三半規管弱者のデジタル休暇
最近、スマホをスクロールするのがつらい。
画面を見ていると目が回り、襲ってくる吐き気に手が止まる。
昔から三半規管が弱い私にとって、この感覚は新しいものではないけれど、それでも日常生活に支障をきたすのはつらい。
思えば、子どもの頃から酔いやすい体質だった。
車で酔うのは日常茶飯事。
遊園地では乗れる乗り物がほとんどなく、ゲームをするときも慣れるまでは酔い止めを飲んでいた。
そんな私の「めまい体験」の中でも一番印象深いのは、小学生の頃のブランコでの出来事だ。
その日、いつものように風を切りながらブランコを漕いでいた。
空を飛ぶような爽快感があったはずなのに、いつの間にか意識が遠のき、次に気づいたときには背中をのけぞらせて顔を地面にこすっていた。
自分でも何が起こっていたのかわからなくて、しばらく呆然とした。
その後、慌てふためく友達に帰ると一言伝え、そのまま何事もなかったかのように家に走って帰った。
帰宅した瞬間、ジンジンとした熱を持ち出した顔の痛みと共に、何が起こったかをやっと理解する。
そして鏡に映った、自分のあごからおでこまでにつながった大きなかさぶた。
鏡を見て、渇きかけていた涙が、とめどなく溢れた。
それ以来、ブランコには乗らなくなった。
遊園地の「ブランコ型のクルクル回るアトラクション」も乗れない。
1度、もう大丈夫だろうと乗って、意識を飛ばしかけながら目をつぶって耐えた記憶がある。
なぜか、「ここはアルプス」という暗示をかけていたことを思い出すと今でも笑える。
そんな私だが、最近疲れもあって、長く付き合ってきためまいがひどくなった。
最近は、目を動かすのもつらくて、文字を読むこともつらい。
スクロールをしたり、文字を目で追うと、視界がぐるぐるして吐き気がする。電車に乗る前には、酔い止めを飲んで電車に乗った。
家では、ひたすら「パペットスンスン」の動画を見たり、ポッドキャストを聞いたり、瞑想をして過ごした。
スマホも本もゲームも触らなくなると、手持ち無沙汰の時間が増えた。
散歩に出かけたり、ただ横になって何もしない時間を楽しんだり。睡眠時間が増えたせいか、へんな夢ばかり見ていた。
自分の夢が面白すぎたが、他人の夢の話ほどつまらないものはないことを知っているので、誰にも共有できなくてつらい。
楽しみにしていた「ドラクエ3のリメイク」もまだ手をつけていない。
スマホやゲームが恋しいと思いつつ、無理をせず休むことを選んでいるのは、歳をとったせいなんだろうか。
揺れやスクロールに負けず、自分のペースで楽しむ時間を取り戻していこうと思う。
揺れるブランコが怖かった昔の私も、めまいに悩む今の私も、どちらも「揺れる世界」でなんとか自分らしく生きている。
デジタルデバイスを離れて気づいたことを改めて書き出してみました。