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当時の日記より144@2010 9/22

ちょっと羽織るものとしつこいので、仕方なく実家までカーディガンを取りに行った。もうすぐ自宅に帰りつくという頃に姫(母)から電話。ビノレルビンが中止になったのだと言う。

姫にもっとも効果的だったのは経口薬のタルセバでした。ただ何度も書いた通り副作用がきつい。そこでタルセバは中断となったのですが、年齢的にももう強い抗がん剤の点滴は使えない。そこで姫に負担の少ない抗がん剤とタルセバを併用するという治療になっていました。医師が細かく管理して少しでも副作用がひどくなってきたらタルセバを中断する。タルセバ自体が新しい薬だったのでどの抗がん剤と併せたらよいのかは医師も手探りでした。

ビノレルビンとタルセバの副作用同士が相互関係を持ち、これまでにない強い副作用を起こしているという見解のようだ。そこまでは納得する。問題は姫の次の言葉。

「次の抗がん剤が決まったら卯月を呼んで話し合いをするって。でね、アリムタに戻る可能性もあるんだって」

「え、ちょっと待って。効果が弱くなったからアリムタは中止になったんだよ。それをまた使うって意味が分からない」

「ねぇーそうよね。私もびっくりしたわ」

「びっくりしてどうしたの?何故尋ねなかったの?」

「卯月が質問すればいいことでしょう?!なんで私が言わなきゃならないのよ」

「なんでって何?誰の治療よ。自分のことでしょう」

「あーあ、卯月に話したら絶対そう言うと思った。私ね、そうやってあなたにぎゃんぎゃん言われるのが本当にイヤなのよ。昔から本当にしつこい性格だったものね」

「人のせいにしないでよ。おかしいと思ったら何故その場で質問出来ないの?」

「卯月が私にアリムタをさせたくないなら、卯月が先生にイヤですって言えばいいことじゃないの。なんで私に言わせるの?」

「ねぇ、意味分かってる?誰の治療なの?姫でしょ。不思議に思ったことを口にすることさえ私任せなの?」

言い争いは互いにヒートアップし、ほとんど怒鳴りあいのやりとり。

会話の中に別の患者さんの治療の話や、医師から告げられたわけではない姫本人の願望を医師が告げたかのように発言したり、例の言葉=音。状態で思いついたことを思いつくままに喋るものだから私は混乱するばかりだ。姫はどうしても自分に起きたことを時系列で話したくてたまらないクセがある。

「私は来週あたり一時退院なの」

「なにそれっいつよ?何日に退院って言われたの?」

「ううん、抗がん剤の副作用が出なければ来週中には帰れるんじゃないかしらっていう私の想像よ」

「今、他の話しないで」

「あ、そうそう。ビノレルビン」

「うん、何?」

「〇〇さんはね、ビノレルビンがとっても合ってるんですって。だからこれからは通院の投与でいいみたい」

「お願いだから、他の話を混ぜないでよ」

「もういいわ。あなたと話してても面白くない。いい?とにかく今度ちゃんと先生と話し合いなさいよっ」

早くこの地獄から抜け出したい...。




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