ディズニーランドで配色と建築様式の観察をしてみた 【デザインの観察 #2】
こんにちは!デザイナー兼デザインオタクの北島です。
前回ディズニーシーのまちづくりに感動し、観察する記事を出しました。(まだ読んでいない方がいたら先にこちらを読んでみてください!)
この記事を案内してくれた友達に献上したところ、
「ディズニーランドも行こう!ランドの方が語りがいがある!!」
と力強い言葉をもらい、ランドにも行ってきたのでまとめます!今回も750枚写真を撮りました。
引き続きスペシャルサンクス!Dオタの友達!
前置きと、周り方
今回は反時計回りでシンデレラ城の周りをぐるりと歩くように見ていきます!もしディズニーに行き建築をみてみたい時は、このnoteを片手に右回りで歩いてみてください🚶♂️
また今回、できるだけ建築様式などについて調べた上で書いていますが、素人の書いた予測に過ぎません。そのためUIデザインを生業にしている一般人の1つの見方として見てください。
ワールドバザール
20世紀初頭アメリカの、ウォルトの愛したマーセリンの街をモチーフとして作られたメインストリート。
メインストリートはヴィクトリア様式+色々
今回のデザインの観察第二回を作るにあたって、西洋建築や西洋書体、工業史を勉強し直しました!
メインストリートの建築や装飾は、主に19世紀イギリスで生まれた、ヴィクトリア様式が使われているように見えます。ヴィクトリア様式は、鉄やガラスなど異素材を用いたデザインが特徴です。
そのほかにも半円アーチを強調したロマネスク風や、有機的な曲線を用いたアール・ヌーヴォー様式が見られたり、装飾にバロック時代の流行が見えたりしていて、アメリカらしくさまざまな建築様式をミックスしているようです。
部分的にアール・デコ様式っぽい
メインストリートを右に曲がり、トゥモローランドの方に向かうと曲線美ではなく直線的な、モダン風な建築のアールデコ様式を感じるようになります。
アールデコ様式はアール・ヌーヴォー様式の後に盛り上がった、機能美的なモダニズムを重視する直線的な形が特徴の建築様式です。時代的にはバウハウスとかのあたり。
トゥモローランドは近未来風の建物なので、間にあるここは少し時代が進んでいるのでしょうか
装飾美は草木にも
ここは園入り口のあたりですが、生えている草木も形に気を遣い装飾とする精神が感じられます。(夢の国に来たんだ!!という演出でもあるかも)
フォントも曲線に合うもので、有機的にアレンジが加わる
有機的な装飾にあうセリフ書体(セリフ書体を簡単にいうと、和文書体で言う明朝体みたいなもの)で、ところどころくるんとしたり、店名を大きく曲げたりアレンジしてますね!かわいい。
配色
アメリカらしい赤がベース色の白や青銅っぽい青と調和していて素敵です。そのほか金属感もところどころにあって、異素材ミックスを試行錯誤していたアールヌーヴォー時代らしくて素敵!!
トゥモローランド
(カリフォルニアディズニーランドが開演した時の)近未来を表現したエリア。宇宙船や車など、乗り物系の技術が未来的表現で置かれています。
造形はミッドセンチュリー時代の「スペースエイジ」が近い
近未来を全く想像のみで作っているかと思えばそうではなく、実際に1960~1970年代に宇宙開発の憧れと共に数々の家具が広がった、「スペースエイジ」の造形に近く見えます。
カリフォルニアディズニーランドは1955年オープンなので、元にしたというよりは同時期に作られた、という感じでしょうが…
実際にスペースエイジで送り出された家具たちはこちら。
1980年ごろにもう一度、「レトロフューチャー」として、スペースエイジの時代の人々が思い描いた未来を「訪れなかった未来像」として懐かしみ楽しむ潮流が訪れます。
カリフォルニアディズニーリゾートは「スペースエイジ」、「レトロフューチャー」の両方の時代を経て今に至ると思うと胸が熱いですねえ!!
街灯は数が少なかったですが、機能美的な感じ。スペースエイジはミニマリズムの時代と被るので、種類が少ないのも納得。
フォントは意外といろんな手法を試している
ではフォントもミニマリズムの時代感が強いのか?といえば一概にそうでもなく、左上のトイレのサインなどのミニマリズムを感じるものもあれば、スティッチエンカウンターやトレジャーコメットのように少し有機的な形をしているものもあります。(Dオタ友人によると、この有機的な二つは同じ時期にできたのでスティッチモチーフで似ているのでは?とのこと。確かに!)
「近未来」の解釈は現在が変わり続ける限り変わるので、その時々の「未来」を取り入れてるんでしょうか。
近未来は草木にも
草木は直線的に整えられていて、現代の管理技術と違いそうなのが良い。
細かいところで言うと、葉っぱを断面でスパッと落としてしまうのではなく刈り込みながら直線的に整えてるあたり丁寧なお仕事でお見事。
彩度の高いスカッとした配色
パーク内では珍しく、スカッとしたカラーが多く彩度も高いです。また、宇宙をモチーフにしているので青をベースとしていて、差した補色でもあるコーラルが映えてますね〜〜綺麗です
トゥーンタウン
映画「ロジャー・ラビット」に出てくる、ディズニーアニメーションのキャラクター(トゥーン)たちが住む街です。
割と衝撃だったのが、トゥーンタウンは映画が元ネタだったということです。映画内にしっかり「トゥーンタウン」という言葉が出てきますし、パーク内に小ネタも結構仕込まれているので映画を見ていくことをお勧めします!
人の腕で書いた抽象的な曲線
造形、建築どれをとっても人間の手書きで書いたような、アール・ヌーヴォーとはまた違った有機的な曲線が多いです。
随所に見られるアニメ的表現
よくタイヤがパンクしていて、「パンクしたところでお店を始めた」というようなエピソードを感じる造形であったり
ライトなどは基本のデザインを元にしていながら、ライトがキャラ化したりくねったりしていて、今にも動き出しそうなアニメの世界にいるんだ〜!という高揚感!
実はパーク内で一番「生活」を感じる
「トゥーンたちが住んでいる場所」なので、マンホールや噴水、消防署、そのほかお店がいっぱいあったりして、実は生活インフラが整っています。
フォントはスクエアっぽいスラブセリフ書体
スラブ書体は「セリフ(書体のぴょこっと出るところ)がぶ厚い」という意味で、そんな書体が随所に使われています。広告などに使われ始めて広まった書体なので可読性に優れていますし、その可読性から児童書のテキストにも使われているそうなので、アニメと合うわけですねえ〜
ザ・アニメ!な原色系の配色
原色が多く、パッキリとした色使いです。ミッキーの赤や黄色や黒が多いのかな?と思いきや、ベースになるのはその全てを映えさせる補色でありドナルドのテーマカラーでもあるスカイブルーでした。パッキリと原色を使いながらも統一感を持たせる色彩設計がさすがです。
ファンタジーランド
一番ごちゃまぜで一番わからんエリアです。おとぎ話の世界を再現したテーマランドで、シンデレラ城もここに区切られるようです。
ハニーハントやアリスのレストラン、イッツ ア スモールワールド、ホーンテッドマンション、美女と野獣のエリアなんかもここに含まれるので、全体の雰囲気を作るというよりは個々の作品の個性をどう扱い同居させるか、というところに気を遣っている印象。
ごちゃ混ぜな分、柵で個性を区切っている
柵がシンプルに多い印象を受けました。個々のアトラクションの区切りは通路と柵だけになるので、柵に個性を出してメリハリつくようにしているのかな。
余談:ホーンテッドマンションは何様式?
このファンタジーな世界観の中にホーンテッドマンションはアール・ヌーヴォー様式より前の時代のゴシック様式やチューダー様式のような建築で、ホラーな雰囲気を持ったまま存在できていて本当にすごい。
具体的な様式はわからなかったけど、候補の二つともホーンテッドマンションの舞台であるアメリカではないところから、1835年のアメリカで家を建てる時、イギリスとフランスから伝わった建築方法をミックスしたのではないか〜と予想。これは本当に妄想。
にしても1835年に建てるにしては少し古い気もするので、ホーンテッドマンションの主は中世趣味があったのかもしれない。
配色は原色的だが、建築として実在できる原色。
ディズニー的原色が使われているところはトゥーンタウンに似ていますが、こちらは少し彩度が落ち着いていたりして、「実在できる原色」という印象です。
美女と野獣エリア
本当はファンタジーランドの一部だけど、広いのとあまりに好きだったので分けました。新設されたエリアで、1740年フランスの田舎のお城と、城下町という感じです。
識字率の低さを思わせるサイン、看板
看板に絵や実物が使われていることが多く、識字できなくても店の内容がわかるようになっています。
美女と野獣の映画で、本を読むベルが変わり者として扱われていた時代感が伝わってきます。
お城はフランスのルネッサンス様式
美女と野獣の城のモデルとされているシャンボール城は、フランスのルネッサンス様式の建築で特に有名なものです。
随所に見られる植物モチーフ
最近植物を元にした模様のルーツを探るような本を読み漁っている私にとって涎ものです。街の音楽堂は扉から壁紙から階段の装飾まで、植物モチーフの模様で溢れてます。
工業化前の木工、金工技術
接木の手法が見られたり、柱に傷をつけて装飾としたり、木彫りでリスを掘ったり、まだ工業化前の職人たちがで木工を行っているあたりに温かみを感じます。
金工技術に関しても同じで叩いたようなあとや、柵も曲がっていたりしてランダム性があります。良い〜〜
素材感の強い配色
染色技術が発展していないのか、木材やアイアン、塗り壁を使った色彩が多い印象。色はあるにしても彩度を抑えた色彩で時代を感じます。
クリッターカントリー
スプラッシュマウンテンやカヌー乗り場などがある、動物たちの郷。パーク内では珍しく、キャラクターの像がたくさんあります。
動物たちの木工技術
主に木材や石材で作られてるのですが、「これ齧って作りました?」と言う感じの細かい削り跡の加工が見て取れます。同じく手作業で木工を行ってそうな美女と野獣エリアとはまた違う発展の仕方をする木工技術。
配色は自然由来の素材や配色
赤土や木材の赤茶と、草木の緑、それと少しの鉄素材が大半を占めていて、他のエリアに比べて着色しているところは見かけない。自然的で、動物の感覚で過ごしやすそうな色彩になっている。
ウエスタンランド
19世紀、開拓時代のアメリカ西部をテーマにしたエリアです。ビッグサンダーマウンテンが鉱山列車と初めて知りました。カントリーベアシアターなどもここにあります。
サインは自然素材やスラブセリフ
そのほか手書きや木の枝で看板を作ったり、開拓時代らしいラフさがあります。人間の突貫工事の味よ
西部開拓時代の特徴、地面から一段高くなったボードウォーク
当時、家やスカートを埃や泥から守るため、気候的に欠かせないものだったらしいボードウォークがあります。バリアフリー的な観点で少し動きづらくなりますが、文化的な背景を重視していれることで西部感が出ている気がします。
配色は木材を中心として、木を着色して褪せたような色彩
アドベンチャーランド北部
アドベンチャーランドの北部側はジャングルの奥地のような民族感のある地域です。ジャングルクルーズ、スティッチの魅惑のチキルームなどがあったりするエリア。
文字が少なく、動物モチーフが多い
至る所に鹿や猿などの動物モチーフの模様があります。美女と野獣エリアと同様に時代背景から識字率が低いことが予想できますが、絵やサインが豊富だった美女と野獣エリアと違い、こちらは色彩や模様が多い印象です。
配色は自然素材と、自然素材で染色できそうな褪せた色彩。
麦わらを使った素材感が多いのは、シーとランド含めても珍しいです。そのほかは明度の明るめの植物で染色したような色合いが多く、日光による褪色らしい色が南国感を出してて好き。
アドベンチャーランド南部
南部は大きく印象が変わり、都会的な印象になります。19世紀のアメリカ、ルイジアナ州のニューオーリンズがモデルだそうです。カリブの海賊などがある。
フランスやスペインの文化を感じる街並み
調べたところニューオーリンズにはフランスやスペインが植民地としていた地区が存在するため、さまざまな国の文化や建築が存在しているらしい。
よく見るとバルコニーに使われているアイアンのレースのような装飾はフランス的だし、オレンジなど強い色面の外壁はスペイン風です。
サインにもフランス語が混在
壁や煉瓦を基調とした中にロイヤルブルーがある、品を感じる配色
まとめと、取材費用のカンパのお願い
ランド、シー両方行ってみて、かつ今回は建築様式についても勉強してみました。エリアの移り変わりを文化に根ざした建築様式で表現していて、その場に流れる風さえも違う地域のように感じる空間づくりを少し解読できた気がします。今回は内装はまとめる余裕がなかったので、内装編もやってみたいなと思います!
そして今回の記事なのですが、想定以上に調べ物が楽しくなってしまい、チケット代、書籍代で20000円を超える取材費用がかかってしまいました…
しかし今後もこの調査の深さで執筆活動を継続していきたいので、もしめちゃくちゃ面白かった!今後も読みたい!と思ってくださるという方がいらっしゃれば、記事下のサポートの方で少額からでもカンパしていただけるとうれしいです!
【おまけ】ディズニーランドをより楽しむためにインプットしてよかったもの
今回インプットしてよかった参考書籍、映画を貼っておきます!
フォント編
フォントの種類を形から逆引きで探せる文献は、フォントの歴史を検索するのにとても役立ちました。
映画編
映画はいくらみても予習として最高と思いますが、特にロジャーラビットを見ることによって、トゥーンタウンを見る解像度が爆上がりしました。小ネタもたくさん含まれていて必見です!
建築編
建築は本をいくつか買ったのですが、中でもこちらの二冊がイラスト、写真が豊富で時代別にまとまっており、わかりやすかったです。