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「運動嫌い」からピラティスインストラクターに:体の声に耳を傾ける日々
運動が苦手で、将来の夢は翻訳家になること。小学生の卒業式でそう発表した私が、今はピラティスのインストラクターをしていることに自分でも驚いています。
子どもの頃、そして学生時代から、自分は「体を動かすことが苦手」だと思い込んでいました。
子どもの頃から、「体を動かすことが苦手」と感じていました。周りの友達より足が遅かったり、体を動かすことに興味が湧かなかったり。音楽や読書、ゲームに夢中で、体育の授業で一生懸命やってもうまくできないことのほうが多く、運動は「生まれ持った才能が大きく左右するもの」と思っていました。
小学生の頃、体育の成績が振るわなくても「体育は苦手で仕方がないね」と言われ、それが自然で当たり前だと思っていたのかもしれません。
小学生の頃は翻訳家になりたいと思っていたのですが、年齢を重ねるにつれて、大好きなゲーム「MOTHER2」を作った糸井重里さんの存在を知り、言葉やビジュアルを使って人に行動を促す広告業界に憧れを抱くようになりました。
大学を卒業し、紆余曲折を経て、コンテンツマーケティングの仕事に就くことができ、好きなことに携わっている自覚もありました。
それでも今、ピラティスインストラクターになっていることには自分でも本当に驚いています。
体に耳を傾ける新たな体験
ピラティスを始めたきっかけは、フォトウェディングを控え、少しでも綺麗な自分を残したいと思ったことでした。
当初は整体で姿勢改善をしようと考えていたのですが、マッサージでは一時的な変化にしかならないのではないかと思い、自分で体の使い方を改める方法を探してピラティスにたどり着きました。
実際にピラティスを体験して「体をどう動かすか」ということ一つひとつに意識を向けることの新鮮さに驚きました。
それまでの私は、体を「動かす」ことよりも、「どう動かしているか」にはあまり目を向けたことがなかったからです。
動きのプロセスを丁寧に観察し、エクササイズを理想の形で行うために筋肉に意識を向ける、これがピラティスの本質的な要素だと知った時、私にとって新しい世界が開けたような気持ちになりました。
学生時代、好きなことに情熱を注ぐために健康は二の次で、どこか退廃的な考えを抱えていました。
オスカー・ワイルドが大好きで、老いることを異様に恐れ、美しくいられる期間にできるだけ自分のしたいことをして40歳くらいまで生きられたらそれでいいとすら思っていました。
しかし実際、20代後半ごろから様々な体調不良に見舞われたとき、「健康でなければ、やりたいことも楽しむことができない」というシンプルな事実に気づかされたのです。
結婚してパートナーがいることも、40歳で死ぬのはさすがに申し訳ないなと思ったのも、健康に意識を向けるようになったきっかけです。
インストラクターとしての「体と心の問題解決」
ピラティスを学び、やがてインストラクターとして働くようになった今、自分は問題解決のために考え抜くことが好きなんだなと改めて気づきました。
どんな仕事でも、考えて問題解決をする過程はありますが、ピラティスを通じて、様々なバックグラウンドを持つクライアントの体を理想の状態に近づけるためにどうすればいいのか、一人ひとりの状態や癖を見極めながら解決方法を探る。これは私にとって喜びであり、大きなやりがいです。
体には、その人の人生が表れています。その人の人生に寄り添うような時間を持てるのは尊い時間です。
ときには、プログラムの後に痛みが軽減されたと感想をいただくこともあります。
自分の体の状態を意識してもらい、なぜそこが痛むのか、一緒に考えるプロセスが、私にとって本当に嬉しい瞬間です。
たとえば、肩こりや体の歪みが日常的にしているカバンの持ち方にあると気づかれたクライアントに、「私の骨盤が右に傾いているの、カバンの持ち方のせいだって気づいたの」と自分で発見してくれたとき、そんな「気づき」を提供できたことに大きな喜びを感じます。
日常生活に活かせるピラティスの魅力
現代はデジタル社会で、スマホやパソコンに向き合う時間が長くなり、体の状態に気づくことが難しくなっていると感じています。意識がどうしてもデバイスに奪われ、肩が凝っても腰が痛くても、その違和感を無視しがちです。
ピラティスを通じて、クライアントが「体の声」に気づき、自分で痛みや不調の原因を見つけ、理想的な状態を日常で保てるようになることが私の目標です。
自分で意識して、理想通り体を動かせるように、プログラム中に様々な方法で気づきを促したり、日常生活とリンクさせることができるように日々学んでいます。
たくさんの人に知って欲しいのが、体に不調がなくなれば、読書や映画、ゲームなど、自分の好きなことに没頭する時間もさらに楽しめるようになるということ。
私自身、体調不良を経験して気づいたことですが、体が健やかでないと、作品を鑑賞して受容できるものの質が全然つがうんですよね。体調がすぐれなかった時は、読書をしても楽しむことが難しかったです。
体が健やかだと、人生の楽しみは格段に増えるものです。
あの頃想像していなかった未来
かつての自分は、インストラクターとして働く未来をまったく想像していませんでした。身体的なことは自分とは無縁で、デスクに向かって何かを書く、研究する、考える、そんな道を進むのだろうと思っていたからです。
でも、ピラティスという世界を知り、その中で「体の問題解決」という自分にとって新しい喜びを見つけ、指導を通して人と関わりながら変化をサポートすることが、今では日々の大切な一部となっています。
私にとってピラティスは、「体を動かすためのもの」ではなく「体と心のつながりを見つけるためのもの」であり、人生の中でまったく予想しなかった喜びとやりがいをもたらしてくれる存在です。
今後も、体を動かす喜びや気づきの大切さを多くの人と共有し、皆さんの日常を少しでも豊かにしていけたらと心から思います。
そして、ピラティスをはじめて、自分と全く違うタイプの人に出会うことができたことも本当に嬉しいことでした。
ずっとスポーツやダンスをしてきた方、体を使うことが好きな方と接することができることも、この仕事を通じて得た大きな喜びの一つです。
今後も、体を動かす喜びや気づきの大切さを多くの人と共有し、皆さんの日常を少しでも豊かにしていけたらと思います。