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短歌もらいました㉒

 歌人、木下龍也さん。
 図書館から「天才による凡人のための短歌教室」木下龍也という本を借りてきて読んだ。面白かったです。

角度によってイラストが見えたり題字が見えたりの不思議な装丁

 自分を天才と呼ぶ高飛車な歌人の態度かと思ったが、そうでもない。


☝ 帯にはこうある

 面白い本だった。

 私は彼の短歌が好きだったので、彼の創作の秘密がスコシ知れたが、この本の全てが面白かった。
 難しそうだが、何がどう面白かったのか語ろう。
 いつものように短歌をもらいながら。

 ナナロク社出版の歌集である。

花束を抱えて乗ってきた人のためにみんなでつくる空間

第一歌集「つむじ風、ここにあります」


 目に浮かぶような都会の風景。書いて無いが、電車の中だろう。想像できることは省略して構わないのだ。実際にあったのだろうか?素敵な光景。


家もまた家族の夢を見るだろう無人の床に降り積もる四季


 数年前、姉と母の家を、片付けた。
 不思議なことに、私はいつも、幼き日に過ごした母の家の夢を見ていた。
 それは、仏壇のある部屋に、色々な虫が巣くっていたり、不気味で気持ち悪い、何かと気になる夢だった。
 母の家を姉と片付けてから、その夢は一切見ない。
 帰って来て早くなんとかしろと、家に呼ばれていた気がする。


幽霊になりたてだからドアや壁すり抜けるときおめめ閉じちゃう


 可愛すぎる。
 こんな歌詠んでいたら女子に好かれちゃうと思い、選んだ。


君とゆく道は曲がっていてほしい安易に先が見えないように

第二歌集「きみを嫌いな奴はクズだよ」


 さっきの可愛すぎて女子に好かれそうな歌と違って、いい。
 私と行く覚悟ができている。



邦題になるとき消えたTHE のような何かがぼくの日々に足りない


 英語には在って、日本語には無いTHEの、重要なような、そうでもないような、感じ。でも、ほんの少し、何かが足りないのだ。



キスまでの途方もなさに目を閉じてあなたのはじめましてを聞いた

共著歌集「玄関の覗き穴から刺してくる光のように生まれたはずだ」


 恋愛を繰り返す程、出会い、好感を持ってキスにまで至る距離の長さに眩暈を感じるかも。
 あいよぶ魂と速攻恋人になれればいいのだけれど、そう簡単にはいかないのが恋愛。



きゃわわ( ゚Д゚)

感情の乗りものだった犬の名にいまはかなしみさえも乗らない

共著「今日は誰にも愛されたかった」


 犬のことは元々大好きだけど、その大好きなものがどうでもよくなるぐらい何があったのだろうか?

 この本の始まりに、自分の歌集から、何首か、木下氏は配置している。
 彼の歌を好きだからこの本を手に取ったが、やはり、彼の歌は好きだ、と素直に思う。



はじめに

 タネも仕掛けもある僕の短歌はぼくの胸をどうしても撃ち抜くことができない。

あなたという短歌の天才が目の前にたちはだかる日を、
ぼくに参りましたと言わせてくれる日を、
僕は待っている。


全文


ほんとうに短歌でいいのか?


 木下氏は、はじまりから3度、読者に呼びかける。

 短歌は過ぎ去った愛を、言えなかった思いを、見逃していた風景を描くのに適している。それらを、あなたがあなた自身のために、あなたに似ただれかのために、結晶化しておくには最適な詩型だ。記憶の奥にある思い出せない思い出を書くことには最適なツールなのである。

 短歌をつくる利点はそれくらいしかないと木下氏。

僕は三度あなたを引き止めた。
それでも短歌を書こうと思うのであれば次に進んでほしい。


目次


すべては歌集に書かれてある。

 という章で、合計30冊の歌集のタイトルと値段が表示されていた。
 すべて買うと、5万3517円+税
の金額。
 木下氏が歌人になるにあたって、それだけの歌集をすべて買って読んだのだろう。
 一見ふざけているように見えるけれど、とてもマジメで、本気だ。

 

まずは歌人を2人インストールせよ。

 歌集をたくさん読んで、気に入った歌人が見つかったら、2人インストールせよと、木下氏は言う。

 彼の短歌に、穂村弘さんの「短歌ください」で出会ったが、木下氏がインストールしたのは「穂村弘」と「吉川宏志」のダブルひろしだそうだ。
 すごく具体的なアドバイスが続く。
 歌人を目指す人は、是非、本を買って読むといいと思います。

 私は、今は短歌をもらいます。


詩集から顔を上げれば息継ぎのようにぼくらの生活がある

 うまい!
 クロールの息継ぎみたいに、詩集を読むことと生活を難なくドッキングさせるなんて、上手すぎる。



日々、短歌を読んだりつくったりしていれば頭のなかに短歌用の思考回路というか五七五七七の水路ができる。その水路は短歌をつくることで溝が深くなり、歌集を読みあたらしい短歌に出会うことで、無数に枝分かれしていく。そこに長く放置していた考えを流してみると自分でも驚くくらい自然に短歌となることがある。

 毎日、短歌をつくる時間、触れる時間を持て、とある。
 たまに、今日の私、短歌製造機になってる?って時があるので、やっぱりそうなんだ!と嬉しい。


夕ぐれのゼブラゾーンをビートルズみたいに歩くたったひとりで


ビートルズ「アビー・ロード」


 有名なレコードジャケットが目に浮かんだ。
 横断歩道をゼブラゾーンと表現。ビートルズの4人と僕のたったひとり。日中と夕ぐれ。対比。

 木下さんの弱点は、上手すぎることかもしれない。


鮭の死を米で包んでまたさらに海苔で包んだあれが食べたい

 ただ「おにぎりが食べたい」と言っているだけのこの短歌はおにぎりを意味的に分解することによって理解のスピードを遅くして、詩っぽく仕立てている。

 そういう技巧的な短歌だったのか。
 お握りをそう描くっていう視点が新鮮で素敵だと思っていたが、天然ではなかった。手の内を知って、残念な一首。


炎天の千手観音握手会まんなかの手に客が集まる


 note写仏部だけに、選ぶ。観音さま。
 真ん中だと千手で、日陰になっているかもしれない。



神様は君を選んで殺さない君を選んで生かしもしない


 神様ってそのとおり。いい人にも悪い人にも対等に優しい。
 自分を生かすのも殺すのも、自分次第だから、他人や神様のせいにできないところだ。



あなたのための短歌一首

一条天皇推し( ´艸`)

2017年9月からBASEというサービスを利用して短歌の販売を始めた。購入者からひとつのお題をいただいて短歌をつくり、それを便箋に書いて封筒で送る。一首6400円(2020年10月現在)お送りした短歌を作者である僕は一切公表しない。あなたのための短歌なので、どのように使って頂いてもかまわない、という簡潔なものである。

 平安時代にこの詩型は愛おしいたったひとりへむけて書くものだったのだから「あなたのための短歌一首」は原点回帰のようなものなのかもしれないと木下さんは語る。
 歌人を続けていくための安定的な収入源になっているそうだ。今後を生きていく歌人としては重要なことのひとつ、あなたもぜひ、あなたなりの方法で、短歌を販売して欲しいとあった。

あとがき


木下龍也を信じるな


 とあった( ´艸`)

 

巻末付録:短歌展で、依頼を元に作ったという短歌
やはり、上手い


いやあ、煙に巻かれたね。
気持ちよく巻かれました。

いつか手にしたい一冊です✧♡

この本を読み、自分は、木下さんと全く別な作戦で行こう!という思いが強くなりました。


作戦は立てず、心が感動したまま、思わず詠む( ´艸`)




美人の木 落とした葉まで美人です 神さま美人のひいきが凄い(百済無観音)