心を込めて「聴」いていますか?【「LISTEN」ケイト・マーフィ】
「なんであの人って、人の話聞かないんだろう?」
誰もが一度は感じたことがあるのではないだろうか。
私たち人間は、進化の過程で、目を閉じられるようにまぶたが発達しました。しかし耳には、まぶたに相当する構造はありません。耳は閉じません。それは、聴くという行為が、人間が生き抜くのに欠かせないからではないでしょうか。
確かに人間の耳は閉じない。
「聴くこと」は人間にとってそれほど大切だ、ということらしい。
今回読んだ本は、ケイト・マーフィ作「LISTEN 知性豊かで創造力がある人になれる」。
なんとAmazonの「環境とビジネス」本ランキング一位!(2021.11.4現在)
著者のケイト・マーフィーは、「聞く(ヒアリング)は受動的、聴く(リスニング)は能動的」と定義する。
タイトルの「LISTEN」からもわかるように、ケイトは「聞く」方ではなく、「聴く」方の重要性を述べている。
* * *
かつて一緒に学校で働いた先生は、子供にこんなことを話していた。
「「聴く」という漢字には心という文字が入っているから、相手の気持ちを想像しながら聴くってことなんだよ」
当時は「なるほど!」と思っていただけの私だったが、本作を読んでその通りだなあと改めて考え直した。
読んでいる皆さん、「私はばっちり聴けている!」と言えますか?
……私はまだまだ努力と鍛錬が必要そうです。笑
こんなことありませんか?
まるでテーブル・セッティングの一部のように携帯電話をテーブルの上に置く
これ、私はよくやってしまう。
カフェなどで自分がイスに着席するのと同時に、携帯電話もテーブルに着席。
飲食をするためにお店に来たのに、まるで携帯電話も食べるために必要な道具かのようだ。
一人だったらまだしも、友人が一緒にいてもやってしまうことが多い。
会話にも食事にも携帯電話が必要なわけではないのに……。
本書によると、イギリスのエセックス大学の調査で「テーブル上に携帯電話があるだけで、そのテーブルに座った人たちは互いに親近感を抱くことはなく、大切な話や深い話をしたいとは思わない」ということがわかったそうだ。
音が鳴ってもいないのに携帯電話があることで、会話の邪魔をされると思ってしまう。
せっかく誰かと一緒に時間を過ごせているというのに、なんだか悲しい。
とりあえずこれから携帯電話をテーブルに置くのはやめようと思った。
「聴く」ためにこれはやめよう
ケイトは相手の話を聴く中で、以下のことはやめるよう言っている。
・話をさえぎる
・今言われた言葉に対し、あいまいだったり、筋が通らない反応をする
・携帯電話や時計、部屋の他の場所など、話し手以外を見る
・落ち着きがない
自分が話しているときに、これらを相手にされたらあまりいい気はしない。
話がさえぎられたら「あれ?私の話は?」となるし、あいまいな反応だと「聞いてなかったのかよ!」と思う。
どっか見ていたりソワソワしていて落ち着きがなかったら、「もう今日は解散した方がいいかな?」と感じることだってあるかもしれない。
つまり「聴く」は、相手に全集中するということだ。
(「全集中」の使い方あってる?鬼滅の刃、見たことないのに。)
さっきの「テーブル上の携帯電話」もそうだが、誰かと一緒の場にいる目的が会話にあるなら、「聴く」を感じられない態度は改めなくてはいけない。
ケイトは常に聴き手に徹し「自分が次に何を話そうか」なんて考えるな、とも言っている。
そんなこと考えてたら間違いなく、上の空の表情が顔に出てしまうだろう。
では「優れた聴き手」になるにはどうしたらよいのか。
優れた聴き手とは?
最も優れた聴き手は、聴くことに意識を集中させ、聴くために他の感覚も動員します。脳みそをフル稼働させて入ってくる情報すべてを処理し、そこから意味を引き出します。
優れた聴き手は、「言葉以上の情報を集めている」とケイトは言っている。
たしかに、仕事終わりの旦那さんの「疲れた〜」にはいろいろある。
おそらく私も、声のトーンや大きさ、顔の表情、体のぐったり感などから総合的に旦那さんの「本日の疲れたレベル」の判断をしている。
「疲れた〜っ!!!」のように爽快さを感じることもあれば、「疲れた……」のようだと心配になることもある。
言葉以外の情報から相手の伝えたいことを引き出しているのだ。
* * *
定性調査のモデレーター、トレーナーである、ナオミ・ヘンダーソンの聴き方にはとても興味をもった。
(ちなみに「定性調査」とは数字で表せない消費者の行動や意識などの情報を得る調査のこと。反対語は、明確な数字や量を出して情報を得る「定量調査」)
ケイトが感じたナオミの聴き方の特徴はこうだ。
・落ち着きがある
・顔には関心と受容の表情が表れている
・目線は泳がず、指はそわそわしない
・体は常にリラックス
・腕や足を組まない
・次の予定がある、ここにいたくないといった素振りを見せない
・目を見開いて嬉々として話をきく
私の友人にやたらと男性からモテる女性がいるのだが、確かに全部当てはまる。
特に友人は「目を見開いて嬉々として話をきく」が最高にお上手。
こんな態度で話を聞かれたら、どんな男性もコロッといってしまうのも納得だ。
ナオミはこんなことも言っている。
私が学んだ聴くことの秘訣は、自分のことはどうでもいいということです
ついつい私も相手の話を聞きながら次の話題を考えたり、話をすり替えてしまったりすることがある。
そうではなく、とにかく相手が安心して話せるようその一瞬に自分のすべてを集中させる。
「大切に聴いてもらえている」という安心感ほど、相手にとってうれしいことはないということだ。
聴く態度は相手を尊重していることにもつながるのかもしれない。
優れた聴き手になる心構え
ケイトは「聴く力」は生まれつきではなく、鍛錬で身につくと言っている。
「聴く力」を高めるためにこんなポイントが挙げられていた。
1.好奇心をもって聴く
2.間や沈黙を大切にする
3.自分の限界を知り、無理はしない
1.好奇心をもって聴く
初対面の相手ならまだしも、家族や友人など慣れ親しんだ関係だと「好奇心」をもって聴くのは難しいことがある。
特に夫婦間などで「相手がわかってくれない!」と感じるのは、こういう理由だという。
思いやりがないからではなく、単に相手を知っていると思い込んでいる。耳を傾けないのは、相手が何を言うか自分にはもうわかっていると思うから
ケイトは「出会った日と同じ人間なんていないから、どれだけ長く関係があって、相手をよく知っているかは関係ない」と言っている。
自分だってやりたいことはコロコロ変わるし、誰だってきっと同じだ。
それなのに自分が知っている相手は変わってないと思い込んで接するなんて、なんだか変な話だ。
* * *
2.間や沈黙を大切にする
優れた聴き手はこう考えると言っている。
人の話にはたいてい、一見しただけではわからない何かがあると理解しており、理路整然とした根拠や即座の答えにそこまでこだわりません
相手の話を聞くときに「うまく言葉にならない何かを伝えようとしていてもそれを妨げてしまう」ことがあるとケイトは言っている。
私が小さいとき、父の口癖は「結論はなんだ!」だった。
父はせっかちだし、2人の姉は意見をすぐにはっきりと言う方だったから、余計に私の考え込んでしまう態度が父には理解できなかったのだと思う。
不思議なもので急かされると思考が停止してしまい、さらに私の結論には時間がかかるという悪循環……。
しかしその経験上、結論から父に話そうと自分なりに努力を続けたことが社会人でも生きた気がするからなんとも言えない。笑
* * *
3.自分の限界を知り、無理はしない
知的、精神的な元気がないから今は聞けない、というのはだめなのではなく、人間らしい。一旦会話から離れて後で戻ってくるのもいい
「聴く」ことはかなりのエネルギーを必要とする。
だからいくら「聴きたい」と思っても、自分なりの限界を知っておくことも大切だとケイトは言っている。
意識を集中して相手の話を聴くことは重要だが、自分を追い詰めてまですることはない。
きっと互いを尊重し合えることも、自分と相手との良好な関係につながる。
「聴く」ということ
「聴く」とは、相手の頭と心の中で何が起きているのかをわかろうとすること。そして「あなたを気にかけているよ」と行動で示すこと
「きくことは、耳だけでなく目の仕事でもある」とケイトは言っている。
ついつい耳だけに意識を向けがちだが、普段から私たちは耳以外も使って「聴いている」のだ。
全身を使って相手に「気にかけて聴いているよ」と伝えることがこんなに大切だとは、この本を読むまで気づかなかった。
「あんまり最近話を聴いてもらってないな」とか、「家族の話を集中して聴いてないな」とか思うことがあれば、ぜひ一度本書を読んでみてほしい。
自分が変わることで相手もなにか変わるかもしれない。
もし互いに聴き合う関係になれたら、最高だ。
ちなみに、「右利きの人は右耳の方が言葉の意味を深く、速く理解できる」そうですよ。
ぜひ、お試しあれ。
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