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最近読んだ本 感想

「後宮小説」 酒見賢一著

まだ幼稚園か小学校低学年くらいの頃に「雲のように風のように」のビデオを気に入ってよく見ていました。「三食昼寝付き」という言葉はこのアニメで覚えた気がする。キッキョウ先生の体操の授業のところが可笑しくてケラケラ笑いながら「オイッチニーサンシー」って真似してたりね。
中高生の頃だったかな、たまたまそのビデオを見つけてうわー懐かしーと思って見直してみたんですよね。そしたら小さい頃にはまったくわかっていなかったあれこれがわかって、銀河が言ってた「子供じゃない」ってそういう意味だったんかー!と衝撃をうけた覚えがあります。
あと、コリューンのあのシュッとした顔立ちは今も大好きなタイプでして…もしかすると私の初恋泥棒はコリューンだった…?

先日酒見賢一さんがお亡くなりになったニュースを知ったときに、アニメ大好きだったけどそういえば原作は読んだことなかったな、と思い図書館で借りてきました。
そして今、こういう話だったんかー!と衝撃を受けております。
おおまかなストーリーは同じだけど、アニメだと諸々だいぶマイルドに表現されていたのですね(そりゃそーだ)

原作ではタミューンがやばめの弟ガチ恋、というのは前にちらっと聞いていたのでそこまでの驚きはなかったのですが、一番衝撃うけたのは

混沌兄、ちょっと見たことないタイプのやべー奴じゃん…

アニメだと、学のあるタイプの侠客、イリューダと対照的に思慮深いイメージ…だったので、読んだ時ほんとに何だこの人!?て思ってしまった。
サイコパスというのともまた違う。むしろ情は人一倍ある。でもやっていることは行き当たりばったりのやりたい放題で、銀河とコリューンがこんな結末になったのはほぼほぼこいつのせいだが!?なんだけど、何故か憎めない。ほんとつかみどころのないわけわからんおっさんでした…

銀河とコリューンの最後の逢瀬がね、切ないけれどすごく好きな場面です。アニメの「子供じゃない、子供じゃないもん」と銀河が泣きじゃくるシーンもとても好きだったけれど、小説では、いろいろ言いたいことがあったはずなのに出てきたのはたった一言「道女になりました」だったというのが、なんかもう、もう、もう…
それを聞いたコリューンの反応とか、その後のふたりのやりとりとかも含めて、可愛い〜〜切ない〜〜辛い〜〜〜と情緒めためたになってしまった。
コリューン、銀河と一緒に仲睦まじく幸せに生きていってほしかったよ。ぶっちゃけ、幻軍相手なら逃げおおせることもできた気がする。でも、彼は決してその道は選ばない。銀河も、コリューンのその覚悟を受け止めた様子だったのがまた切ない。道女になった云々よりも、逢瀬後にコリューンとの別れを覚悟して一粒涙を流していたところに、大人になったんだなと感じました。

以下のくだりは蛇足である、から始まる最後の章。息子の黒曜樹くんがどうやって乱世を平定し新しい皇帝に即位したのか…についてはいっっさい触れず、始終銀河の波乱万丈の人生について書いてあったのがすごく良かった。
新皇帝の母、としてではなく、銀河という一人の人間として後世に伝わっているのだなという気がして。
皇帝になった息子くんに「頑張んなさいよ」と一言だけかけて、さっさと去ってしまうのが彼女らしい。
あと、セシャーミンが妓楼の女将さんになっていたことに驚き。貴族の娘であることをあんなに鼻にかけていた子が…。意外だけど、なんか似合う〜
お客に銀河のことをよく話してたっていうのがいいね。銀河に会いたいって言っていたみたいだけど、あの波乱万丈自由奔放な人生を歩んでいた銀河なら、数年に一度ふらっとセシャーミンの娼館に顔出してそう。「何年経ってもあんたってちっとも老けないわね!腹立つわぁ」って言われてそう。
アニメの幻軍相手に銃をぶっ放すセシャーミンも好き。

片田舎のお転婆な女の子が後宮に上がりその国の最後の正妃となる──悲恋のシンデレラストーリーで、書き様によってはものすごいメロドラマちっくな小説になりそうなのに、そんな風に微塵も感じさせない文章なのが凄いなぁ。
一歩引いた目線から書かれているというか。でもその淡々とした文だからこそ、響くものがある気がする。
もっと早くに読んでおけばよかった。他の作品も読んでみたい。亡くなられてしまったのが本当に惜しまれる才ですね。

文庫のあとがきにあるアニメへのコメントを読んで笑ってしまった。
「王斉美をだせ」私も言いたい笑


「自由研究には向かない殺人」 ホリー・ジャクソン著 服部京子 訳

イギリスのわりと最近のミステリー小説です。去年のイギリス旅行のときに読みたいなと思っていたのですが、図書館の予約の順番が間に合わず断念した本でした。
この前借りることができたのでさっそく読んでみた。結構分厚い文庫でこれ期限までに読み終えられるかなーと不安になりましたが、続きが気になって読み耽っていたら3日くらいで読んでしまった。高校生の女の子の視点で書かれているので、文章も重たくなくさくさく読みやすい。
以下ネタバレありの感想です。



ピッパとラヴィのバディ感がたまらない〜〜!
ラヴィが本当いい奴すぎてさぁ!非白人であること、そして過去の事件が彼の10代に大きく暗い影を落としていたはずなのに、どうしてこんな優しさと正義を失わずにいられたのだろう。もちろん、彼のその面を引き出したのはピッパの揺るがない信念なのだと思うけど。
ピッパが危ない目に合いそうな場面は必ず矢面に立とうとするの、ほんと紳士…イケメン…。
ピッパが捜査を止めると言い出したときに、一晩考えてその原因をわかってくれたところとかさ、なんかもうソウルメイトやん…好き…。
嗚呼バーニー、バーニィィィ(涙)犬はだめ、犬は死んじゃあかんのよ…うぅぅ。
続編があるようだけど、ラヴィはまた出てきてくれるのだろうか。お兄さんの事件はもう解決してしまったけど。でも出てくるよね???またピッパとバディ組んで捜査していくんだよね???私はとにかくそんな二人の姿がまた見たい!!!

ここからは読み終えてからふと考えだしてしまったアンディーのこと。
私、てっきりアンディーは生きててサルを殺した真犯人は彼女だ!と思い込んで読んでいたんですよ。なので最後の真相を知って、やっぱりアンディーは死んでいたのか…暗い水の中にずっと…とやや呆然としてしまった。
アンディーはさ、サルのことが本当に好きだったんだと思う。
いわゆる典型的な「スクールカーストトップで美人だけど、性格が悪い女の子」だったらさ、非白人の男の子を彼氏に選ばないと思うんだよね。家族がアフリカ系という理由でピッパがいじめられるような学校、地域なんだから、人種差別はそこかしこにあるはずで。それでもサルをボーイフレンドにしたのは、彼の善性、光の部分に惹かれたからなんじゃないかな。
同級生をネットいじめしたり、教師にハニトラしたり、ドラッグの売買まで…彼女には薄暗い裏の顔がたくさんあったけど、サルの前でだけは普通の可愛い女の子でいたかったんだと思う。
嘘で塗り固めていた自分の悪行が、サルに気づかれ喧嘩になった直後に先生の家に行ってる。「サルと同じ大学に行かせてよ!」と半狂乱になっていた彼女は、このままじゃサルに捨てられてしまう、という強迫観念に囚われていたのかも。
サルと別れたくないのなら、自分の悪行からすっぱり足を洗うことが最適解なはずなのに、それができないくらいスブスブに暗い場所に浸かってしまっていたんだろう。
アンディーの死は殺人ではなく不幸な事故が重なったもので、その不幸は、そもそも彼女が自分で撒いた種が原因だった。
アンディーはたくさんの嘘をついて自分を作り上げていたけれど、サルを好きな気持ちだけは本物だったと思うよ。



以上!また面白い本読んだら感想書きます!!

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