映画感想#43 「過去のない男」(2002年)
原題 Mies vailla menneisyytta
英題 The Man Without a Past
監督・脚本 アキ・カウリスマキ
出演 マルック・ペルトラ、カティ・オウティネン、アンニッキ・タハティ、ユハニ・ニエミラ 他
2002年 フィンランド 97分
記憶喪失からのリスタート
恵比寿ガーデンシネマのオープニング特集上映にて。入口の場所が分からず、ガーデンプレイス内をぐるぐるしてようやく辿り着き、滑り込みセーフで上映開始となったのをよく覚えています。
カティ・オウティネンの味のある人柄、マルック・ペルトラの男らしさ。
主人公の男が暴漢に襲われて記憶喪失になるという所から始まるのですが、その後優しいご夫婦に助けられ、新たな人生を歩んでいきます。
この男、めちゃくちゃ器用なのです。イモを植えて食糧にしているし、部屋が北欧らしいインテリアでおしゃれ。手に入れた住処はただのプレハブなのに、中入ったら素敵なアパートのよう。きっと記憶を失くす前も、自分でなんでもできる器用な人だったんだろう。
カウリスマキ映画お決まりの犬も登場。ハンニバルという名前なのですが、カルタゴ戦争(懐かしい)の名将ハンニバルなのか、人食いのハンニバル・レクター博士の方から取っているのか…。登場の仕方を見ると、もしかしたら後者かもしれません。
ドヤ顔で犬の名前を言うのがカウリスマキ映画常連のサカリ・クオスマネンなのもかわいいし、完全に名前負けしている気弱そうな犬もかわいい。
男の再スタート物語でもあり、またラブストーリーでもある本作。
救世軍(キリスト教会の慈善団体)の女性イルマの仕事終わりを待って一緒に夕飯を食べたり、キノコを採ったり。見た目とは反対に優しいのがいわゆるギャップ萌えというやつなのか。
記憶喪失になったり、銀行強盗にあったりと割としっかり大変な出来事があるけど、最後は幸せになるのがカウリスマキ映画の良いところですね。
「人生は前にしか進まない」というキャッチコピーが沁みます。
☆鑑賞日 2015年4月3日
投稿に際しての余談①〜マルック・ペルトラ、かもめ食堂にて〜
主演のマルック・ペルトラには「かもめ食堂」(2005年/荻上直子)でも会うことができます。
「かもめ食堂」を見たときに、「あれ、なんか見たことある人が出てきたな」と思い、記憶を辿ると「過去のない男」の人か!と。特徴的な顔なので覚えていました。
ものすごい独断ですが、マルック・ペルトラって日本でいうと蟹江敬三ポジションだと思っています。(蟹江敬三ポジションとは)
ちょっと雰囲気、似てません?
投稿に際しての余談②〜カンヌのグランプリとパルム・ドッグ賞〜
本作品は2002年カンヌ国際映画祭のグランプリを受賞しています。賞レースの動向で作品の良し悪しを判断したくはないけれど、この作品が賞を取れるって何だかいいですね。
この年の最高賞パルムドールは「戦場のピアニスト」(2002年/ロマン・ポランスキー)だったようで、扱う題材やスケール感からも納得の受賞でしょう。
本作は女優賞をカティ・オウティネン、パルム・ドッグ賞を犬のタハティが受賞しています。このタハティが例のハンニバルでして、カウリスマキ監督の飼い犬だそうです。
パルム・ドッグ賞を追いかけて映画鑑賞するのも楽しそうですね!
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。