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与謝野晶子訳『源氏物語』 四 夕顔
『夕顔』です。
どんな物語かというと・・・。
ある日のこと。「ある日」というのは『源氏が六条に恋人を持っていたころ』である。「六条に恋人」? そんな話はまだ出てきておらん。そのうちに出てくるんだろうか。
で、その「六条の恋人」に会いに行こうとして、五条に寄った。源氏は普段二条におるので(多分)、二条から六条に行こうとして五条に寄った。そういうわけか。京都は今も一条、二条、三条、・・・と並んでいるのでわかりやすい。一千年前の平安の世から変わらぬとは、考えてみればすごいことだ。
五条には、かつて源氏の乳母をしていた「大弍の乳母」がいる。重い病気で尼になったのを見舞うためのようだ。突然に訪れたのか、門前でずいぶん待たされた。その間に『りっぱでないその辺の町』を見回していた。そこに咲いていたのが「夕顔」である。「夕顔」とは『こうした卑しい家の垣根に咲くもの』だそうだ。興味を惹かれた源氏は『一枝折ってこい』と随身にいいつける。花を手折った随身に扇を差し出すものがあった。愛らしい童女である。夕顔をこの扇にのせてゆけという。この童女が源氏の手にかかるわけではない。念のため。源氏は扇と夕顔を受け取った。
さて、乳母を見舞った後、扇を見てみると歌が書かれていた。
心あてにそれかとぞ見る白露の光添へたる夕顔の花
歌の意味は? と問われても知らぬ。
与謝野晶子は歌は訳してくれなかった。
別に訳を求めてみると
『心あてにそれかとぞ見る』というのは
『当て推量に貴方さまでしょうかと思います』
の意であるらしい。
後の文に
『自分を光源氏と見て詠んだ歌をよこされた』
とあるので「光」というのは「光源氏」をさしているのだろう。どうやって光源氏と知れたのかはわからぬが。とにかく、そんな風流に源氏は興味を覚える。乳母の家の主である惟光に「隣は誰ぞ」とたずねるが、惟光も知らない。とりあえず歌を返して六条のもとへ帰った。返した歌は
寄りてこそそれかとも見め黄昏れにほのぼの見つる花の夕顔
意味は
『もっと近寄ってどなたかとはっきり見ましょう
黄昏時にぼんやりと見えた美しい花の夕顔を』
ということだ。光源氏モード全開である。
以来、源氏は六条を行き来する度に五条を通りかかるわけで、その都度、夕顔を思い出す。そして惟光を頼って女に会うようになる。会うには会うんだが。
狩衣などを着て変装した源氏は顔なども全然見せない
顔なども全然見せない?
んんん。どんな会い方をしているんだか。
夜に来て夜に帰るようだが、暗くて顔も見えないということなんだろうか。
どんな人であるかは手の触覚からでもわかるものであるから
とあるから、何か触れあってはいるのだろうか。
ようわからん。
暗いうちに会って暗いうちに別れるというのが辛くなって、別の家で一日を過ごしましょうと女を連れて出た。
陛下はきっと今日も自分をお召しになったに違いないが、捜す人たちはどう見当をつけてどこへ行っているだろう
陛下というのは朝廷、帝、天皇陛下である。源氏にとっては父でもある。その陛下は今日もきっと自分を呼びつけているだろう、源氏を捜す人はどこをどう捜しているだろうかなどと言っている。仕事そっちのけで女と会っているんである。溺愛である。溺愛はいいのだが。
夕顔はその夜に亡くなってしまうのである。
え?
亡くなるの?
なんで?
元気にしてたじゃない。
若いのに。
これには、さしもの源氏も呆然とするより他ない。
それでもなんとか惟光を呼ぶと、このままにはしておけないわけで、惟光は自分の馬を源氏に貸すと二条の院に帰した。後は惟光が全部受ける。
二条へ帰っても出仕はせず、見舞った乳母の宅で召し使いの死に目にあって穢れているのを理由に謹慎し、そのまま臥せった。夕顔には女の子があったことを知って、源氏は引き取りたいと申し出るのだが、女の子の行方は知れないままである。
とまぁ、だいたいにおいてこういう話なんだが。
この話の合間に空蝉のことも出てくるんである。空蝉とは先だって夜這いして叶わなかった女性だ。その空蝉の旦那である伊予介が四国へ立つことになったのである。細君を伴って。ということは空蝉も四国へ行くということだ。そんなこんなで空蝉を思い出されるのであるが、その中にこんな文がある。
もう一人の女は蔵人少将と結婚したという噂を源氏は聞いた。それはおかしい、処女でない新妻を少将はどう思うだろうと、その良人に同情もされたし、またあの空蝉の継娘はどんな気持ちでいるのだろうと、それも知りたさに小君を使いにして手紙を送った。
へ?
「処女でない」?
「もう一人の女」というのは「空蝉の継娘」で、先だって「空蝉と間違えて夜這いした相手の女」よね?
処女でなくなってたん?
あらまぁ。
そら知らなんだ。
夜這いを間違うてもただでは起きないのね。
まぁ、そうでもしないと間違いを誤魔化せないということであるのかもしれないが。
それはともかく。
夕顔の娘が気になるところである。
『三 空蝉』についてはこちら。