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当時の日記より107@2010 5/16
この前、夫に言われた。
「俺は10年ちょっとのことだけど、卯月は物心ついた時から不条理で理不尽な言い分を並べ立てるお母さんと生きてきたわけじゃん。本当に大変なことだったと思うよ。しかも認知症が入ってエスカレートしてるしな」
『これは何色?「白です」はぁ?私には黒に見えるわよ、だから正解は黒よ。卯月も黒って言いなさいよ。言えないなら謝りなさいよ!』
簡単に言い表すとこれが姫(母)だ。私は幼少期からこんな考えの人と暮らしてきた。異常な見識にのみこまれないよう必死に自分を保ってきた。「母親に育てられた覚えはない。私は自力で生きてきた」いつもそう表現する。
こだわりの強いアスペルガーならでは。荷解きをしていて苦笑する。箸が2膳とかスプーン3種類とか。その時の気分で使い分けたいのだ。カレンダーに手帳に辞書。短期間の入院だから多少の不自由は我慢しようだなんて思わない。荷物を持ち運びするのは自分じゃないから構わない。そう思っている。
スーツケースに旅行バッグ、それだけで収まりきらずに紙袋が4つ。これが入院中の荷物。紙袋4つのうちの3つは売店で気になって買ってみたお菓子。手はつけていない、買いたいだけなのだから。これだけ買ってもまだ足りないらしい。食べないなら買うなと注意すると
「私ね、生まれて初めてよ。お財布の中身を気にしながら物を買わなきゃならないなんて」
「あらそう。人並みになって良かったわね」
嫌味が通じないアスペルガーだが、こうでも言わないと私の気がおさまらない。
昼食後コーヒーを飲んで2時間も経たないうちに
「コーヒーいれて」
「また飲むの?」
「あら、今日は飲んでないけど」
ついにきたか、この発言。姫に優しくしてあげる余裕のない私はこう返した。
「お昼食べたあと飲んだでしょ。忘れちゃったんだね」
大激怒。
「何言ってるのよっ覚えてるわよっ。何時間前に飲んだのかを忘れただけじゃないのっ。それに私は卯月がどうしてコーヒーを飲まないのかって質問しただけじゃないのっ!!」
典型的な認知症の応答パターンになってる。ただひたすら苦痛。まだ続くのかこんな生活。