずに毎日違う道を通るようにしているから、書店に遭遇するのはいつも突然で、書店に寄る予定がないまま家を出るために時間がなく、また、昼休みの時間なのか閉まっていることも多く、まだ店内に入ることはできていない。
ならば帰りはどうかというと、たいていの書店は19時には閉店する。授業が終わるのは18時15分だから、帰り道に寄れたとしても1店舗で、あまりゆっくり見ていられない。

昨日家の近くにある書店を紹介してもらったので、今週末にとりあえず仏仏辞書を買いに行こう。もう一冊、フランス語の本ででどうしても欲しいものがあり、注文したいができるだろうか…。

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