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映画感想#76 「フィッシュマンの涙」(2015年)

原題 돌연변이
英題 Collective Invention
監督・脚本 クォン・オグァン
出演 イ・グァンス、イ・チョニ、パク・ボヨン 他
2015年 韓国 92分



現代版「およげ!たいやきくん」?

斬新。魚男のインパクトに釣られて見たのですが、意外と社会派的なドラマでもありました。

元のタイトルは突然変異(돌연변이)
お金目的で新薬実験に参加した青年が、その副作用で頭部が魚になってしまったと。そこから、その事実を隠蔽したい製薬会社やら、その隠された事実を報道したいメディアやら、魚の恋人と名乗り出る女やら・・・。彼をめぐる社会の動きと、その後の運命というような感じです。
その過程で、貧困や就職難、差別的社会という韓国の問題も提示しています。

魚男=フィッシュマンは何の比喩なのでしょうか。
若者?貧しい人?障がい者?
現代社会が生み出した、何かしらの歪みなのか。それを誰もが扱うことができずに、ただ傍観するしかない虚しさのようなものを感じました。
主人公の魚男以外にも、彼を取材しようとする記者や女友達、弁護士の状況も描かれていて、ちょっとした群像劇風でもあります。

結局、魚男の結末としては、海に帰っていく「およげ!たいやきくん」状態なのか?それはちょっと怖いけど。

☆鑑賞日 2016年12月30日


余談~英題Collective Inventionに隠されたヒント~

韓国語の原題・英題・邦題とすべて異なる意味ですね。
特に英語のタイトルはCollective Invention。知らなかったのですが、同じタイトルのルネ・マグリットの作品があるのです。
それがこちら。日本語だと「共同発明」となるようです。

こちらのサイトに書いてある内容からですが、マーメイドの「逆バージョン」といった感じらしいです。普通、下半身が魚になっているのがマーメイドですが、上半身が魚になった女性を描いたのがこの作品。美しさや謎めいた雰囲気を排除して、しかも浜辺に打ち上げられたかのようなこの「魚人」は、呼吸ができずに息苦しいようにも見えます。
この映画は、マグリットの作品から着想を得たのかはわかりませんが、英題をCollective Inventionにしているということは、少なからずオマージュにはなっているのでしょうね。

※昨年3月にこんなニュースがあったようですが、これ誰が買うんでしょうね?(笑) 


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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