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当時の日記より168@2010 11/19

体調が良いと減らず口も絶好調。いや舌好調な姫(母)。朝食に私が焼いたパンと購入したレーズンパンを並べて出し好きなほうを選ばせようとしたら

「ねぇ、なんでそんな無駄なことするの?食べきる前に別のパン買ってくるなんて。いい?これだってお金なんですからね。どうして卯月は無駄遣いばっかりするのかしら」

あ゛あ゛?!

そして

「なんだかおかずもいっぱいあるからパンはいいわ」

そうきたか。新しい手を使ってきたな。

キウイも買うなバナナも出すな、みかんもダメだと言い放ったので嫌味のようにバナナとみかんを姫の前で必死に食べていた私。すると姫に電話がかかってきた。『あらぁそうなの嬉しいわ。大好きだもの。楽しみに待ってるわね』

病院で仲良くなった患者さんのIさん。大分から転院してきたが、治療が済み大分へ戻った。農家さんだ。

「あのね、少しだけとキウイとみかんを送ったから食べてって。楽しみね」

噴き出しそうになるのを堪えて言った。

「残念だね、どっちも食べられないじゃない」

「は?何言ってるの?Iさんが作ったみかんは美味しいのよっ病院にも持っていくから卯月は食べないで!」

初めて送ってもらうのに美味しいと分かる能力...。

お昼はピザトーストを作った。昼は麺類というルールがあるが、朝パン食べてなかったからいいやと思って。というよりパンが食べられなくなったのだと思う。言わないから出す。ささやかな反撃。やはり端っこをちょいちょいと小鳥のように啄んで終了。

「私が想像していたピザトーストの味ではなかったから食べたくない」

なんで素直に「食べられなくなった」と言えないのか。そこが腹立つ。

「八百屋さん柿持ってこないの?」

もう毎日何十回柿の話だよ。

「家にあるけどっ!」

「はぁ?卯月一体何の話をしてるのよ。私は今、八百屋さんが持ってくる柿の種類は何かしらって尋ねたんじゃないの!一体何を聞いてるのよ」

言ってないけどな!

食後、2Fに避難。顔合わせたくない、腹立つ。でも姫からやってくる。よれよれになって息切らして。そして洋服パトロール開始。『あの服も無い』『その服も無くなってる』いつも見るのは同じ場所。そして大きな独り言だ。

「まぁ、綺麗に畳んでくれて嬉しいわ。だったこれ畳んだの私じゃないもの。私こんな畳み方はしない。私はまだ呆けちゃいないんでね、自分がやってないことくらい分かってるの。誰かが勝手にここを開けて畳んだのよね。誰かしら」

そうか、そうだったのか。ほかにも誰か住人がいるのだな。私、そこ開けたことないからな。妖怪か?妖怪オユワカシの仕業か?

その手を止めることのないまま

「そうだ。病院でみんなに言われるのよ。姫は全然売店に行かないんですねって」

「ふーん。誰に」

「だから看護師さんたちから言われるって今言ったじゃないのっ人の話ちゃんと聞きなさいよっ」

むかむか。

「廊下を歩いたら?って言われるなら分かる。何故売店なんだろうね。大きなお世話だね、例えば看護師の誰が言うの?」

無視。無視かよ、そうかよ。

相手に非があるという思考はアスペルガーによるものか、姫は絶対に謝らない。認知症が加わって勢いを増した上、願望を第三者からの意見だとして主張しはじめるように。もう本当に辛い、疲れる。

夕食にはヘルパーさんが春巻きを作ってくれた。

「今夜はおかずがいっぱいあるし、大好きな春巻きを食べるからご飯は入らない。だから要らない」

ついにキレた。

「あのさ朝から黙ってたけど、主食が食べられないんだよね。いつも同じこと言うけど副作用で食べられないと言うのは責めないよ。食べられないと素直に言ってくれって言ってんの。いちいちへんな言い訳つけるじゃん、それがムカつくんだよ。今は食べたくないって言えば済むことなんだよ。なんでそんな簡単なことが言えないの?」

「食べられないんじゃないもん」

絶対認めないから頭にきて普通にご飯をよそってやった。しかし「ここに茶碗は存在しない」とばかりに完璧なスルー。

食後に例の高カロリーゼリーを出した。すると今度は

「あ、それ要らない。今日はいっぱい食事食べたから、そんなもの入る余裕がないわ」

本気でぶちキレた。

「あのさ、昨日看護師さんと約束したよね。最低でも一日一つは食べるって。あれもいやこれもいや言ってないでさ、自分の命のためだと思って食べられないのかね。あーもういいや。毎日同じこと言わされる私もバカみたいだ。やってらんない。姫が食べなくても困らないし、辛いのは私じゃないからな。もう二度と姫の前に出さないから安心しなよ。どうしようかなぁ色んな味を揃えて30個も買ったのにどうしようかな。これもお金だよね。どっかに病人いないかなー分けてあげたいなー」

「そんなに買わなきゃいいことじゃない。本当に卯月は無駄遣い」

死んでも直らないだろうな、その性格。

お腹いっぱいと拒否したあと、デザートのりんごは食べました。ムカつく。

そこまで徹底的に拒否するほど不味いのかこのゼリーと思って食べてみた。すっごい美味しい、完食。

ん?ダメじゃん。ご飯を美味しく頂ける私が高カロリー摂取しちゃダメじゃん!!

看護師さんもケアマネも言ってた。エンシュアリキッドみたいなものは不味いけど保険対象。きちんと高カロリーでありながら味がバラエティに富んでいて食べやすく研究されているものは保険対象外だと。

どうしよう、この大量のゼリー。




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