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「ありがとう」の伝え方

(2022.8.15編集)
緊急事態宣言下の在宅勤務があけ、出社したある日、私の席に椅子がなかった。100人いるフロアのど真ん中に立って「私の椅子知りませんか?」と聞こうとも思ったが涙が溢れそうなので、Teamsで聞いてみた。
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経緯は分っていた。

会社中を徘徊してパーテーションを整えたり、御参りしている。「この人、なんだろう」って思う管理職に私は成果を採られていた。
技術契約の教育資料、雛形を作成してシェアポイントを作成すればシェアポイント毎削除されていたし、
私が確認した契約書は、内容そのままで課長が自らの名前で担当部署に提出していた。
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彼らは理解できる範疇のことは自分で対応し、理解を超えるものや私の名前が入っている資料は、全部削除。
削除しきれず、技術者に伝えなければならないWord文書は、内容のみコピーし自分のものとして作り変える。
そして技術者から「素晴らしい」との称賛をうけ、出世していった。

全部知っていたけど、声を出せなかった。

だから、私の椅子が空席のところに置かれてしまっていたのだ。
私の成果が彼らの成果に代わり、私は誰からもいないものになったのだろう。
…………………………………
部課長に呼ばれた。「詰まっているから転職するように。」と。

「詰まっているのではなく、詰めたんじゃん。」その言葉も飲み込んだ。
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転職先はすぐ見つかった。誰もが知る有名企業の法務主任で年収も大幅アップだった。第一志望の他社を待って回答することにした。

12月24日、最終面接で休暇を取った日の朝、課長から電話が掛かってきた。
「役員が呼んでいるから出社して」とのことだった。
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形勢は突然逆転する。
業績考課で書いた私の仕事が役員の目に止まっていた。

役員は、
「あなたの作ったシェアポイントみた、良かったよ!これはいい仕事だ。
あいつらになんで消したのか聞いたら、もっと時間をかけるだのゴチャゴチャ言っていた。
もう二度と貴女に関わるなとしっかり言っておいたよ。
でも、これだけは分かって欲しい。
あんな奴らでも、組織には必要なんだ。
これからは、俺と二人で仕事しよう」
と仰って下さったのだ。


その瞬間、何が起こったのか分からなかった。ただかけがえのない世界一の技術を次世代に残すための「契約」が管理システムの導入、シェアポイントでの社内共有によって残せることになった。

椅子が戻ってきた。
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内定をお断りし現職に残った。
それが良いかは分からない。
ただあらゆる人の気持ちがわかる。

私を詰めた人の気持ちも、
役員の思いも。

組織は難しいのだ。上司の真似ばかりし媚びていては会社は成長しないし、持続しない。イノベーションが必要。
しかし、部下には目立たないで欲しい。自分の能力を超える成果は、視界に入らないから消してしまう。
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顰蹙は大きく、いつまたどうなるか分からない。
しかし、彼らの顰蹙や自分の心の痛みともどっかで手を打ちたいと思う。
それが私を救ってくれた役員への「ありがとう」伝え方だと思うから。

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