#4椎名町『南天』で、いつもの肉と四季を感じて食べる蕎麦(食べるふたり第7回)
シュニチさん
年度末、何かと忙しい人も多い時期だとは思いますがいかがお過ごしでしょうか。
私も忙しい日が続き、疲れたときこそ美味しいものが必要だなと強く感じています。
前回紹介していただいた俵形が3つ仲良く並ぶ『洋食の辰五郎』のプレートは、見た目も可愛らしく、この子たちと並んで私もデミグラスソースの海に溺れてみたくなりました。
そのくらい愛おしいハンバーグとカニクリームコロッケを、いつか食べてみたいと味の想像をしながら眺めてたところ、口の中が唾液でいっぱいになってしまって思わず1人で笑ってしまいました。
「料理の味や食べる方法から街の文化の歴史を垣間見て想像できる」というのも魅力的ですね。ガイドブックには載っていない、京都の楽しみ方をまた一つ教えてもらった気がします。
今回も素敵な味のご紹介ありがとうございます。
さて、こちらは3月の東京ですが暖かい日が続き、やわらかい色の花が咲きはじめ、ランニング中に春を感じることが多くなってきました。
こんな陽気の日には外で食事をすると気持ちが良いだろうなと思い、どこに行こうかと考えたときに真っ先に思い浮かんだお店があります。
それは『南天』という立ち食いそば屋さんでした。
そこで今回はこのお店を紹介したいと思います。
『南天』は池袋駅から西武池袋線の各駅停車に乗り、1駅目の椎名町駅北口の向かい側にある立ち食いそば屋さんです。
椎名町は高級住宅が多い印象があるのですが、駅前はあまり新しい建物もなく、「昔からここにある」と感じさせる建物の方が多いように感じます。
そんな建物たちに囲まれて、朝5時30分から深夜1時30分までという長時間営業し、毎日沢山のお客さんのお腹を満たしてくれるのが『南天』なのです。
店はとても狭く、店内(屋根の下)で食べることができるのは、せいぜい3人程度といったところでしょうか。
私はいつも店の外にあるプラスチックコンテナで作られたお手製のテーブルで立って蕎麦を食べます。
「ちょっとその辺で食べる」という人も多く、店の横の木製ベンチはもちろんのこと、店から少し離れて、駅前の街路樹に沿って作られたロングベンチでどんぶりを抱えながら座って食べている人も多く、同じ店の蕎麦を食べているのにみんながバラバラで自由なところが、このお店を好きな理由の1つでもあります。
私は店の前で蕎麦を啜りつつ、他のお客さんたちがどんな風に食べているのかなと、ついつい周りの様子を観察してしまいます。熱々のどんぶりをそーっと持って、どこで食べようかなとウロウロしている人たちの姿は、とても愛おしいです!
このお店は肉そばが有名なお店で、そばが見えないくらい肉が盛られているのが特徴です。
蕎麦は比較的太くやわらかめで、肉の味を邪魔しない蕎麦というのが私の印象です。
つゆはほんのり甘く、優しい薄味で、ちょっぴり懐かしい感じがします。大量の豚肉と大量の玉ねぎでつゆのベースを作っているそうで、砂糖にはないスッキリとした甘みがそこから生まれているのかと思うと、なおさらつゆを大事に味わいたいと思ってしまいます。
主張しすぎないけれども存在感のあるつゆの味は、肉と蕎麦を食べ切った後の最後のお楽しみです。レンゲをつけてもらったにも関わらず、いつのまにかレンゲを水の入ったコップの上に置き、どんぶりを持ち上げてゴクゴクゴクとつゆを一気に飲んでしまうのは私だけではないのでしょう。
食べごたえのある豚肉は、これだけの量にも関わらず肉ダブルにする人が続出するだけあって、味が濃すぎず、豚の脂の甘みも感じられます。つゆの味と肉の味が混ざっていく毎にどんどん美味しく感じられてくのも魅力です。
この日は、「肉そばの肉ダブルで麺半分!」というコールをするお客さんがいて、もはや肉吸い(肉うどんのうどん抜き)を食べてる感覚でも楽しめるという新しい食べ方を教えてもらいました。
ちなみにこの肉そば、2024年3月現在のお値段はワンコインの500円。こんなにお肉が乗ってるのにこのお値段。そして、揚げ玉かけ放題というサービスの良さ。
頑張らなくても気軽に通えるところも人気の理由なのでしょうね。
暑い日も、寒い日も、全身でその気温や風、流れる空気や匂いを感じながら食べる肉そば。同じ肉そばなのに、行くたびに持ち帰る印象が違うのもすごく良いんです。
同じ熱い蕎麦でも、冷えを和らげるために食べるのと汗をかきながら食べるのとでは、そもそも身体が必要としているものが違いますよね。
いつも変わらぬ味がベースあるからこそ、味以外に感じられることが多いのだと思います。
外で食べるといえばピクニック的なものか、ちょっと小洒落たお店を想像するかもしれませんが、外で食べる立ち蕎麦は、通えば通うほど病みつきになるかもしれません。
そんな四季を感じながら食べる肉そばの味を、皆さんにも是非味わってみてもらいたいです。
それではまた。