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『死にがいを求めて生きているの』 感想

あらすじ

誰とも比べなくていい。
そう囁かれたはずの世界は
こんなにも苦しい――

「お前は、価値のある人間なの?」

朝井リョウが放つ、〝平成〟を生きる若者たちが背負った自滅と祈りの物語

植物状態のまま病院で眠る智也と、献身的に見守る雄介。
二人の間に横たわる〝歪な真実〟とは?
毎日の繰り返しに倦んだ看護士、クラスで浮かないよう立ち回る転校生、注目を浴びようともがく大学生、時代に取り残された中年ディレクター。
交わるはずのない点と点が、智也と雄介をなぞる線になるとき、 目隠しをされた〝平成〟という時代の闇が露わになる。

今を生きる人すべてが向き合わざるを得ない、自滅と祈りの物語。


感想

自分の考えや感情にもっと焦点を当てなければ
と本を閉じてまず最初にそう思った。

いつも自然と目を逸らしている自分への本音。
気づかないふりをしている自分の中になる他人への悪意。
そしてそれを他人に立ち向かうことで生きがいとして消化していること。
そしてそれは、決して生きがいではないということ。
言葉に敢えてしていなかった、されたくなかった言葉を自分は何一つ否定できなかった。

自分より周りが幸せなら、自分は不幸でもいい。
大切な人が笑うなら、自分は泣いていてもいい。
自分の生きがいがいつから、綺麗事に聞こえ始めた?
自分より他人だった焦点にいつから違和感を感じ始めた?
自分を含め、同世代は自分のことにフォーカスが当たることを怖がる傾向にあるのは、逃げ場がないからなのか?
自分で道を決めることに否定的なのは、それが叶わなかったときの代償が計り知れないからなのか?
そんな疑問がいくつも浮かんだ。
朝井リョウから突きつけられる「お前の生きがいとはなんだ?」と言う問いに結局未だに答えを見つけ出せないでいる。

なのに、どうしてこんなにも霧が晴れた気がするのか。
どうしてこんなにも希望を感じることができるのか。
結局それも自分と向き合うことでしか分からない。

自分で考えることでしか答えが出ない
という大人には鼻で笑われてしまいそうな真実を
真っ正面から教えてくれた希望の物語。

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