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えんぶりと墓獅子に参る✧♡
えんぶりは終了したが、23日、えんぶりと鮫神楽の墓獅子と南部弁の面白いトークの舞台があるというので、チケットを入手して出かけた。
「神が降りてくる・仏が降りてくる・笑いが降りてくる」
1時間ぐらいかと軽い気持ちで出かけたが、自由席の会場は、けっこう満杯でにぎわっていた。知人も行くと言っていたので会場に姿を探したが、見つからない。13時半開場なのに12時から並んでいた人たちもいたらしい。
なぬ?そんなに楽しみにしていた人がいる会なのか?
そして14時、ついに開演。
えんぶり組の準備が整うまで「南部弁の昔コを話します」と柾谷伸夫氏。
柾谷氏は「南部弁笑い話&南部昔コ一人語り」の第一人者だ。
ラジオでは聴いたことがあるけれど、目の前で本人が、客席との間をとりながらの丁々発止は、なんとも面白く、昔コに引き込まれる。
演劇の人だな、と感じる。
彼の司会で、えんぶりと墓獅子が演じられるのである。
重地えんぶり組
~演目~
1.摺り始め
2.松の舞
3.中の摺り
4.金の成る木
5.御祝い
(えんぶりが神事であることを確認させてくれる神々しい演目です)
6.恵比寿舞
7.摺り納め
えんぶりという祭りは、道端とか、たまたま行っているお店とかマーケットで舞っている姿を見られたりして、その日常感が素敵な祭りだ。
町や市役所前のかがり火の前に出かけなくても、私も自分の家の隣の幼稚園で舞を目撃することが出来た。
しかし、今回、舞台で、じっくりえんぶりの舞をみることによって、さまざまなことを考えた。まず、私は、この舞がとても好きだ。
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そして背景にいるちびっこ。彼らのカワ(・∀・)イイ!!舞もあり、あらゆる年齢で構成された舞が
踊られ、場面が変化する。面白く飽きない。そこが、えんぶりの大きな魅力であると思う。
40代の時に、ピナ・バウシュのダンスに映画で出会い、これは、踊っている場合だ!とバレエ教室の門を叩いた。その後も、マイケル・ジャクソンのダンスが好きだったり、日本舞踊をかじったりしたが、どうも自分がスキなのは、えんぶりに代表されるその土地に根付いた踊りの気がするのである。
エグザイルとかヒップホップとか、Dリーグには全く心が動かないが、
えんぶりには、簡単にノックアウトされる。
この昔からこの地域で踊られてきた民族的な踊りって、何なのだろう?
江戸時代は100組以上あったえんぶり組(町内)が、いまは33組ほどだそうだ。でも、33組も残っていて、毎年、その伝統の踊りが見れるって凄い事ではないのか。コロナ禍前に、ある美術教師と待ち合わせて市役所前で見れる大かがり火祭りを見た。昔は長者山で行われていたと思うが、今は市役所前。時間によっていろいろなえんぶり組が登場する。
それを見ると、各町内に、豊かな踊りを踊る芸達者とか、歌の上手い方とかいるのである。
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踊りてはちびっ子、小学生、中学生、高校生?、大人といろいろな年代で、やっている方々にはいろいろな苦労があるだろうけれど、そんな昔からの伝統が引き継がれて眼の前に再現されていることを、とても幸運に思う。
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そうなのだ。各町内に、芸達者がいるのである。
スノウマンとか、なにわ男子とか名前のつかない、素敵な踊り手がいるのである。
私は思った。
えんぶりの名も無い超いかした舞い手を推しにしようと。
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恵比寿様が大きな鯛を釣り上げるという楽しい舞。漁業都市八戸ならでは。
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超、チャーミングで味がある。今年もいらっしゃったのだろうか?
今年は日和ったが、どこの町内にそんな手練れがいるのか、すべてを目撃しないと気が済まないかもしれないなと、思った。
友人のマッツがえんぶりの絵を描こうかな?と言っていたので、来年は誘って、片手に日本酒、片手にカメラを持ち、絵を描くために取材すると決心する。一人でも行く。私はえんぶりの舞い手が推しなのだから。
さて、もう一つの演目。鮫神楽の墓獅子である。
えんぶりは市の祭りとして見たことはあるけれど、鮫神楽は、鮫町の墓で、お盆の時期に、お墓参りの参拝者によって請われると踊る舞だという。それって、鮫にお墓が無いと、見れないものだ。
鮫神楽連中
~演目~
1.番楽
2.組舞(歌舞伎物)鐘巻道成寺
神楽連中の若手が特訓を重ね、50年ぶりに上演。
組舞は鮫神楽だけにある歌舞伎を題材にした演目となっています。
3.墓獅子
獅子頭を媒体として、死者と生者が唄を通して心を通わせる神仏習合(混合)を今に残す貴重な演目です。毎年、8月14日、15日、鮫の墓地にて、依頼者の墓前にて舞われます。
えんぶりと違って、単調で同じ動作の繰り返しも多いが、次第に鮫神楽の面白さがわかってくる。とくに歌舞伎物。
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芝居仕立てでとても面白い。しかも説明を読むと、50年ぶり?
凄いものを見たなと思う。
そして今日のラストは墓獅子。
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この獅子頭が、歯をカチカチと鳴らしたり、伏せている姿から歌に合わせて静かに頭をもたげて立ちあがったり、また同じく地面に沈んだりする。
同じ拍子の歌で、獅子が立ちあがりまた沈むを墓の前で何度も繰り返す。
10回ぐらいだろうか。
一番初めの番楽での踊りの繰り返しは退屈したが、
この獅子頭が立ちあがって沈んでいく様を何度も見ているうちに、
なんとも不思議な気持ちになってくる。
死者が起き上がってきて、また土に還る。
そんなイメージが湧いてくる。
最後に獅子頭をかぶっていた人が布の中から姿を現した。
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獅子の中に潜んでいたのは生の眩しい若者だった。
今日は、とてもいいものを見た。
帰りは歩いているKさんを車に迎えて、家の方まで送った。
途中で、男山酒造に寄って、2月の今日、出来たばかりだという裏男山(文字がひっくりかえっている)の一升瓶を買う。Kさんは四合瓶。
今年のカレンダーも頂いた。
神様が降りてくる芸能を見たら、今日は、洋酒では、だめだと感じた。
米の酒で、神様のことを振り返らないと話にならない。是非、日本酒を飲みながら、今日の芸能を振り返りたい。
日本酒を買って帰った私に、黒帯が嬉しそうに笑った。